幕間 ♯1.5 「もつ牛」でのひと時


——“もつ牛” 大学駅前店 店内


——神田慎太郎と押鳥真子は、横並びのカウンターに腰を掛けて、各々の注文を待っていた。




「へい。“もつ煮丼汁だく“お待ち!」


「どうも」


「へい。そちらのお姉さんは“朝牛もつカレー”ですね」


「ああ。ありがとう」


「先輩。何だかんだカレー食べたかったんですね」


「不思議なんだが、カモシカ食堂の話を聞いてから無性にな」


「“特製デミグラスカレー”トッピング全部のせ、ですか」


「ああ。学生のランチの会計に2000円を要求するとは、さすがは医学部キャンパスだ」


「学生の間で“ヒルズ”といわれているだけのことはありますね」


「そもそも、トッピングとは一体……? 卵とか、そーゆー類なのかな?」


「それが、ステーキのようなハンバーグのような、何かしらの肉料理がカレーの上にのっているらしいんですけど」


「それは……ステーキかハンバーグではないのかい?」


「料理長いわく、企業秘密だから詳細は答えられないとのことで」


「……何を食べさせられているのか分からない状態というのは、果たして企業秘密の範疇なのだろうか」


「謎ですね。でも、リピーターはそこそこいるそうです」


「さすがは医学部キャンパス……学生の間で“魔境”ともいわれるだけのことはある」


「ですね。あ、先輩。こーゆーチェーン店のカレーは割と辛いことが多いので気を付けてくださいね」


「ふっ、大学4回生を相手に子供扱いするな。たかがカレーの辛さ位…………、っ!!」


「……トッピングに卵でもつけるといいと思いますよ。水を飲むと余計痛みを感じるので」


「お、温玉を一つ貰おうか……」


「へい温玉いっちょーーーーー!!」




——待っていましたとばかりに、店員の掛け声が店内中に響き渡ったのだった。




つづく。

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