Paradise Lost

蒼河颯人

Paradise Lost


木洩れ日がカーテンのように泉を包み込む

羽ばたく鳥と木葉が奏でるシンフォニア

足の下にはざらつく小石

ひんやりとした水を手ですくい頭から振りかけた

指先から弾けた滴が風に乗り弧を描く

ここは限りある永遠の世界

その一瞬だけ垣間見るのを赦された桃源郷


太陽の祝福を受けた髪

真夏の青空をうつした瞳

その双球で位抜かれたのは

湖から引き揚げられた石像

それは女神に姿を変えさせられたダヴィデ像

大きく見開かれたままのその瞳に

失われた楽園の夢を見た


憂いを滲ませた瞳に

鼓動はアッチェレランド

カデンツァの調べと共に

時は指の間からすり抜けて行く

貴方の唇から弾けた白桃の煌めき

背中に感じる大きな手と顎に滴る果汁

抗えない芳香と甘い塩味の中に

現実の苦みと絶望の悲しみが浮かんでいた


真っ二つに割れた白桃

裂けた果肉からは無音の叫喚が溢れている

もう触れたくても触れられない

時は過ぎ門は閉ざされ

二度と開かれることはないエデンの園

形が変わっても

忘れられない想いだけが

せせらぎと共に瞬いている

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