第6話
2球目は外れたものの、3球目はファウルでストライクを取った。
これで1-2。バッティングカウントだ。
続くボールはストレート。真ん中高めに浮いたボールは、姫矢のバットの芯にあたった。
しかし若干タイミングがズレ、ライン際外に落ち、ファールになった。
2-2、並行カウント。
続く5球目、内角にチェンジアップが決まるも、僅かに外れフルカウント。
そして、6球目。
膝下に投げた直球は、姫矢に打ち返され、左中間を破った。
三塁走者はホームイン、回り込んだレフトが中継に投げた時には既に二塁走者は三塁を回っていた。
そして、中継に入ったショートの早急が逸れ、誰もが追加点を確信した。
その時・・・。
田中は既に逸れた方向でミットをどっしりと構えており既にタッチする体制にも入っていた。
瞬発的な判断力とそれを実行に移す大胆さ。
そのプレーが実を結んでか、二塁走者の帰塁を防ぎ、二死二三塁となった。
「すげぇ!田中!」
「よし、あと1アウトだ。抑えるぞ、石川」
「おう、ありがとな」
田中のファインプレーもあってか、石川は切り替えたピッチングで後続を打ち取りスリーアウト。
しかしこの回、Aチームが1点を先制した。
そして4回の裏。
2番打者はショートゴロに倒れ、続く3番もセンターライナーに倒れる。
制球力と変化球を駆使し、まるで子供を相手にするかのように姫矢に遊ばれるBチーム。そして4番の田中。
1球目は大きく外れボール。
そして続く2球目、外のフォークボールで空振りを奪われる。
右打者の田中、右腕の姫矢。
エースと4番の一大対決に、辺りは静けさに包まれた。
そして3球目。
捉えた辺りも、切れてファール。
追い込まれた田中、4球目はインハイの球を選んでボール。
そして5球目、これも捉えたが真後ろに飛びファール。
タイミングは明らかに合っているようだった。
そして6球目、膝下のフォークを見逃しフルカウント。
7球目、8球目もファールで粘り、9球目。
遂にフォアボールを選んで出塁する。
そして5番打者 津軽もファーストのエラーで出塁し、二死一二塁。
そして6番打者は井崎。
初球はフォークボール、ファウルチップとなりストライク。
2球目は真ん中の137km/hのストレート、これも空振り。
そして3球目、渾身のストレートが外低めに決まり見逃し三振。
姫矢から奪ったチャンスも、二者残塁で終わってしまった。
そして、5回表・・・。
遂に神城がマウンドに上がった。
「よう、田中。」
「前置きはいい。で、お前...球種は」
「ん?一応スライダーなら」
「そうか...分かった」
それだけ言うと、田中はそそくさと戻ってしまった。
そして、下位打線。
まずは7番打者。
初球はストレートをど真ん中に要求してきた田中。
これには神城も驚きを隠せなかったが、言われたとおりにしようと構える。
大きく振りかぶったオーバースロー。
左腕から繰り出される140km/h近い直球。
打者の手元でスーっと伸びていくストレート。
これが、分かっている限りでの彼の持ち味である・・・。
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