第5話


 おはようございます。


 いや、もうお早くはないか。


 一眠りしてすっきり。

 フレッシュなフルーツジュースをクピクピ飲みながら、メアとのお話しを再開する。


「ええ…………? なにそれ」


 一番気になった家族関係のことをメアに聞いてみた。(本当は魔力の方が気になってたのは内緒。尚筒抜けである)


 そしたらものすごい面倒くさい状況だった。


 まずリース・アルザ・オーレストの母親は死んでいる。

 産後の肥立ちが悪く、回復魔法や薬学など国中の医術を尽くしたが亡くなってしまったそうだ。

 彼女は下級貴族の出ではあるが、大層見目麗しく、王であった父親の目に留まり、周りの反対を押し切って正妃に加えてしまったのだそうだ。


 これが妾などの立場であれば良かった。

 王位継承権が発生しない、庶子に近い扱いになる。

 王族としてはほぼ扱われないものの、良い生活をすることが出来る。

 元々王家はたくさん子供を作る必要があるが、あまり積極的でない男児が多い。


 その中でこの父親はお励みになることの多い、良い王だったとか。

 統治はまあまあ、評判は悪くない王だったのだが(過去形)、年を取ってから1人の女に熱を上げてしまった。


 そして女の方も評判がよろしくなかった。

 王に見初められるまでは、とても美しいこと(だけ)が取り柄の貴族令嬢だった(尚貧乏貴族)。


 女の親は美貌を武器に、上位貴族、特に金満な貴族に嫁がせることが出来ないかと目論んでいたが、まさかのキングを落とすとは思っていなかった。


 女の親も、光栄なことだが貴族の慣例に従って、あと周りの目が滅茶苦茶痛いこともあり、止めとけと諌めようとしたが、年を取ってはいるが渋さを増した王と、成熟しつつある魅力を振り撒く女は激しく恋に落ちてしまった。


 女はそれまでの貧乏暮らしなんて知ったことかとばかりに贅沢三昧しつつ、王はそれを容認した。

 これが王のために美しくある努力だと言うのなら救いはあった。


 しかし、単に贅沢したいだけであった。

 完璧に浪費癖がついてしまった。

 加えて、貧乏貴族のため身に付いていた筈の謙虚さは随分と図太くなり、わがまま放題。

 だが贅沢のうちに美しくなることは入っているので、魅了された王の目は曇るばかり。


 そんなこんなで、女は王家の内、王以外を敵に回しつつ、励みまくった結果子供を妊娠した。


 妊娠して尚、わがまま放題。

 王家の人間どころか、仕える者達からも大分嫌われていたものの、王が認めた王妃。


 国を割るわけにもいかないので、周りも何とかフォローしつつ諌めていたが決定的なことが起こってしまう。


 女が出産により、死んでしまったのだ。


 そして王がトチ狂った。


 妊娠したために、女とイチャコラが出来にくくなってしまいお腹の子に嫉妬していた王ではあったが、更には死なせてしまった。


 あの子供は呪いの子だー!

 だとわめき散らし、


 貴様らがきちんと看ていれば死ななかったと当たり散らし、


 さては貴様ら、故意に死なせたな! と医師や回復魔法師、神官に破壊魔法を叩き付けようとしたあげく、


 王弟にぶん殴られて幽閉中である。


 国民にはなんとか隠し通して、王妃が死んだことによるショックによる病気だと半分真実なことを広めている。


 現在は王弟が王代理として御輿に乗り、王が元に戻るのを待ちつつ、王の子供のうち、王に向いている子供達の教育を行っている。(尚王弟に子供はいない)


 そして残された子供、第7王子であるが、子供に罪はないけど、の子供だしなぁ、と遠巻きにされ。


 王代理の王弟は、慕っていた兄である王を狂わせた元凶である女とその子供を憎んでいる。

 女は死んでいて、女の家族は全力で恭順を示しているため、怒りのあまり振り上げた拳を下ろす先が子供しか居らず、屈折した思いを子供に抱いている。


 そんな子供が僕、リース・アルザ・オーレストである。


 それを聞いた僕から出てきた言葉は、


「ええ…………? なにそれ」


 である。

 生まれは良くても、産まれたときからハードモードとか聞いてないでござる。


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