第3話 壊死
新幹線と在来線を乗り継いで数時間、着いた先は高校生までを過ごした故郷。
俺のほかに降りた人はいない。
無人のホームを一人歩き、階段を上下して駅を出る。
何も変わっていない、
とはいかない駅前。
去年来た時より更に寂れた感じが強くなった。俺が子供の頃は駅前に本屋と文房具屋があったが、今はもうシャッターが下りている。
小学生になった時に友達と一緒に文房具を一通り揃えに来た。
本屋には漫画を買いに来たり、立ち読みをしたこともある。
そんな思い出の場所はもう見る影もない。ここが閉店してしまって子供たちはどこで本や文房具を買うのだろうか。車で買いに出るのか通販か、それとももう子供がいないのか。
俺が上京してから新しくドラッグストアができたのだが、それもまた閉店しているのだからもう駅を利用している人すら少ないのかも知れない。俺のイメージでは駅前っていうのは一番人通りが多く賑やかだったのに。
家までの道のり、あの頃は当たり前だった道のり。当時は一人ではなかったこともあってか近いとも遠いとも思わなかったけど、今歩いてみると結構距離がある。
初めておつかいに行ったスーパーは閉店している。
元々古かった薬局は開いているのか閉まっているのかわからない。
タバコ屋は自販機が代わりに立っている。
何度かお世話になった町の電気屋さんももうやっていないようだ。
銀行、料理屋、全て看板が下ろされている。
まるで抜け殻だ。
たまに車は通るが歩いている人は俺以外にはいない。
昔からこんなだっただろうか。遠い思い出は定かではないが、これでは町として機能しているようには思えない。
まるで時代の新陳代謝に取り残されているかのようだ。
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