第10話 カラミティメイデン見参!?

 かなりの時間をベンシウスと話し合った。


 今後の方針としてA・Bランクの冒険者による現地調査や、戦争の勃発での対応など、協会としての立ち居振る舞いを明確にしていくという流れで話し合いは終わった。


 シメタロウのやつ、採集クエにひょっとしたらずっと待ってるかもしれないな。話し込みすぎて悪い事したとは思いながら、部屋を後にした。


 階下を覗いてみると、あれだけ払い戻しに並んでいた冒険者たちも捌けて、ようやく完全ないつもの協会本部の姿に戻ったようだ。


 ーーうん? シメタロウの姿が見えないな!?


 正直に言うと、採集クエは気が乗らない。男二人で行く必要があるのかと考えてしまう。

 どうだろう? 考えてみてもキノコ狩りみたいなクエストにむさ苦しい男二人でって……。

 言わば、ハイキングだ。ハイキング! 女の子と行くもんだろう、こういうのは! 


 シメタロウに別のこと頼んで、クエストには一人で行ってくるか〜と思いながら、協会の階段を降りて行ってると、玄関からひとりの少女が耳を押さえながら、大きな声を出していた。


「うるさい、うるさい、うるさいっ! あんたらは足を探して来なさいっ」


 と、強い命令口調で後方にいるだろうと予想される人物に怒鳴ってた。


 案の定、後方から少女を追いかける3人の声が聞こえる。

 それでもこの少女は足を止めることなく、協会内に入って来た。その姿を階段の途中で、俺はその光景を眺めていた。


「「「お嬢さま(様(〜))!」」」


「あー、だからうるさいっ!! 嫌なものは、い・や・な・のっ!!」


 どうやら、この少女? お嬢様はご機嫌ななめみたいで、何か嫌な事があったから、従者を困らせてるんだろうと思いながら足をゆっくり進めた。


 もう一度、3人がそろって呼び止める。


「「「お嬢さま(様(〜))!!」」」


 3人の姿が見えた瞬間、あまりの光景に階段から足を踏み外しズルッとずっこけた。


 何だとーーーー。


 何とか完全に転げ落ちるのを防ぎ、慌ててその一向を凝視した。


 お嬢様と呼ばれた、ブロンドのセミロングの美少女。

 フワッとした華やかな色合いのロングスカートで、如何にもお嬢様って言うザ・お嬢様だ。


 後ろにいたのは女1人と男2人。


「お嬢さま〜」と呼んだのは、ニコと同じくらいの身長で、マリーナくらいの果実の持ち主の女の子。

 幼い顔立ちはしているが、それほど幼い様には思えない。童顔なんだろう。


「お嬢」と声かけたのは、モヒカン頭の顔に蝶のようなメイクを施した口髭のある太った男。


「お嬢様」と声をかけたのは、スキンヘッドに濃い色の色眼鏡をかけた髭面のスマートな長身の男。


 女の子の服装は、男が着る執事服! 結構、似合ってる。


 男の服装は…………何とだったっ!!


 足を踏み外した俺を怪訝に思ったのか、首を傾げながらこちらに「大丈夫?」と聞いて来た。


「ああ、悪い。少し、気を取られて」(何だ、その服のチョイスは!?)


