第14話
魔法の修練をして数時間。
接触して発動するだけでなく、飛ばす魔法も出来た。
効力はかなり落ちるようだけど、飛ばしても効果があるだけでも、成長が早いとレイル先生からお墨付きを頂いた。
的は基本レイル先生だけれど、時折メアにもかけてみた。
メアは魔力が低いので抵抗も弱い。
だけれど意思が強いのと、受信能力で身に付いていた耐性により、眠りの魔法が効きにくいことが判明した。
眠気が強くとも、お目覚め魔法を使えば眠気を払うことも出来るし。
魔法を使っている僕も、生理的に眠気を感じたので眠ることにした。
魔法で眠気を払うことは出来るけど、身体の成長のためにも、能力の成長のためにも、きちんと寝た方が良さそうだし。
1度眠ってスッキリ。
魔法も感覚が定着して、より使いやすくなってる。
今は魔法をレイル先生に飛ばしているところだ。
ただし、レイル先生は多少ゆっくりと動いている。
動く的に当てる、という修練である。
真面目な(怖い)顔で反復横跳びするレイル先生に、魔法をどう飛ばすのが良いか考えていると、
「失礼しまーす。メイド長に命じられて参りましたぁ」
とどこか暢気そうな声がかけられた。
「うむ。少し待っていてくれ。準備をする必要が有るのでな。
出来たら声をかける」
予め打ち合わせた通りに動く。
レイル先生は外から戻り、メアは椅子をセットしている。
そのメアにとことこ近付くと、メアは背の高い箱を横に置いた。
その裏に、僕は隠れる。
「入ってくれ」
「はぁい」
入ってきたのは可愛いけれど暢気そうな表情のメイド。
メアのメイド服とは、少し異なるようだ。見たことのあるメイド長ともまた少し違うし、立場で異なるのだろうか。
強面ムキムキ筋肉達磨のレイル先生に対して、全く怖がる様子もなく、会話をしている。
メイドは椅子に座った。こちらには背を向けている。
つまり、チャンスだ!
当たり障りの無い会話をしている裏で、精製していた魔力にイメージを籠め、魔法を放つ────!
──────────
ここでようやく回想は終了。12話冒頭に戻ってくる(メタ)。
レイル先生は、メイド長に実験台とも言える人を依頼する際、内容を伝えないように頼んだらしい。
先入観等を排除して、効果を確認したかったそうだ。
手が空いていて、余計な気を回さず、平民出の者(ついでにレイル先生と普通に会話できる者)。
色々と条件のある中で、メイド長が選んだのがこのお惚けメイドだった。
最初に撃ったのは、睡眠誘導魔法。
これはそんなに効かなかった。
会話している最中に撃ってみたのだが、やや眠くなった位で話し掛けられると元の暢気そうな状態に戻っていた。
ちなみに、魔法には気付いていなかった。
次に撃ったのは強制睡眠魔法。
飛ばす魔法でも相手の魔法抵抗の感覚は分かるのだが、殆ど抵抗がなく素通りで効果を発し、眠らせることに成功した。
「殿下、そろそろ起こしてあげましょう。こんなのでも寝顔をさらして置くのは可哀想です」
おや、メアの態度が妙だ。
なんか冷たいけど、暖かくもある。
「友人なのですよ、彼女は。まあ気に食わないところもあるのですが。
暢気そう、と殿下が思う通り暢気な分、彼女の人当たりは良いのです」
なんかツンデレてる。可愛い。
あまり他人に対して良い印象の無いメアが、友人と評せる程の人なのだろう。暢気だけれど。
おっと、そろそろよだれ垂らしそう。
お目覚め魔法を放つ。流石に強制起床魔法はかけない。
対人の嫌がらせ魔法として、一級品になる素質があるそうだし。
「はれ…………? あっ申し訳ありませんタチク様。
居眠りなどしてしまい、本当に申し訳ありません!」
「構わぬとも。そなたに何の落ち度もない。殿下」
「うん。あなたはなにもわるくないよ」
「で、殿下! いらっしゃったのですか?」
姿を表し声をかける。
流石に慌てているようだ。そりゃあ、仕事中に居眠りした上に、王族に見られたのだから当然だ。
しかしすごい。何がすごいって、慌てているにも関わらずどこか暢気な空気は漂っているのだ。ふわふわしてるような。
「大丈夫よカエラ。貴女は殿下の魔法指南の手伝いのために来てもらったの。
その用事ももう終わったわ」
「え、えぇ? そうなの? それなら良かったわ」
それで納得するんだこの人…………。
なんの説明にもなってないよ?
「ご苦労だったな。メイド長に、ボーナスを渡しておいた。後で受け取ると良い。
また今後も、依頼することが有るかもしれないが、構わないか?」
「はいぃ。それは勿論お引き受けするのですが、私お役に立ったのですかぁ?」
「うん」「なっている」「大丈夫よ、だから別の仕事に向かいなさい」
「はい。では失礼致しますねぇ」
それで納得できるのかぁ、暢気すぎないかなぁ。
余計な気を回さない、という条件には合うけれど本当に大丈夫なのか?
いや大丈夫か。メアが居るんだもの。
メアの友人でも有るようだし、何か裏がある、ということもないだろう。
きれいにお辞儀をして退出していった。
ヘッドドレスと共に、胸が弾んで揺れていた。
すごいな、あんなに弾むんだ──ッ!?
「どうされました? 殿下」
「いや、なんでもないよ」
メアからなんか伝わってきたような…………。
いや考えるの止めとこう。
僕の勘もそう言っている。
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