第2話 「入学式」

いつの間に眠っていたのか、目が覚めると五時だった。

まだ日は昇っていなかったが起き上がり、昨日途中で読み終えていなかった本を取り出す。


これが私の日課だ。いつも何故か五時には目が覚めてしまう。

どれだけ二度寝しようとしても出来ないのだ。

お茶を飲もうと、一階に降りる。リビングには誰もいなかったので、おばあちゃんは部屋にいるのだろう。

お茶をコップに注いでいるとおばあちゃんが部屋から顔を出した。


「おはよう、よく眠れたかい?」

「うん」

「うみちゃん、もう少ししたらそらの散歩お願いね」

「わかった、行ってくるね」

「学校もあるから、あんまり遠くに行っちゃダメだよ」

「うん」


私は二階に戻り、服に着替えそらの元へいく。

そらは私に気がつくと尻尾を振っていた。そらにリードをつけ、昨日と同じく海沿いを歩く。段々と日が昇って来ていた。

ゆっくりと昨日彼がいた場所に行く。その場所に彼はいなかったが、昨日彼が何を見ていたのか気になったからだ。

その場所に立った時、朝日が私を包み込んだ。

岩と岩の間に朝日がすっぽりとはまり、海は白色に輝き空は澄んだ青紫色をしていた。

そのまま暫く佇んでいた。暫くして我に返り、夜の散歩の時に彼がいなかったらこの場所に来ようと心に決めて急いで家に戻った。


家に戻るとおばあちゃんが朝ごはんを用意してくれていた。先にそらにごはんをあげ、その後おばあちゃんと一緒に朝ごはんを食べた。

食べ終えてからおばあちゃんが作ってくれたお弁当を持って二階へ上がる。

壁にかかっている長袖のセーラー服に、濃淡のスカート、水色のリボンを身に纏い、教科書が入った鞄を持ち外に出る。

学校へ行くにはバスが一番早いのでバス停へ向かう。バス停には人の姿はなく、ただベンチだけが置いてあるだけの簡易的なバス停だ。

このバス停は海沿いにあるため、ベンチは潮風に当たるのか鉄の部分が錆びていた。私はベンチには座らず立って本を読む。

バスが来て、乗り込むと人はそれなりに乗っていた。

しかし、お婆さんや、お爺さんが殆どを占めていて若い人があまりいない。

学生は一人も乗っていないため、同じ学校の人が居ないことに内心ほっとしていた。空いている席に座り、また本を開く。

このバスは海沿いを走り少しずつ街中に入っていく。どのバス停でも学生はいるものの、同じ学校の人は乗って来なかった。

学校に一番近いバス停で降り、学校へ向かう。学校に行くには目の前にある長い坂を登らなくてはならない。坂には同じ学校の人達が沢山いた。私は一人本を読みながら坂を登る。

学校に着くとクラスが貼ってあり、自分の名前を確かめて体育館へ向かう。指定されている席に座りまた本を開いていた。暫くすると、入学式が始まった。本を閉じ、前を向く。

校長先生の長い話が終わると、一年生の教室に行く。

両親がこの学校を勧めたのはこの地域で一番評判が良かったからだろう。進学校でもあり、周りの高校に比べて設備も整っているからだ。

都会と比べては劣ってはいるが、都会の窮屈した感じとは違い広々としていた。

自分の教室に着き、席に座る。最初の授業では、自己紹介をしなければならない。気分が沈んだままホームルームで新しい担任の話を聞いていた。

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