第14話 解説 1 タイムラグの処置法

 前話の書面のところでも書きましたが、とにかく裁判というのは、いつ書面が相手に送達されるかが勝負。


 「訴状を読んでいないのでコメントできない」


 こういうコメントが訴えられた側から出ることがあります。テレビのニュースや新聞記事などでもおなじみのものですよね。

 確かに、コメントすると差し障るから、読んでいるいないにかかわらずそのように言う場合も、もちろんあるでしょう。

 しかし、実際には、裁判所の書記官段階において形式審査をして、さらにそれを特別送達という名の郵送にかけるまでの時間、そして郵便局に行ってなおかつ、相手方に送達されるまでの時間がかかるわけです。

 そこに、一種の「タイムラグ」があるのです。

 それは原告であれ被告であれ、いろいろな作用を及ぼすわけですね。

 この裁判においても、訴状をすでに裁判所に出したにもかかわらず、相手がさらにブログを通じてからんでいたのは、まだ「訴えられている」という認識がなかったからです。それは、届いていないから、というのが主たる理由。

 現に、特別送達が届いた段階で、相手のブログを通じたこちらへのメッセージはぴたりとやみました。


 私が仮に、「裁判所に訴えた」とブログで宣言し、事件番号もついたとします。

 なおこの事件番号、訴状が出た段階で、早いうちに書記官が割り振りしてつけられます。元号の後の(ワ)などというカタカナも、実は、意味があります。それについては今回は解説を控えますが、これは裁判所側での必要あっての分類記号です。

 さらにそのあとにある「損害賠償請求事件」など、どんな事件かを示す表記もありますが、これは、訴えた側が自らつけるものです。ただ、内容にそぐわないものをつければ、さすがに、裁判官から書記官を通して「補正」するように言われるでしょうね~私は言われたことはありませんけど。

 ですから、この裁判から派生した別口の裁判で「補正」をした際に、すでに事件番号を表記していたのは、最初の訴状を出した段階で事件番号がついていたから、こちらがそれに応じてつけたわけです。


 これだけのことが相手の知らないうちに展開しているわけですが、当然相手は、いくらブログで宣言された、どうも訴えられたらしい、裁判所の受付印の入った書面の写真も見せられた、という条件まで整ってみたところで、それでは読みようがないから、ああいうコメントは、まあ、致し方ない、というところですね。


 このことに限らず、裁判というものは、どうしてもタイムラグが発生するものです。それゆえ、時間のかかるものと言ってもいい。もちろん、急いで対処しないといけないものもないわけではないが、大抵のものは、時間のある程度かかるものです。 慌てて反応などすると、自分に不利になる可能性をへたに高めるのがオチです。


 逆に言えば、そのことをうまく把握しながら展開できるのが、この手の世界。それは単に裁判という舞台だけでなく、その周辺に係る物事についても、そうなのです。

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