第08話 冒険者


  「では、改めまして この度は冒険者登録いただきありがとうございます。 今回のギルド説明を担当いたします、ミラと申します。今後ともよろしくお願いいたします。 早速、ギルドに関する基本的な説明を致しますね。当ギルドの正式名称はメイドス・ギルド支部となります。ギルド支部は、国中にある各都市に存在し本部は王都となります。 出来れば登録された都市を拠点に、冒険者活動を行っていただくと支部としてはありがたいのですが、その辺は冒険者各人に委ねていますので遠慮なく他都市でも活動いただくことが可能です。 また、都市によっては通行税を支払わなければならない都市もありますが、こちらは免除となります。 ここまではよろしいですか? 」


 「うむ 」


 風音は頷く。本当に理解しているのか心配だが… ここまでを整理すると、ここはメイドスというギルド支部で国の各都市にギルド支部が存在し、ギルドは利益が欲しいのだろう、出来れば登録した支部を拠点とした活動が好ましいようだが、別の都市での活動も可能。そして、通行税の免除がここまでの説明だ。少し気になる点があるので質問しておこう。


 「あのう 別の都市での活動の際は、ペナルティとかあるんですか? 」


 「いえ、一切ございません。 うーん… なんと言いますか 仲間意識が強く排他的な支部も存在するのは確かです。 自分達の食い扶持を減らされるといった感覚なんでしょう… ただ、ギルドの方としては歓迎してくれるはずです。1人でも多くの冒険者が依頼をこなす事で、ギルドが潤うのは事実ですから」


 「なるほどのう… 」




 「それでは、ギルド冒険者としての仕事に関する説明です。最初は依頼から説明させていただきます。」


 …… …


 要約すると、町の人々や他都市、村、あるいは王都といった様々な所から依頼が来るという。その内容は、薬草採集・要人の警護・商団、商人の護衛・盗賊、魔物退治・ダンジョン、遺跡の調査やマッピングと依頼内容は豊富で、各冒険者は個人で依頼をこなしたりパーティーを組んだりと実力に見合った依頼を受けるという。


 しかし、新人に限っては、しばらくの間は簡単な仕事しか斡旋してもらえないらしい。ただし、ベテラン冒険者とパーティーを組む事で、ある程度の依頼を受けさせてもらえる便宜が図られる。また、冒険者のランク付けもあり依頼の難易度や回数をこなす事で下からC.B.A.S.SSランクとなっていく。俺と風音の登録証には何か刻まれていた、恐らくこっちの世界のCなのだろう。二人とも下っ端中の下っ端である。


 「では次に、魔石の買い取りの説明です。ご存知だと思いますが、魔物の体内にある石を買い取らせていただきます。買い取り期間はありませんので常時、換金可能です。レートは秤1メモリ銅貨3枚となります。魔石換金を主にしている冒険者も多いので、魔物の生息地や強さを知ると効率良く稼げると思いますよ。説明の方は、だいたい終わりです。質問はございますか? 無ければ説明を終わりにさせていただきます。頑張って下さいね! かざねちゃん たくやくん! 応援していますよ」


 ミラさんはニッコリ笑い、俺と風音を激励しギルド説明を締めくくってくれた。こうして、話を聞き終わった俺達はテーブルで待つゼスの元へ向かう。


 「さて、美味い飯屋に案内して貰おうかのう」


 待ってました! と、ばかりに風音が嬉しそうにゼスに言う。


 「了解だ 美味い飯をご馳走するよ」


 俺達はギルドを後にした。


 ▽▽▽


 案内された、その店では野菜や肉が盛り付けられた皿が出され、テーブルの中心をくり貫き、鉄板で囲った容器の中に炭火を入れ熱された網の上で食材を焼いて食べる、まるで焼肉店。壁には油の入った皿が設置され、火が灯されている。


 「さあ 好きなだけ食べてくれ 味は保証付きだ 美味いから食べてくれ」

 「酒はないのか? 」

 「えっ!? かざねさんは酒が欲しいか? 」


 ゼスは驚いた様子で聞き返すが、すぐに注文をする。


 「親父さん こっち酒頼むよ」

 「へーい お待ちをー」


 ゼスは酒を注文すると被っていた帽子を脱ぎ、再び頭を下げて謝罪する。


 「かざねさん たくやくん 改めて先ほどの無礼を謝罪したい。 すまなかった」


 風音は焼いた野菜を口にしながら


 「もうよい ゼスと言ったな 男がそう何度も謝るでないわ それと、風音でかまわん こやつも託也でよい 強者と弱者の見極めなど 余程、肥えた目を持ち合わせていないと見極めが難しいものよ やつもこれに懲りて少しは自重するだろうて」


