第16話



 僕、復活!


 一眠りすることで、体力も全快。

 身体も軽い軽い。

 子供の回復力は凄いけれど、眠りの効能が上がってるからより凄いな。


 しかし、軽すぎるような…………。


「どうされました?」


【能力把握】を使って、探ってみる。

 この世界には、分かりやすいステータスなんてない(もしくは確認できないだけかもしれない)。


【能力把握】も、ステータス画面のように出る訳じゃない。

 自分の情報を調べることが出来るというだけ。それを纏めて整理して、理解しやすい形に落とし込む作業が必要になる。


 そしてこの【能力把握】、ステータス画面のようには出ないけれど、過去の身体能力と今の身体能力を比較することは出来る。曖昧にだけれど。


 それによると、なんか成長しすぎている気もする。

 平均的な成長の情報とか持ってはいないけれど、子供にしてもこの伸びは大きくないか?


 これはあれか、【眠りの能力】による影響かな。

 記憶の定着に上昇補正が入っているため、魔法技術の修練が容易であった(しっかり訓練した上で)。


 しかし、眠りには成長という側面も有る。

 成長ホルモンと名付けられている物質も、眠るときに出やすいし。これは成長だけに効果のあるホルモンではないけれど。


 肉体的な成長補正もしっかり有るのか…………。

 身長は伸びてない気もするけど、それは何でだろうか。




 とまぁ、また新しく分かったことをメアにも伝える。

 王族生まれだけれど、親の暴走でマイナスも大きいかと思ってたけど、個人的な能力はプラス分が随分と大きいな。


 一番大きなプラスは、メアの存在だけれど。








 ──────────






 昼食を終え、食休みを挟んでから修練再開。


 今は、僕とレイル先生が追いかけっこをしながら魔法を使っている。


 これまでは、静止状態で魔力を扱い、魔法を使っていた。

 しかしそれでは固定砲台にしかならないし、応用も効かない。

 なので、移動と魔法行使の両立を目指すのだ。


 ゆっくりと駆けるレイル先生に対して、【身体強化】はしていないが、割りと全力で走る。

 走りながら魔力を扱うのは難しい。


 何とか精製した魔力にイメージを籠め、放つ。

 レイル先生は避けることなく、魔法は当たる。


 今は避けることはしないそうだ。当たりにいくことはしないけれど。


 足を止めないよう、移動を続けながら魔力を練り練り、息が切れつつも魔法を放つ。


「はっ…………はっ…………ちょっと、きゅうけい」


「よく頑張りましたな、殿下。もっと早く音を上げるかと思いましたが。


 やはり殿下は努力が出来る方でありますな。


 今も、息を整えつつ魔力の精製は止めておらぬようですし」


 まあ肉体的に子供でも、中身は子供よりの大人(のはず)ですし。

 魔力を、魔法を扱えるようになるのは楽しいし。


「ううむ。しかし殿下は魔法をきちんと発動させることが得意ですな」


「…………そうなんですか?」


「ええ。魔力にイメージを籠める、乗せるというのは中々に難しいことのはずなのですよ。


 ここで躓く者も多い程に。


 しかし殿下の場合、最初から発動させてましたな。


 今も、移動しながらでもきちんと発動していました。

 威力は相当に弱まってはいましたが、慣れてない者がやると、そもそも効果を発揮させることすら厳しいのですよ」


 ほうほう。イメージを籠めることが得意…………か。


 魔力精製は続けつつ、【能力把握】を起動する。息は大分整ってきた。


 ううむ。並行するのは難しい…………はっ、レイル先生の口調が移りかけてる。


 集中力がどうしても分散して…………ん?

 魔力を【能力把握】に間違って注いでしまったけれど…………これは。


「レイルせんせい、ためしてみたいことがあります」


「おお? なんですかな」


 息は戻った。こっちは気にしなくても良い。


 魔力精製。ここにイメージを籠める。


 イメージするは…………火。


「おお! 小さな火種ですな」


 新しくイメージを。イメージするは…………水。


「む? 水の玉ですな」


 イメージ。…………電気。


「これは、僅かですが…………雷」


 …………光。


「これは、可視化した魔力ではなく、光の魔法…………。

 それだけでなく、光の色が変わっていく」


 地面に手を当てて、魔力をイメージと共に流し込む。


「土が、少しですが確かに動きましたな」


 地面に向けて、イメージを籠めた魔法を。


「今度は…………砂? いやこれは、風の魔法」


 ふー。一旦ここまで。


「殿下。これは一体」


「ぼくは、イメージをこめるのがとくいみたいです」


 その強面が、驚愕と困惑に彩られている。


【能力把握】に魔力を注ぐと、僅かに効果が上がった気がした。

 そこで、魔力により効果が上がるようにイメージを籠めると、より【能力把握】が使いやすくなった。


 そして気になったこと。

【夢を現実にする能力】には、魔法を使う際に補正が有るのではないか、ということ。


 確かめてみたら、あった。ガッツリあった。

 夢を現実に、これは直感的に付けた名前である。

 この能力には、魔法という、夢を現実にする技術への補正がある。


 具体的には、イメージを籠めやすくなる効果だ。

 その為、適性と練度が有れば、イメージが出来れば、どんな魔法も使える。

 しかも適正がなくとも、獲得することも可能という壊れっぷり。


 凄まじいぞこの能力。


「ううむ。殿下は魔法を発動しやすい能力を持っているやも知れませぬな。


 能力が分かる能力、といったものは儂は持ち合わせておりませんし、心当たりもないので確認する術は有りませぬが」


 あっ、持ってます持ってます。


「しかし殿下、このことはあまり余人には話されぬ方が宜しいかと。


 単に魔法が上手いのと、魔法を簡単に扱うことが出来る、というのは異なりますからな。


 要らぬ面倒事を引き寄せるでしょう」


「はい。わかりました」


 うん。それは本当に分かる。だからこそレイル先生にも話してないわけだし。


「魔法の才能が有るのは良いことなのですがな。


 しかし、適性や得意とする魔法は、有るようですな?」


「はい。ねむりがいちばんつかいやすいです」


 他の属性魔法は、使えはするけれど現状ほぼ役に立たないだろう。

 前世の異世界ものでよく見た、生活魔法の水準にすらならないし。


「多種多様な魔法が使えるのは良いですが、まずは修練する魔法を絞るべきでしょうな。


 何か1つでも、実用的な魔法は有るべきだと儂は思いますぞ」


「ぼくもそうおもいます」


 魔法の技術は、他の魔法に応用が効くとは言え、それぞれに熟練度が有るっぽいし。

 メインに使う魔法は決めた方が良いだろう。


「得意とする眠りの魔法が1番ですかな。


 儂のオススメとしては、身体強化ですな。基礎にもなりますし」


 うん。身体強化も、速く強くなれるのは魅力的だ。

 あともう1つ位。


「かいふくまほう、いやしのまほう、かな?」


 人生設計には欠かせないだろう。

 この魔法は。



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