第4話
「で、では改めてお話ししましょうか」
その綺麗で肌触りの良さそうな頬だけでなく、耳まで赤く染めながら、しかし仕切り直そうとしている。
うん、可愛い。
「かわいい」
「もう! 忘れてください! あと声にも出てますから!」
おや、声にも出してしまったようだ。
でも忘れてあげません。可愛かったので。
可愛い可愛い。全力で念を送ってみる。
「もう、からかってますね?」
ベッドで横並びに座っているメアに、ほっぺを手のひらで包まれむにゅっとされる。
すみません。可愛かったのでつい。
反省はしてません。
「もー、話が進まないじゃないですか」
でも嬉しそうにしてるじゃないですか。
あーむにゅむにゅされる。思考が乱される。
でも嫌じゃないし、嬉しいから良いや。
「もー! 殿下ったらぁ!」
───────
一頻りほっぺをむにむにされ、落ち着くまで結構時間がかかったように感じたが、実時間はそんなでもなかったようだ。
我にかえったメアに、とりあえず今すぐ知るべきことを聞いた。
僕の名前はリース・アルザ・オーレスト。
オーレスト王国の第7王子。八男ではなかった。
3才を迎えて少し。
メア曰く、聖水を思わせる澄んだ水色の瞳に、日光に照らされる鮮やかな海のような青色の髪。
母親に似た可愛らしい顔立ちだとか。
部屋にあった鏡を見てみると、確かに青かった。可愛らしいかは自分ではよく分からない。
前世持ちについては、この世界ではちょくちょく現れる存在として知られているらしい。
魔物を討伐し、魔王すら倒した善の強者もいれば、悪行の限りを尽くした者も居る。
知られることなく死んでいったものも居るだろう。
身近には居なくとも、世界のどこかには居るんじゃないかな、という認識らしい。
前世の記憶の保持具合もまちまちで、前世の記憶をがっつり持っているものも居れば、夢現と判断が付かないレベルの前世持ちも居たとか。
前世の記憶を使って財を成した者の物語が絵本になっているらしい。今度読ませて貰おう。
僕は人格も安定してるし、いわゆるエピソード記憶が欠落したタイプのようだ。
このタイプは数少ない前世持ちの中でも比較的よく見られるものだとか。
前世持ちだからと、すぐに非難されたり、あるいは持て囃される環境ではないそうだ。ここオーレスト王国のある近辺は。
ああ排除されたり、御輿にされる地域も有るんですね分かります。
前世の記憶を取り戻す時期はそのケースによってまちまち。
しかし、持って生まれる魔力が安定する1才から5才位までの間に思い出すことが多いらしい。安定する個人差激しいなおい。
希に産まれる前から、胎内から記憶のある者。
おっさんになってから記憶を取り戻し、不遇だった時代を塗り替えるように活躍する者も居たそうだ。
なぜメアは僕が記憶を思い出す前から前世持ちだと確信していたのか。
それは彼女の持つ能力、思考感情の受信能力によるものだった。
何でも、完全に思い出す前から、不安定ながら前世の思考が過ったり、感情を発していたらしい。
明らかに子供らしくない思考と、どこかへばりつくヘドロのような疲れきった感情。
それをメアは受信していたらしい。
最初は何事かと思ったそうだ。それも僕が熱に魘された状態でのことだそうで。
それからは体調を崩したり、あるいは何でもないときにふと前世の人格が不安定に出ていたようで、より注意して見ていたらしい。
並行して集めた情報で、僕が前世持ちなのは確実。あとは魔力が完全に安定したら人格も安定するんじゃないかと、準備していたそうだ。
それが今日だった訳だ。
なんか王子とか魔力とかおらワクワクすっぞだけれど、情報多すぎだ。
気になることも多い。
記憶に母親も父親もないのだ。王族なのに。あるいは王族だからか?
だけれど眠くなってきてしまった。
この身体は3才児なのである。
トイレに行き、用を済ませながら前はメアに介助してもらって居た記憶に少し悶えつつ、その思考を読まれたメアに撫でられつつ、お昼前まで寝ることにした。
お休みなさい。( ˘ω˘)スヤァ
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