甕のへそ

 雪姫が城へ戻った次の日。

 一樹と真は、朝からかめの底の穴開けをさせられていた。

 ひるどきに亀吉が二人の様子を見に来た。


「穴開けはどんな具合だ?」


「進んでるよ!」


 と一樹が甕の底を見せると、底の端っこに申し訳程度の穴があった。

 亀吉は眉をハの字にして、


「おめぇのへそはこんな端っこにあんのかよ!」


 と開いた口が塞がらない様子だった。


「まあいいや……おめぇらは、佐根藩さねはん中屋敷に植木を運んでくれ! 他のやつはくたびれちまってよぉ……使いもんになんねぇ」


 二人は穴開け地獄から離れられることを喜んだ。

 一樹は、昨日の事は何も無かったかのように振舞っていた。


 植木を載せた大八車は重いはずなのに、一樹と真はどんどん進む。武家屋敷の前を通り、青々とした田を横切って、林へさしかかった。

 その時、群青色ぐんじょういろの澄み渡る空が一瞬にして怪しい色になり、激しく雨が降り始めた。

 大八車を道のに置き、引き込まれるように祠の岩穴へ、あの日と同じように雨宿りに入った。





 二人は公園からつづく林の草の上で目を覚ました。真が急いでスマホを見ると、放課後に岩穴に入った時から1時間だけ経過していた。

 

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