第10話

春季大会も風上高校の勢いは止まらない。

2回戦、3回戦ともに7回コールド、ここまでの3試合でエースは3回1/3のみと、完全に温存した状態でここまで勝ち進んできた。

そして4回戦、風上高校は第一の障壁と当たる。


兼倉学園―――。

去年の夏にはベスト8まで残り、秋にはベスト4に進出。

激戦区神奈川で、風上と同じく安定して準決勝まで進む強豪校だ。


「これ勝てば次は横浜学院か。まあ...兼倉も強いからなあ」

そう口にしたのは3年生の水谷だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

3日後...


兼倉学園 ― 風上高校


1番 遊 杉浦 大洋 (2年)

2番 二 立花 裕二 (3年) 

3番 右 上水流 勇斗 (3年)

4番 一 鈴木 涼真 (3年)

5番 三 水谷 光 (3年)

6番 中 山本 仁士 (2年)

7番 左 新橋 春樹 (3年)

8番 捕 大田 真司 (3年)

9番 投 草薙 優 (3年)


まさに総力戦となったこの試合。

まずは1回表、兼倉学園の攻撃。


草薙の鋭く曲がる変化球と、時折混ぜるストレートに翻弄され、3者凡退。

強豪高校のエースは、相手がどこだろうとお構いなしに、己の投球を全うする。


1回裏、先頭打者は2年の杉浦。

足の速さと広い守備範囲が持ち味で、風上のショートを春から守り続けている。

打率は2割台だが、盗塁成功率は90%を越え、最も塁に出したくない男である。


相手投手は背番号1を背負うエース。


初球、ストライクゾーンに来た球を打ち返すもファール。

2球目、高めに外れ、ボール。

3球目は外角低め、僅かに外れてボール。

4球目を打つが打球はサード正面へ。


(よし、1アウトだ...)

兼倉の三塁手はボールを捕球し、一塁に投げる体制を取った。

「!?もうあそこまで!?」

杉浦は既に1塁ベース付近まで迫っていた。


しかし間一髪アウトに。

兼倉サードの落ち着いた送球で惜しくもアウトになった。


2番はセカンドの立花。

初球からボールを見ていき、9球目で四球を奪い取る。

そして、3番打者の上水流。

真中付近に来た変化球を捉え、ライト前に。


一死一二塁となって、4番の鈴木を迎える。

1球目は高めに外れてボール。

2球目も変化球に力が入りワンバウンドになる形でボール。

3球目、外の球を弾き返すが、惜しくもライン際ファール。

4球目、インハイに抜けてボール。


そして5球目、ダブルスチールを仕掛けた。

ボールはギリギリストライクゾーンに入ったが、これで一死二三塁。

捕手はいきなりのダブルスチールにボールを握ることができなかった。


そして、6球目―――。

鈴木の打った打球は、バックスクリーンに入る特大弾。

早くも3点を先制し、試合を有利に動かした。

ベンチで祝福される鈴木とハイタッチを交わし、5番の水谷が打席に入る。


初球を早くも捉え、二塁打。

6番センターの山本はファーストゴロに倒れるも、進塁打となり二死三塁。

7番レフトの新橋がセンター前へ運び、これで4点目。

初回から猛攻撃を仕掛けた風上高校。

続く8番の大田がショートフライに倒れたが、4点は草薙にとっては十分すぎた。


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