第15話

 魔法抵抗の低い相手に、魔法の効果が有るか試したあと、レイル先生は新しい魔法をレクチャーしてくれた。


「本当は、使いたい魔法がすぐに出てこなかったり、魔法が上手くいかない場合に教授しようと思っていたのですがね。


 殿下の才と努力は儂の想定など遥かに飛び越えてしまうようだ」


 その新しい魔法とは、身体強化の魔法。


「イメージとしては、重いものを持ち上げられる、速く走れる、高くジャンプ出来る、等々。


 より強い自分をイメージするのが基本となります」


 レイル先生が僕の魔力を操作しながら、外部に魔法を使うのとは異なる、自らへの魔法使い方を教えてくれた。


「殿下の魔力はまだ弱いため、身体強化の強さも弱いです。


 しかし、余りにも強くするとお身体を壊してしまいます。


 そうですな。今の殿下ならこの程度。

 これよりも少ない魔力で発動すること。そしてこの魔法の修練を行う際は、周りに大人が居るときだけにすること。


 危険ですからな」


 強くしすぎて、筋断裂や骨折で済めば良い方。

 酷い場合は、爆散した例も有るらしい。

 魔力操作の技術や、他の魔法との組み合わせで変わってくるが、無茶はしないに越したことはない。


「しかし、この魔法を使えるかどうか。


 どれだけ使えるかどうかで、生存率は大きく変わります。


 速く走れれば、長く走れればその分逃げられる確率も高くなるのですよ」


 魔力を絞り、ちょっと強くなるイメージで身体に身体強化をかける。


「…………! すごい! はやい! たのしい!」


 1歩1歩が大きく、駆け回る速度が速い。

 そして分かる。これは無理することが出来る。

 無理をすれば、身体を壊す。

 前世のアスリートもそうだ。どれだけ身体を壊さず、地力と技術を向上できるか。


 魔力を絞り流し続けながら、身体も動かす。

 中々に大変だ。しかしこれは楽しい。


 童心に返る、のではなく童心そのままを解放させるように、限界まで走り回った。


「…………(きゅう)」


「ではまた、休憩に致しますかな。


 お召し物も、汗をかいているようですし換えた方がよろしいかと」


「殿下。先にお風呂に向かいましょうね。


 この時間ですし、再開は昼食後からですか?」


「それが良いでしょうな。儂も少し用があるので、ちと遅めになりますが」


「畏まりました」


 子供の体力は無限だけれど、上限は低い。

 魔法でそれも少し底上げしていたみたいだけれど、前世の意識が目覚めて初めて、限界まで体力を使った。


 体力を使い切る感覚は、苦しい。

 苦しいが、楽しかったこともありどこか心地よい。


 これはよく眠れそうだ。


 メアにお姫様抱っこならぬ、王子様抱っこをされ運ばれる。

 眠気も徐々に強くなるため、されるがままだ。

 元々されるがままじゃないか、というのは内緒。


 さっぱりし、ベッドに身体を預ける。

 身体も疲れているから、何時もより心地よい。

 これからは体力も使い切るようにしようかな。


「お休みなさいませ。リース様」


「ぉゃぅぃ、ぇぁ…………」


 既に眠気は、表面張力いっぱい。

 意識を手放せば、溢れ出す眠気の海に沈んでいく。












( ˘ω˘)スヤァ
















 ──────────


 もしもゲーム風表記をしたら。


【リース・アルザ・オーレスト】

 ・年齢:3才と少し

 ・立場:オーレスト王国第7王子

 ・称号:傾国の息子


 ・保有魔力:王族級(その中でも下限ギリギリで入れる程度)


 現在、所有している能力。


【王将】


【夢を現実にする能力】

 ・夢に願った能力を獲得できる

 →【能力把握】


【眠りの能力】


 現在、使用可能な魔法。


【睡眠誘導】

【強制睡眠】


【お目覚め】

【強制起床】


【魔力弾】

【身体強化】





 ・魔法解説


【魔力弾】

 魔力を用いて使うことの出来る、基礎的な魔法。

 魔法の指導、指南をする際に、最初に覚えさせることの多い魔法。


 魔力を球状、弾状に形成して飛ばす。

 習得は比較的容易であるが、技術、練度により大きく様変わりする。


 沢山の弾をばら蒔く魔法使いもいれば、一撃に魔力を籠める者もいる。


 この魔法の技術を応用することで、他の魔法を使う下地を作るのである。

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