「アッ、大きな声出してたからね。びっくりさせちゃって悪かったわね」


「いや、構わないけど……それより、何か揉めてたんじゃないのか?」


 大声を出してた理由を尋ねてみた。


「何でメイド服なんだー」って一番に訊いてはみたいが、ひょっとするとこの二人には、そういう趣味があるのかもしれない。

 基本、自由の国なんだから、女装も男装も受け入れないといけないだろう。あんまりおかしな事は言えない。



「それより、ちょっとあなた達、早く足を見つけて来なさい」


 お嬢様に言われた、スキンヘッドメイドが


「お嬢様、今回の依頼放棄は少し不味いかと思いますが……」


 どうやら、従者さんは強くは言えないみたいだが、冒険者の依頼放棄ね。

 それが本当ならギルドに対する信頼や評価は不味くなるだろう。


「だから、何度も言ってるでしょ。やりたくないものはやりたくないの! 私の自由よ」


「「しかし……」」


 二人の女装男は、それはそれは困っていそうだ。藁にもすがる思いなのか、こちらに目線をむけている。

 何の義理もないが関わった以上、仕方ないので俺も助け舟を出す。


「なあ、二人のメイドが困ってるぞ。

 それと冒険者として忠告だ。依頼放棄はあんまり大きな声で言わないほうがいい。

 一種の恥だから、おたくらのギルドの信用にも繋がるしな。


 ……ところでお嬢様は何で男にメイド服、女に執事服させてんの?」


 よーし、会話に混ぜて訊いた! 訊いてやった!!


「えー、だって…………」


 まあ、このお嬢様の美的感覚ならこれは仕方ないし、こいつらの趣味でも仕方ないが、さっきからこの一向は目立っている。

 協会内にいた人間が結構注目はしてるが、皆んな関わりたくはないと思ってるんだろう、そりゃ当然だ。

 これがこいつらにとっては「可愛いし似合ってる」と思ってるんだろうな。


 と、思っていたら


「面白いじゃないっ!」


 アウトーーーーーーーー!!!!!!


 てぃっ! と、ばかりにお嬢さんのおでこを小突いてしまった。


 こいつ、面白いからって理由で、大のいい歳した男にメイド服着せてやがった。

 スカートから見えるスネ毛が気持ち悪いんだぞ。しかもご丁寧に短いスカートだし……。


 それで階段を踏み外したってことは、それはつまり、俺を階段から落とそうと思ったこいつの犯行未遂だろう。


 だからアウトだアウト!!


「アホか。面白いからって確かに面白かったが、そうなると俺が階段からずれ落ちたのってお前のせいだよな」


「ちょっと、痛いじゃない! う〜〜」


「さっきから見てると、お嬢さん以外は、どうぞ言ってやってください……みたいな顔してるぞ。

 あと気づいたが、連中めちゃくちゃメイド服、嫌がってそうだし」


「私が好きでやってるんだから、OKなのよ」


「どんな理屈だよ。ったく、従者の人の苦労も考えてやれよ」


「「「有り難うございます」」」

「こんなに私たちを気にして下さるとは、何と良い国の人なんでしょうか」


(せめて、スカートの丈くらいは長くさせろよ……)


 まあとにかく、このおもしろ集団は、依頼放棄で帰るための移動の足を調達しに来たのだろう。


 少し、お互いに落ち着いたところで、執事は女性に必要な小物、メイド二人は移動用の足を調達しに、お嬢様を協会内に残し出かけて行った。


(おいっ、その格好のまま行くのかよ……)


 出ていく間際、3人からお嬢様を暫くお願いしますと預けられてしまった……。


 まあ、頼まれた以上仕方ないが、俺にも採集クエの事もあるからと考えてたら、受付嬢として仕事をしていたハロンが、俺に手紙を持って来た。


 手紙の内容はシメタロウから、「探さないでください」と本題があり、今回の出費の件であいつなりに悪いと思ったのか、ひとりで今日のクエストはしますから、怒られる時は一緒に怒られてくださいねと言う、一蓮托生のお誘いの手紙だった。


 ーーこんなの出さなくても、もう一緒に怒られてやるよって覚悟は決めてるから必要ないのに。

 まあ、採集クエに行ってくれて助かったし、協会にいる間に金庫内の隠蔽工作でもしておこう。


 そんな訳で、急遽手持ち無沙汰になった俺は、奴らのお願い通りお嬢様のお相手をしてる。


 協会本部のロビーに椅子が並べられているところに二人座って、お互い飲み物を飲みながら、顔を見合わせた。


「ねえ、あんた別に一緒に座って話し相手なってくれなくても、私は大丈夫よ」


「いや、俺も予定してた仕事が飛んだから、暇なんだよ」


「あっそう。自己紹介しとくわ……私は、ジっ、サーシャよ。よろしくね」


 あっ、この女、名前嘘言いやがった。じゃあ、こっちも遠慮なく嘘ついておこう。


「俺はシメタロウ、シメタロウ・ボンズだ」


「そうなんだ、シメタロウ……シメタロウ……。うん、面白い名前ね、ふふふ」


(シメタロウ、こいつ名前で笑ったぞ、しかも面白いって名前が)