 唖然としたゼス。とても16歳と思えぬ風音の言葉に呆けてると注文した酒がきた。


 「へい お待ちー」


 テーブルに人数分の酒が置かれる。風音は我先とばかりに酒に食らいついた。


 ゴクッ ゴクゴクッ


 よっぽど飲みたかったのだろう… 喉を鳴らしながらペロリと飲み干した。顔がほんのりと赤くなる。その様子をじっと見つめる俺とゼス。


 「ふぅー… 悪くないのう 原料は米か? 」

 「あ… ああ メイドス米といって、この町で取れたオリジナル米を原料にした酒だよ かざね… 失礼を承知で聞くんだが… 本当に16歳なのか? 」

 「ん? わしの本当の歳を知りたいのかあ? とりあえず酒のおかわりー」

 「風音 俺の飲んでいいよ 酒飲めないし」

 「おっ そうじゃな たくやは正真正銘の15歳じゃからな これはわしのじゃ! 」


 風音はさっきとは真逆にチビチビと、笑みを零して香りを楽しみながら飲みはじめながら


 「ゼス お前はいくつだ? 」

 「あ… 俺は28だよ うだつの上がらない万年Aランクの冒険者さ… 」

 「なあゼス… それでどうしたいのだ? このまま万年Aランクの冒険者で終わるつもりなのか? 」


 そう言うと風音は袖口から、いつもの煙管を取り出し葉を詰め火をつけた。


 「俺はこのまま終わりたくない! だが、俺の職業はスカウトだ… 体術や魔法が得意というわけじゃない 限界があるんだよ」

 「なんじゃスカウトとは? 」

 「スカウトは偵察や密偵、情報収集を得意とした職業だ ダンジョン内部のマッピングやパーティーでのサポート役が主な仕事さ」

 「ほほう まるで忍じゃな… で、わしらに、どうして欲しいんじゃ? 」


 …


 「かざね… あんたの強さは異常だ 今まで情報収集で各地を回ってきたが、断トツの動きだ もちろん、あんたは実力の半分も出してなかっただろう それを、まるで赤子の手を捻るようにSランク冒険者のビーノに膝を付かせたんだからな… 」

 「まあ 半分の力も出してはおらんかったが ビスは、わしの動きは見えたか? 」

 「見えた! ただ、見えても対応は出来ない… 常人では無理だろうな」

 「ほう 見えたか… 確かに忍は視覚、聴覚、嗅覚が欠けていては使いもんにならんからのう 託也は見えたか? 」

 「うん ただ、ゼスさんの言う通り 身体はついていけないと思う」

 「ふむ… 問題じゃな」

 「えっ!?」

 

 突然、ゼスが風音に懇願しはじめた。


 「お願いだ かざねさん! 俺とパーティーを組んでくれ! あんたとならどこまでも行けそうな気がしたんだ! 頼むよ かざねさん!! 」


 ぷかぁー 


 風音が煙を吐く… 一呼吸おいて風音が答える。


 「わかった ゼス そのパーティーとやらを組もうではないか ただし、条件がある 聞けるか? 」

 「もっ もちろんだとも! ありがとう かざねさん! 」

 「わしらの情報は決して口外してはならぬ 忍びである、お前なら意味はわかるな? 命は無いのだぞ? 約束できるか? ゼス! 」

 「わかっている… 約束は守るよ」


 風音は自分達の秘密を誰かにしゃべれば殺すと言ったのだ。ゼスは、ごくりと唾を飲み込んで約束を誓う。


 「よし 次の条件じゃ わしらは“時空の歪み〟を調べる旅をしているところじゃ この国の何処かにあるはずなんじゃが、それを優先第一で動く事になるがそれでも良いか? 」

 「時空の歪みねえ… んー聞いた事はないが ダンジョンや遺跡進入もあるだろうから俺は構わないかな 」

 「決まりだな それと託也」

 「なに? 」


 俺はイノシシ肉をもぐもぐ食べながら聞き返した。


 「お前は明日から修行じゃ」

 「えっ!? なんで?」

 「何時も何時も、わしが側にいて守ってやれるはずもなかろう 少しは鍛えて自分でも対処できるようにせえ」


 マジか… 

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