第8話 移送申立の却下申立書
平成22年(サ)第 号
基本事件:平成21年(ハ)第 **** 号 損害賠償請求事件
原 告 米 河 某
被 告 自称 中松 某
移送申立の却下申立書
上記当事者間の頭書事件における被告側からの移送申立ついて、原告は、下記のとおりの決定を求め、併せて被告の主張に対する反論及び原告本人の意見を以下のとおり述べるものである。
平成22年 1月19日
岡山簡易裁判所 民事X係 御中
岡山市中央区北中町~
原 告 米 河 某
第一 本件管轄移送の申立に対する原告の主張の趣旨
被告の申立てを却下する。
本件を岡山簡易裁判所にて審理する。
との決定を求める。
第二 被告の申立に対する原告側の反論
被告代理人(以下本書面においては原則として「被告」とみなし、「被告」と表記する)提出の移送申立書第2 申立の理由につき、以下、原告の主張を述べる。
1 について そのとおりであり、争わない。
2 について
(1)について 以下のとおり争う。
(2)について
被告は、「(民法710条の)「名誉」に名誉感情が含まれない以上、当然に被害者の居住地自体が損害の発生地になるものではない」と主張し、それをもって、「被害者の居住地に当然に土地管轄が発生すると考えることはできない」と結論付けている。
しかし、被告の主張するとおり、「被害者の客観的な社会的評価は、当該表現行為が第三者によって受領された場所において低下するもの」であるところ、原告ブログの読者は、当然、被告の居住するZI市内よりも、原告を知る者の多い岡山県・岡山市及びその近辺にもまた多数存在しており、また、原告は自己の著書や顔写真を原告ブログに多数掲載しているため、被告の書込みによって原告の客観的評価を下げられる地として御庁の管轄地はそれに該当する。
なお、被告は名誉毀損に事を絞って論じているようであるが、被告の本件書込みが仮に名誉毀損の要件を満たさないものであったとしても、原告及びその関係者に対する侮辱の成立する余地のある書込みは複数あり、侮辱もまた不法行為の一形態であるところ、その侮辱による精神的苦痛を受けた原告の所在地は、岡山市であるから、その損害発生地は同地であることに疑いの余地はない。
また、「本件訴えは、原告が被告に対して不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めるものであり、本件損害賠償金支払債務の履行場所については、民法484条の持参債務の原則が適用されるので、原告の居住地である岡山市が民事訴訟法5条1項の義務履行地」(岡山簡易裁判所平成20年(サ)第318号、同年12月17日決定)となる。
以上より、御庁の管轄地をして「不法行為があった地」と原告が民事訴訟法第5条第9号の規定に基づき御庁に本件訴えを提起した点につき、管轄違いの不適法はない。
(3)について
被告をして原告ブログへの文章の記載が不法行為にあたるものとして、その実行行為が為された地は、被告主張のとおりZI市内あろう。
なお、閲覧者についてさらに被告は主張しているが、本書面(2)のとおり、原告の居住する岡山市内周辺にも複数の読者が存在する。それには単なるブログ上の知人だけでなく、原告の仕事上とそうでないのとを問わず原告を知る多数の者が閲覧しており、当然、同市内のその他大勢の者をして容易に閲覧しうる状態である。
(4)について 結語にて述べる。
3 について
1 本件について被告は、
「被告本人の当事者尋問が不可欠であり」、「被告は、S県内で歯科医院を経営する歯科医師であるから、その業務の傍らで平日の日中に岡山県まで出向いて弁論期日に出頭することが非常に困難である」から、「本件訴訟が御庁(岡山簡易裁判所)に継続したままであれば、訴訟が著しく遅滞することになる。」
と主張する。
2 しかし、被告本人の当事者尋問が仮に不可欠であるとしても、それは何度も行う必要のあるものではなく、通常は陳述書でもってそれに代えるなどの方法において被告本人の意見を述べさせることは充分可能である。
また、被告本人が歯科医院の業務の傍ら岡山市まで出向くのが困難だというならば、仮に本件をS簡易裁判所に移送し、あるいは被告代理人らの事務所を構える大阪市内を管轄する大阪簡易裁判所に移送したところで、被告本人の諸負担が極度に軽減されるわけでもない。
3 それどころか、被告代理人は大阪市内にて弁護士業を営んでいるようであるが、そもそも本件において大阪市内からみても岡山県岡山市よりさらなる遠隔地であるS県ZI市まで移送したあかつきには、原告本人はもとより被告代理人らにとっても御庁にて本件を審理する以上に交通費・日当などの金銭的負担に加えて移動時間が増加する。さすれば、被告代理人が本件訴訟について活動するための金銭的負担は、少なくとも一次的には被告本人に帰せられるものであるため、被告本人にとっても不利益である。
加えて、原告の居住地は岡山県岡山市内であるから、S県ZI市内までの複数回の出張は、あまりに過大な経済的負担を強いるものである。
よって、本件においては複数回審理を実施しなければならない可能性が極めて高いことにも鑑みるに、訴訟経済上もきわめて不経済である。
4 以上より、本件をS簡易裁判所に移送したところで、直ちに訴訟遅延が解消されるとは言えない。それどころか、原告、被告本人及び同代理人のいずれにとっても著しい訴訟不経済の生じるものであり、妥当な措置では到底ない。
第三 本件申立に対する原告の追加主張
1 本件につき原告は平成21年12月7日付にて御庁に訴状を提出し、被告には特別送達郵便にて同年12月17日午前11時頃に受領されている。
原告の主張そのものに対する認否であれば格別(既に原告は請求の趣旨拡張の申立(1)とともに原告準備書面(1)を追加の証拠とともに、御庁に対し去る平成21年内に提出しており、被告が答弁書を提出するはるか前に、被告が当該答弁書にて求めた求釈明の内の一につきすでに陳述準備を済ませている)、管轄については本来早急に決定されるべきところ、被告は、本年1月22日に第一回口頭弁論が開始される直前の1月15日になってかかる管轄移送の申立をし、原告本人及び御庁にして受領を受けたのは同年同月18日であるが、これは第一回口頭弁論開始の1週間前の期限をすでにして途過している。
2 よって、答弁書については格別、この期に及んでの被告の移送申立は、民事訴訟法第166条に規定する時機に遅れた攻撃防御方法に該当するものである。
仮に被告が、本件申立もまた御庁より求められた期間内に提出したものであると主張したところで、かかる申立は、昨年内、あるいは本年年始の時期にも充分可能であったはずであり、本件申立の時期をして正当であるとの根拠にはならない。
3 むしろ、被告の本件申立こそ、むしろ自ら訴訟遅延を招くことを御庁に対し予告するがごときものでさえあり、あまりにも失当の過ぎる行為である。
第四 結 語
以上より、被告の主張には酌むべき理由は見られない。
よって原告は、御庁に対し、被告による当該移送の申立てを却下し、本件を御庁にて係属するべき決定をなされることを求めるものである。
以上
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