 シメタロウ、いつもこんな気持ちなのかな、今度優しくしてやろう。


「そのどうなんだ? 人の名前聞いて笑うって……さすがに失礼じゃないか?」

「ああ、ごめんごめん。何となくだけど、さっき私に絡んできたあんたのイメージと名前が繋がらなくてね」


「まあ、いいや。あの3人はお前の従者なのはわかったが、お前ら4人だけか?」


「そうね、今はそう。ところでシメタロウ、さっき名前のやり取りしたんだから、お前はやめた方がいいよ」


 お嬢様にダメ出しされた。


「そだな、すまん。ジっ、サーシャだっけ?」


 意地悪く、とぼけて訊いてみた。


 サーシャと名乗った嘘付き娘は、顔を赤くしながら反論しプンプン怒っている。


「サーシャよ、サーシャ!! なに言っちゃってんのよ、まったく……」


「悪い、じゃあサーシャで、覚えたよ。ところでサーシャは何でメイドの意見に怒ってたんだ?」


 サーシャは少し考えてから、こちらに質問して来た。


「シメタロウは冒険者よね」

「ああ」


「冒険者に依頼される仕事の中には、納得できない仕事ってあるじゃない!? でも、ギルドに依頼されて、仕方なくしなければってやつ……」


「確かにそういう依頼もあるな」


「そういう時ってどうやって折り合いをつけて納得させるの? 私は嫌なものは嫌なの。だって私の自由を得る為に、冒険者になったんだから」


 んー、確かに冒険者の依頼の中には受けたくないような依頼もある。

 それでも受けなければいけない依頼か?


「んー、俺の場合はサーシャとは違うし、参考にはならないかもだけど、最低限の達成しかしてやんない」


「最低限の達成!?」


「そそ、依頼にはパーフェクトに達成するのと、出された依頼の最低限ラインなんてものが、依頼主にはある。要は満足度ってやつだ」


「俺の場合は、気に入らない依頼は基本、最初に断り受けない。

 それでもしがらみでしなきゃってなったら、依頼主が大変満足するような結果はごめんだから、出された依頼を一応、クリアするようなギリギリのラインで遂行してやる。


 依頼は達成したけど、もうちょっとなんとかできなかったかって程度のクリアだ。


 もちろん、俺が依頼主をよく思ってないんだから、おまけのプレゼントも添えてやる。

 手酷く、とばっちりを被ってもらえるくらい依頼主にもダメージ与えてるよ」


 あはは、と笑いながら、俺の考える依頼達成を話してやった。


 朝のマリーナとのやり取りを思い出す。

 あれも気に入らない依頼の一つだった。村は疲弊し作物は育たず、税金で河川域の村々は酷い生活を虐げられていた。

 だから、依頼してきた国に被害が出るようにしたが、100%なすりつけてやる事は難しい……。

 なので、うちにも奴らの10分の1くらいの損害に対する弁償が発生してしまったが、俺の中では多くの村人達の笑顔や感謝の言葉だけでチャラだった。

 団員達も理解してくれてるようで、何も言ってこないし、掘り返したりもしない。


 まあ、事務を任せてるマリーナも薄々は気づいている…………はず!?


