第1章 直球だけでねじ伏せろ!

第4話

「よし、次!神城、やってみろ」

「はい!」

威勢が良いと言うか、元気というか。

大股で前に進む神城。

「おもしれぇ1年も居たもんだな」

「おう。...って左腕サウスポーかよ。珍しいなあ」


左腕の神城、元々は右利きだったが、野球を始めた当初、家に左用のグローブしかなく、結局この左用グローブが彼にハマり、今に至る。


先程の長身とは打って変わって、滑らかなフォームで引き絞る。

その左腕からリリースされたボールは・・・

キャッチャーの手前でワンバウンドした。

3年生も分かりきったかのように「あぁ~」と漏らした。


しかし緊張が解れかけた二回目。

高く行ったが、それでもミットは煙を巻いてボールを掴んだ。

パァンと、爽快な音が響き渡る。


「おぉ?さっきのやつより速くないか・・・?」

「138km/hは出てるんじゃねぇか...?」

更に三球目。


今度は右打者の内角に向かってストレートが伸びていった。

その音、勢いからするに、140km/hは行っているようだった。


「は、はぇぇ!」


しかし、ストライクが行ったのはその一球だけで、制球力は皆無、変化球は一球も見せること無く終わってしまった。

「しっかし・・・単純な速さだけなら神城が圧巻だな。3年になったら150越えるんじゃねーか?」

「ああ。140km/hは出てるようだった...スピードガンってあったか?」


3年生が練習にぞろぞろと進む中、そういった会話も聞こえてきた。

しかし・・・

「まあ~総合的に見ればあの長身の...誰だっけか?」

姫矢ひめやか?あのフォークボールはまあ...簡単には打てないよな」

「それにストレートにも力があった。あれだけの素質があって初めてベンチ入り争いに参加できるっつーんだから酷だよな...それに」

「アレか?」

「アレがあるしな」


―――――――――――――――――――――――――――――――


「おい、聞いたかよ。1年生同士で紅白戦があるんだってさ。いきなりのアピールチャンスじゃねーか」

「まじか?それ。」

「ああ、どうやら風上高校の伝統らしい。」

一年同士の紅白戦。

監督が1軍の練習に合流させる1年を選出する大事なイベントでもあり、更に選手たちにとってみれば、最初で最大のアピールチャンスである。


「なんか燃えるな~」

「ああ、絶対1軍に合流してやる!」

1年生たちが燃える中、静かに闘志を燃やしている男がいた。


姫矢ひめや れん

長身右腕。130km/h後半の直球に加え、鋭く落下するフォークが持ち味。

中学時代は全国大会に進出、ベスト4まで進んだ。


神城しんじょう 春斗はると

今作主人公のサウスポー。ストレートはMAX 140km/hを越える。しかし変化球はほぼナシに等しい。中学時代の実績はほぼ無し・・・とされている。

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