再生


数年前に鎖が千切れて床の上に落ちたクリスタル・シャンデリアの様に

砕けて四方に散っていった

魂の欠片は

どうやら大分集まったようだ

全てはまだ揃っていないけれど

再び飾り付けるには充分だろう

多少のひびは問題ない

更に増した光の乱反射で

昔より却って美しく輝いて見える


金の刺繍を施した

葡萄酒色の絨毯の上に

悲鳴とともに砕け散った硝子の破片を目にしたときは

正直もう修繕不可能かと思った

耳鳴りのように鳴り響く拍動

頬を伝いっぱなしの血の涙

十字架が突き刺さったままの心臓

時と共にこのまま鼓動が永遠に止まってしまえば良いのにと

あの時はつい願ってしまった


何にも聞こえない 

何にも見えない 

何にも感じることが出来ない「無」の世界

もがいてももがいても

真っ暗な闇の底から

這い上がれない状態がずっと続いていたから…


神は沈黙したままで

何も答えてはくれなかったけど

傷付いた魂を暫し休めよと

言い続けてくれていたのかもしれない


傷だらけのクリスタル・シャンデリア

パーツが全部揃っていないからか

すっきりしない部分があるけれど

欠片を新たに見付けたら

その時にまたつければ良い


そうすれば

今よりも更に燦然と輝くようになるだろう


そう

あの金剛石よりも眩く…

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