「ふふふ、シメタロウ、面白い考え方してるのね。すっごく私、気に入ったわ!」


「だろ〜」


「さすが自由国家ロークランドの冒険者さんだ。とても参考になったわ」


「そりゃよかった……依頼達成は積み重ねないといけないから、苦肉の策って感じなんだけどな」


「それでも、凄いわ。私は両極端にしか対処できないから」


「だから、そういう時はストレス溜まるんだよ。俺らは冒険者だ! 思ったように楽しめばいいと思うぞ」


「だね。ねえ、シメタロウ…………あなた、私のところにこない? もちろん、高待遇で迎えてあげる」


「いや、遠慮しとくよ。これでも一応、期待されてる駆け出しなんで」


「かなりの歴戦を掻い潜ってきたベテランの空気あるよ」


「そりゃ、嬉しいね。まあ、10歳の子どもの時からやってるんだから、経歴は長いけどな」


「幾つなの?」


「18」


「へー、私の方がお姉さんだ。19よ」


「そんなに変わらないな。まあ、首にでもなればお邪魔しようかな」


「結構、勇気出して勧誘したのに振られたわね。まあ、いいわ。でもやっぱりベテランじゃん」


「初心を忘れてないんだよ。立派だろ」


「はいはい、そうですね。でも、私は気に入ったものは、絶対に手に入れたくなるの。我儘ですからね」


「自覚はあるのかよっ」


「うふふ、また、何度でも勧誘してあげるっ」




「お嬢様、お待たせしました。馬車の用意ができました」


「楽しかった時間も終わりのようね。シメタロウのおかげで気分も良いわ」

「その……あの……有り難うね。あなた、私の男に相応しい良い男よ」


「そりゃどうも」


「勧誘の件、諦めた訳じゃないから、そのまたね」


「じゃあな、それとメイドさんも執事さんも道中気をつけてな」


「「「有り難うございます」」」



 不機嫌が完全に治っているお嬢様にかなりビックリしていたが、だからこそ俺に多大な感謝をしているようだ。


「サーシャもまたな。冒険者ならいずれどっかでまた会うだろう」


「そうね。シメタロウ、貴方の今後に『幸多からんことをお祈りいたします』」


「またな」


「では」

「失礼致します」





 ようやく、彼女達は協会から出て行った。俺は天井を見上げながら、名乗らなかった事に対する懺悔する。


 なるほどな、名前を隠した理由も何となくだがわかるなと、先ほどまで目の前に座っていた少女の事を考える。


 詰めが甘いというべきか、彼女にしてみたら多分、本当に俺の事を思っての行動だったのだろう。


『幸多からん事を』この一節は聖女だけが使う、特有の言霊だ。


 俺の知り合いにナタリアというおばさんがいるが、元刻印所属の聖女だったから神聖魔法について知識もある。俺が団長に就任するときに退団して、聖女の地位を譲ったのがジャンヌという少女だったはず。


