第3話
全てにおいてが高水準。
それが強豪校というもの。
ブルペンから響き渡るのはキャッチングの音。
響き渡るミットに収まるボールの音。
ノックの音、ボールを呼ぶ声、フリーバッティングの音。
様々な音が飛び交うグラウンドに、一年生たちはその実力を図られていた。
特に投手希望の者たちには、熱い視線が集中する。
「野手はまあ競争が激しいが、投手はもっとだよな」
「ああ...何しろ藤堂と草薙がいるからな。ベンチに入れても2,3人だろ。...それに今は埋もれているだけで、他にもいい投手はかなりいる。一年生にゃあ...酷だぜ」
休憩がてらに一年生を見つめる3年生たちが口々に言う。
神城にもその会話は聞こえていた。
次々と投げていく1年生。そろそろ神城の出番かというところ。
見たことのあるような顔立ちをしたやや長身の1年が隣に食い込んできた
「んなっんだよお前...ってどっかで見たこと有るような」
「ああ、さっきはすまなかった」
「あ!さっき俺と自己紹介を被せやがったはみ出しもの!」
「その言いぐさは酷くないか」
「はっはっは!おまえがわるい!」
「まあ、一理ある」
そういって軽快に笑うと、どさくさに紛れて神城を抜かしブルペンに入っていった。
「ん...次は...身長たけーな、180...とはいかないか」
「さて、お手並み拝見だな」
3年生たちもブルペンを先程から凝視していた。
どの1年生も、緊張で縮こまってか、本来の力を出しきれず終わる選手が多数いた。
その分、この長身はゆら~りと全身の肩のちからを抜いていた。
それ故に、底しれぬ何かが3年には見えていた。
最も神城は・・・
「だははっ!なんだそのフォームは!ゆらゆらしすぎじゃないか!」
とヤジを飛ばす結末。
しかし・・・
先程のゆらゆらとした構えから一変、鋭いフォームに変わった。
足を上げた瞬間に、砂塵が巻き上がる。
その右腕を目一杯広げ、左足を踏み込み、一気に振り下ろす。
ダイナミックなオーバースローから放たれたストレートは、キャッチャーの構えるミットど真ん中へ突き刺さった。
球速は軽く135を越えているだろうか。
3年は唖然とした。同じくブルペンで投球練習をしていた藤堂や草薙も投げる手を止めていた。
更に2球目、放たれた球は急激に落下した。
――――フォークボールだ。
挟み込んで投げることによって、打者の手前で急激に落ちるボール。
野球を知る人なら分からない人はいないであろうかもしれないメジャーな変化球だ。
全5球、うち4球がストレート、その全てが135km/hを越える球速だった。
「すごいやつがやってきた」
1年生ながらも140km/hに近い直球を投げ、更には急激に変化するフォークも持つ。
草薙、藤堂。更に空いた投手陣の背番号の奪い合いに、また一人候補者が加わった・・・。
そして、続く男は・・・
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