第23話 色々とあったけど 2

 扉が閉まってから、無機質なその扉を私は見ていた。

 本当に終わった。今度こそ、終わったんだ。

 私は安堵でもない息を吐きながら、自分の腕をさすってみる。改めて細いなぁなんて思う。

 そして、その腕を触っているうちに、そこに血の流れを感じた。

私は生きてるんだ。そう思った。

そう、生きてるんだ。生きてたんだ。

そこで私は初めて、自分が生命体であることに気づいた。

今まで、何もない日常を生きて、そこで色々な経験をして、葛藤も迷いも苦しみも、喜々も幸福も感動も味わっても、気づかなかったのに。今、この瞬間、初めて私は気が付いた。同時に、この瞬間、生きたいと思った。あれほど死にたがりな自分が生きたいと思った。

私もあの境目を超えたかった。超えて、灰ヶ崎君となんでもいいから何かを話したかった。

 私は後悔を感じた。

 後悔なんて無駄なのに、十七の私には抑えきれなかった。

 私は見えない恐怖に支配されそうになった。

 今にも叫びだしそうになった。

 でも、いつのまにか私は温もりに抱かれていた。

 金色の天使か。

 綺麗だ。好きだ。

 私は今までにない声で泣いた。

 泣いて変わるわけじゃないのに、赤子のように泣いた。

 黒ずみは薄れていく。

 そして、澄み渡っていく。

 そこには誰かがいるような気がした。


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