 サーシャの正体は、なのだろうと推測できる。


 聖女ジャンヌの噂は聞いている。教会が嫌で飛び出した【ダウナー】だと噂があるが、実際は教会の枠に治りきらないので好きにさせているらしい。

 教会でじっとしてるより、外の世界に憧れて昔から暴れてたようで、御転婆おてんば聖女とか言われてたはず。


 国の後ろ盾ができ、晴れて冒険者として【悲惨な乙女】カラミティメイデンというギルドを立ち上げ、飛ぶ鳥を落とす勢いで駆け上がってる冒険者ギルドだ。


 世界5大ギルドの一つに、先日成り上がった新進気鋭のギルドだったはず。



 口元をニヤッと吊り上げて笑っていたら、丁度飲み物の後片付けに来ていたハロンと目が合い、ビクッとさせてしまった。

「……あの、ジェナスさん、めっちゃ悪い顔してるんですけど……また、私で何かしようとしてますっ!!」


 ハロンは先ほどのキャットファイトで、自分が彼らのおもちゃにされたことでの警戒心が芽生えてしまった。


「違う違う。ハロンはカラミティメイデンは知ってるか?」



「私も協会の職員ですよ。さすがに知っていますよ。かなりのやり手だとお噂は耳にします」



「もし、【刻印インプレス 】と【悲惨な少女カラミティ・メイデン】がやり合ったらどうなるのかなってな!?」


「ちょ、まさかやり合う気なんですか!? やめてくださいよ。仲良くしましょ、お願いですから仲良く……」



 シメタロウのクエスト達成報告まで、良い相手ができたとハロンをおちょくりながら時間を潰した。







 一方、馬車に乗りこの地を後にするサーシャ、一行はというと


「お嬢様、先ほどの男の方は、かなりのやり手に思えましたが……」


「ええ、勧誘を断れてしまったわ。うちに来てくれたら最高なんだけどね」


「隻眼ってことは【刻印】の団長かと最初疑いましたが、腕はありましたからね」

「隻眼、隻腕と聞いてますから人違いかと……」

「もう、お嬢さまが、【刻印】とかち合ったら勝負挑むと言って、依頼破棄してグリンガムに立ち寄った時は焦りましたよ」


「【刻印】は、命拾いしたわね。シメタロウのおかげで気分も良くなったし、まあいずれどっかでぶつかるでしょう」


「私はあんまり、ぶつかりたくないです」

「「同じく」」



「ダメよ。あいつらは大罪の咎人なんだから、私たちが退治しないとね」


「それなんですけど、本当にそういう運命なんですか?」

 執事服を着たビビアン・レイスが、お嬢様と呼ばれるジャンヌ・プラートに聞いた。


「ええ、そうよ。大賢者と呼ばれてた人が、あいつらのことそう言ってたわ。

 あいつらは『傲慢』、『強欲』、『色欲』、『暴食』、『怠惰』、『憤怒』、『嫉妬』の咎人よ。

 私たちカラミティメイデンがあいつらを倒すのよ」


 大賢者である婆様が、可愛い孫感覚でジェナスたちを、面白おかしく古代の書物の中にあった大罪になぞらえて、揶揄ったことでの弊害がここでも出てきていた。


「何度も聞きましたが、お嬢、さすがに退治というのは!?」

 モヒカン頭のメイド、ゴドニア・イスタンブールが答える。


「もう決定事項なの。って私がしたいの! だから文句ある?」


「お嬢様、私共はどこまでもお供いたします。お嬢様がお望みになるのならプラート家の為にも」

 スキンヘッドの強面メイド、ルイス・ブライトンが同意を示す。


「ルイス! もう、プラートの家は関係ないわ。

 私はジャンヌ、『感謝・人徳』を司るジャンヌ・カラミティよっ」


「「「はいぃ」」」


「ビビアンは『純潔』。当然『色欲』と呼ばれる咎人を、貴方がしばいてやりなさい。

 それと『純潔』なんだから男禁止なんだからね」


「『色欲』さんですか……わかりました。恋愛するのもダメなんですか……頑張ってみたいと思います」


 お嬢さまも聖女なんですからダメですよ、とは到底言えないビビアンであった。


「ええ、その意気よ。ルイスは『忍耐』を司るんだから『憤怒』、ゴドーは『勤勉』を司るんだから『怠惰』に負けたら許さないからねっ、わかった!?」


「「わかりました」」


 ルイスはこのお嬢様の我儘に付き合わされることでの『忍耐』だと思った。

 ゴドニアは同僚ルイスの耐え忍ぶ姿を見て、学習していることでの『勤勉』だと考えた。


 が、二人は絶対に口に出して言わない。


 残りのメンバー『謙虚』、『慈善・寛容』、『節制』。

【刻印】とやり合う時はフルメンバーで挑む事になるだろうとジャンヌは考えてる。


「ふふふ……待ってなさい。私たちがあんた達を裁いてあげるんだから」





 ゴドニアが気になった事を、同僚達にコソッと聞いた。


「なあ、さっきのシメタロウって男の人……【刻印】の『憤怒』と言われてる人なんじゃないか?」


「いや、違うだろう……俺たちにも気を使ってくれた、あんな優しい人が……。

 もしそうでも、そのこと知ったらまたお嬢様が引き返すとか、騒ぎそうだし……。

 人違い、人違いでいいんじゃないか!?」


「……俺もそう思った」

「私も同意します……」



「「「はぁ〜〜」」」


 3人のため息を無視して、馬車から身を乗り出し、お嬢様ジャンヌ・カラミティは、離れていくグリンガムの外壁を見ながらライバル達らに、宣戦の決意をしたのであった。

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