第6話
異世界転生だとか、転移だとか。
前世の小説や漫画では擦りきれるほどに題材として使われ倒した。
前世にて、自分が転生したら、転移したらと夢想したことは数知れず。
その時の流行り廃りによって、マイナススタートならどうしようと考えたこともあった。
エピソード記憶は無いものの、忙しく働いてるときも、転生したら~だのは考えていた気がする。
それがこれですか。
王子スタートはかなり、いや尋常じゃなくプラスでは有るものの、取り巻く環境がびっくりするほどマイナスである。
プラスをゼロ以下にするほどではないが。
母親何してくれてんだよ、と思わなくもないが、産んでくれなければここに居ないし、そもそも実感もない。既に故人なこともあるし。
父親何してんだよ、と思わなくもないが、激しい恋愛した記憶もなく、多分前世では経験もなにもなかったような気もするし、父親が居なければ産まれて来ることもなかった。
こちらは存命であり、こちらに怨みや呪いを向けてるらしいけど、やはり実感はない。
なので。
「このもんだいはさきおくりで」
悩むだけ無駄ではないでしょうか。
「本当にそう思ってるようですね。傷付かないに越したことは有りませんけれど、やけに達観してらっしゃいますね?」
これでも1つの生を生きて終えたので。
子供の身体に引っ張られる部分も多いけれど、多少老成はしてるだろう。
実感が薄いのが一番の要因だろうが。
だから心配しなくても大丈夫です。
こういうとき、感情も伝わるのは便利だと思います。
便利だけではすまない能力だけれど。
「じゃあ、つぎはまりょくについておねがい」
「分かりました。ですが1度、お昼寝の時間と致しましょう」
確かに眠けもある。
ベッドに横になり、薄めの毛布をお腹に掛けられ、メアにとんとんされながらうとうとしていると、意識が遠退いていく。
( ˘ω˘)スヤァ
──────────
「では魔力について、触り程度になりますが説明いたします。
詳細は、専門の方々がいらっしゃるので、きちんと専門家の手解きを受けた方が宜しいでしょう」
子供の体力、というか眠気だろうか。
尽きるのも早いが回復も早い。
またすっきり目覚めて、現在はお茶とおやつを頂きながら魔力についての話を聞く。
ザクザクと歯触りの良いビスケットと、数種類あるジャムが甘酸っぱくて美味しい。
どうにかこうにか説得したメアも、ジャム載せビスケットを頬張っている。
美人の食べる姿は絵になるね。あっ、手で隠された。
魔力について。
この世界では森羅万象に関わり、またほぼ全ての存在が持っている不思議な力の源。
多くの魔力を持つと、身体は頑強になり、不思議な力を使えるようになる。
人間で言えば、身体能力が上がり物理法則を蹴飛ばすことも出来るようになる。
自然現象を意図的に起こし、様々な特殊能力のある物品を作り出したり、前世では不可能と思われることも可能とする。
しかし、魔力を持つものは人間だけでなく、動植物も持つ。
そして魔物という魔力を強く持ち、人間を襲う異世界ファンタジー御用達の外敵が存在する。
それらと対抗するため、人々は魔力が高く、強い者を中心にグループを作り、それが国の始まりとなった。
魔力が高く強い者達の中でも、抜きん出て強い者が居た。
その存在が王族の祖である。
王族ほどではないが、強い魔力を持つ者は貴族として、そして魔力は持つものの、魔物と対抗することは難しい者達は平民や国民、或いは奴隷として被支配階級として組み込まれた。
「じゃあぼくは、まりょくがつよいのかな」
「恐らくは。魔力の強さ・多さは遺伝的なものなので。
生まれ持った修練によって増やすことも可能ですが、大きく異なる相手を凌駕するのは難しいでしょうね」
親が2人とも魔力が強ければ、まず子供も強い。
片親が強く、片親が弱いと、その中間位になる。
10と1なら、5~6が多いが、9~2全て産まれる可能性がある。
なので、魔力が強い、高い者は同じくらいの相手と結ばれることを望まれるのだとか。
そして、魔力が強い者は責務がある。
「たみを、とちを、まもること」
「民は安寧を得る代わりに、労働力と税金を。
貴族や王は、民に支えてもらう代わりに守護者として君臨する。
かつて召喚された異世界の勇者はこれを【ノブレス・オブリージュ】と呼称されたようです」
この世界は個人の力が強い。
強いから偉い。
なんとも分かりやすいことだ。
「じゃあぼくも、いつかはたたかうのかな」
「有るかもしれません。ですが、戦うだけが王族の責務では有りません。
質の良い武具を作ったり、食料の生産効率を上げると言った方面で活躍する道も御座います」
生産職というやつか。
そりゃあ、ゲームでも戦うだけでなく後方支援も大事だったな。ゲームのタイトルは忘れてしまったが。
「さて、そろそろ夕食のお時間ですね」
なんだか記憶を取り戻して1日目は、話したり食べたり寝たりばっかりだなぁ。
子供だし仕方ないけれど。
そうだ。これだけは聞いておかないと。
「私が殿下の味方をする理由ですか?
では夕食のあとに説明致しましょう。大したことでは無いですけれどね」
いやいや、大したことだと思うんだけれど。
しかし、子供の身体はおなかへったと訴えていた。おやつ食べたんだけどなぁ。
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