第7話
夕食はお米を使ったドリアをメインとした料理だった。
熱々でふーふーしながら食べました。
ソースがお米と良く合い、チーズの風味も美味しかったです。
王族だけど温かいものを食べられるって素晴らしい。
「私が殿下の味方をする理由。
それは一緒に居ると幸せな気持ちになるからです」
幸せ? それは嬉しいけれど、良くわからない。
「私の能力は、考えていることだけでなく、感じていること、思っていること。感情も受信できます」
どんな感覚なんだろうな。
言葉だけでなく、感情も伝わるのは便利な反面重くもありそうだけれど。
「この感情とは、怒りや憎しみと言ったマイナスのものも受けます。
ですが、嬉しいや幸せだと言ったプラスのものを受けることができるという利点もあるのです。
そう思えたのは、殿下と出会えたお陰ですが」
どこか気恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにメアは告げる。
「殿下はお眠りになられるとき、とても幸せなようなのです。
ほわほわとした優しい幸福感。
波が引くように眠気が去り、爽快感のある寝覚めと、良く眠れたという満足感。
その感覚を、私は受け取ることが出来たのです」
何でも、この受信感覚は個人差が大きいらしく、また幸せな感情といったプラスな感情は受け取りにくいらしい。怒りなどの感情は受け取りやすいようだけど。
そんな中で、僕の感覚は他の人よりも相性が良いのか特に感じやすく、一緒にいるだけで幸せになれるらしい。
それは嬉しいけれど、
「それは、ぼくがなにかしたわけじゃないんじゃない?」
あなたと居ると幸せだから一緒に居たい。
そう言われて悪い気はしない。
嬉しい。だけれど、それだけ? とも思ってしまう。
「それがとても嬉しかったのですよ。それだけでは有りません。
殿下のお世話をすることで、殿下の感じた感情をより強く受信することが出来ます。
それは何より私にとって嬉しくて幸福なことなのですよ」
だから、理由としては大したことではないと。
そしてそれは、周りから遠巻きにされている僕の味方になるだけの理由となるらしい。
僕には他者の思考や感情を知る能力はない。
だけれど、メアが一切の虚飾なく、本当のことを言っているのだと伝わってくる。
なら、悩む必要はない。
「メア、ありがとう」
この気持ちをそのまま伝えれば良いだけだ。
たとえ、感情が伝わるのだとしても、拙くとも、言葉にして。
今度は僕から抱き着いた。
メアは抵抗することなく、確りと抱き返してくれた。
…………サイズの関係上、ほぼ抱っこされちゃってるけれど。
───────────
お互いにむぎゅむぎゅ抱き合っていると、時間が大分経っていた。
メアにお風呂で丸洗いされることに、羞恥を覚えつつ、しかし洗ってもらう心地よさに身を委ねてしまった。
寝巻きに着替え(させられ)て、あとは寝るだけ。
怒濤の1日……と言う割にはお話と食事、睡眠、そしてメアと心で触れ合った位……いや怒濤かな。
「お眠りになる前に1つ、宜しいでしょうか?」
「なあに?」
優しい笑みのメアに頭を撫でられながら、何だろうと問い返す。
「殿下は、何かしたいことは有りますか?
前世の記憶もはっきりとした今、何かしたいこと、何か成したいことが有るかもしれません。
無ければこれから見付けていけば良いと思いますが、有るのであれば、お伺いしたいのです。
その一助となるために」
したいこと、成したいことかぁ。
色々と浮かんでは消えていく。
徐々に満潮のように上がっていく眠気を受け入れつつ、僕の望み、願望を探っていく。
…………
……………………
…………………………………………
「ああ、あった」
前世、考えていた。
死ぬ直前にも思っていた。
「ねむりたい」
子供の頃はお昼寝が好きだった。
中高生位の時は、時間がもったいなくて寝るのが惜しかった気がする。
大学生では、逆に充分に眠ることこそが贅沢なのだと思うようになった。
そして、何かの仕事では、寝ることすら覚束なくなってしまったように思う。
働くのは良い。
だけれど、眠りたかった。
より質の良い眠りを。
充実した生活がもたらす、心地の良い眠りを。
何よりも無欲かもしれない、何よりも強欲かもしれない。
気持ち良く眠りたい。
それが、1度生を終え、何の因果か記憶を持って転生した僕の願い。
全ての指針となる、根源。
「承知しました殿下。その願い、私にもお手伝いさせていただければ幸いです」
優しいメアの声が聞こえる。
そうだ。
「なまえで……よんでほしい」
殿下だと、他人行儀っぽいじゃないか。
対外的なことがあるかもしれない。
でも周りの目を気にしなくて良いときくらい、眠るときくらい、名前で読んで欲しい。
誰が名前をくれたのかは分からないけれど、この生の名前がきちんとあるのだから。
これだって、僕のしたいことだ。してほしいことだ。
メアの協力が無ければ成し得ない願いだ。
「仕方がないですねぇ。そんなことを思われたら、全力で協力したくなってしまうでは有りませんか」
小さく、しかし優しい笑声を溢しながら、僕の耳元まで口を近付けて囁く。
「御休みなさいませ、リース様」
その慈愛のこもった声に導かれるように、意識は沈んでいった。
暖かな幸せに包まれるように。
( ˘ω˘)スヤァ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます