第4話 原告準備書面(1)-3

12 甲第4号証 下段記事について

① これは「中松」なる人物が被告であることを原告が被告へ架電し特定した後、被告に対し裁判外和解を改めて申し入れた内容証明郵便(甲第3号証)に対する被告の返答内容である。


② そもそも原告がいくら「どのような方法で回答してくれても構わない」と述べたからと言って、公開の場であり、なおかつ記事の改変、削除等の容易な自己のブログ記事を用いて回答するというのは、先述のとおり、そもそも現在の社会通念上誠意を疑われて然るべき手法である。


③ さらに被告は本件記事の末尾において「意見は違いますが」などと述べているが、これは原告と被告の意見の違い云々の問題ではない。

 原告の主張に法的根拠があるかどうかを回答すべき場において、「意見の違い」などとたぶらかした言動は、相手方はもとより第三者の心証形成をも悪くするばかりのものである。

 この表現一つが当該記事に入ることによって、被告という人物の信義誠実性は、あまりにも欠落しているものとの印象をもたれても仕方ない。


④ 加えて被告はこの時点では「恐喝された」というニュアンスを本記事においては記述していない。

 もし原告の発送した当該内容証明郵便による文書が恐喝にあたるというのであれば、どの部分が恐喝にあたるのか、この時点で摘示すべきであろう。しかし本件記述より、そのような主張はもとよりその意思さえ見受けられない。


13 甲第4号証 上段記事について

① 取り立てて論ずるべきものではないが、原告が自己のブログをチェックしていることを見越してかかる記事を書いたことは、甲第5号証の記事に「すきやき」の記述があり、それに被告が自己の記事において引き合いに出していることにより、極めて明白である(同様の例として、甲第8号証-2)。


② これは、原告が関与を禁止したにもかかわらずブログというツールで原告に絡もうとした被告のこれまでの典型的手法である。加えて当該記述をなすこと自体、「恐喝」を「内容証明郵便」によって受けた直後の者の態度であるとは到底思われない。


14 甲第7号証 記事内容等について

① 被告は先述のとおり、平日(火曜日)の午前11時7分という、おおよそ歯科医院が社会通念上診察時間帯である時間帯に当該記事の書込みを行っている。

 これまで被告の書込みにはそのような時間帯のものはなかったが、ついにこの期に及んで診察時間帯の記事が出たわけである。

 図らずもそこに、被告をして原告にとことんまで追い詰められた上の「焦り」が原告には感じられる。


② さて、「100万円恐喝された」と被告は述べているが、その根拠は何か。

 また、なぜこの段階になって「恐喝」と述べたのか。

 この記述は、原告が甲第3号証・内容証明郵便において被告に対し裁判外和解交渉の申入れを行った際に提示した金額と符合する。よって、本記述は原告の内容証明郵便に対する回答と見ざるを得ないことは容易に立証できる。


③ 仮に当該内容証明郵便が「恐喝」の要素を持ったものであるならば、どの部分が「暴行または脅迫」にあたるのか。

 少なくとも原告は、被告に対し当該文書において何らの「害悪の告知」があった旨の記述も、そうと第三者をして解釈できる記述もなしていない。

 もし当該内容証明郵便が「恐喝」に当たるとするならば、原告が立会いを依頼し、それを受託した行政書士である訴外甲乙氏もまた、恐喝の共犯となるのであろう。


④ しかし被告は翌16日に早くも当該記事を削除している。

 もし本件が恐喝であるならば、削除をする必要などないはずであり(そもそもブログ上にわざわざ記事として書く必要もなかろうし、そんなゆとりもないはずだ)、直ちに刑事告訴等をすればよいだけのことである。

 加えて、「拒絶したら、誹謗中傷の手紙を関係団体に送付された。」とまで述べていることから、被告の本記事は、原告が静岡県歯科医師会に対し求釈明状を送付したことに対し腹を立てて本件記事の書込みに及んだことが強く推定されるものである。


14 甲第7号証-2 記事内容等について

① 被告は当該記事において、「(原告を)応援する気持ちをベースに」原告ブログへの書込みに及んでいたことをまず冒頭に示している。そのこと自体は、おおむね間違いではない。しかし、本件で問題となる記述については、かかる言い訳の成立する余地はどこにもない。

 そもそも、本当に他者を「応援する(あるいは同義語として「支援する」等の言葉も含む)」者は、その相手方に対しそのような恩着せがましげな言動などしないはずであるし、少なくとも原告周辺の関係者に、そのような言辞をなす者は一人もいない。


② それは、「友人」などという言葉についても同様である。

 次に、「友人を怒らせたことに残念に思い」「ビールなど送らせてもらいました」とあるが、これについて論評を加える。

 そもそも、原告は被告のことを「知人」とは格別、「友人」などと思ったことは一度もない。

 これは本記事その他で被告が利用している言葉である「旧友」同様、被告をして原告に対する自己の思いを一方的に述べただけの言葉、すなわち、自己の主観を相手方に押し付けるが如き言葉である。ましてかかるいさかいの場になった段階で、その相手方に対して述べるべき性質の言葉ではない。

 さらに「怒らせたことを残念に思い」とあるが、このことからも、被告が自己の発言等に対し何らの反省の色がないことが極めて明白である。


③「(原告が)なにやら怒っているようだから、機嫌でもとってやれ」という意思さえ原告の立場からは見受けられるし、現に被告の一連の記述内容を読んだ原告の周囲の第三者もおおむねそのような解釈をしている。

 「ビールなどを」のくだりであるが、当方はビール以外被告より送付を受けていない。被告としてみれば、「ビールでも送ってやったんだから許せ、機嫌直せ」ということのようであるが、他者をとことんまで怒らせておいて、いくら他の銘柄のビールより若干割高な定価が設定されているエビスビールがその対象のビールであったとしても、たかだか「ビールで許せ」というのは、虫のよすぎる要求であるばかりか、益々相手方の機嫌を損ねるに余りある行為でさえある。


④ そもそも後ろめたい気持ちなどなければ、わざわざそのような行為に出る必要などないではないか。もし原告被告間に常日頃かかる物品の贈与が事あるごとになされていたのであれば格別、この十数年来にわたっては、年賀状のほかは原告が自著を出版した際(2006年9月、「とむらいの汽車旅2万キロ」、吉備人出版)、被告に購入いただいただけである。


⑤ まして被告は削除済の被告ブログ運営記事その他において、「一杯おごります」などと、それも匿名状態で述べており、さらには原告にとって一連の記述が被告のものであることが判明した後の甲第4号証上段記事においてなお、「すきやきで一杯やりますか」などと述べているが、かかる一見「友好」を装いつつ、しかし見え透いた機嫌取りにさえならないふざけた言動こそが相手方たる原告を益々激怒させる一因であることに被告本人は気付かないようである。


⑥ さらに、「このままですと、残念ながら私もそれなりの対応を考えねばなりません。」という表現からは、法を学んだ者はもとより、いわゆる「裏社会」に属しない者の一般的通念としては、一見、それは被告が合法的な「対応」、すなわち民事訴訟の提起や被害届の提出、刑事告訴などといった対応を被告が原告に対しとることを開始する宣言と考えるのが常であろう。

 しかしそんなものは、少なくとも本件においては、被告及びその代理人がいかなる詭弁を弄したところで「素人考えのおめでたくも浅はかな解釈」の域を出ることはない。

 当該表現が原告被告間において紛争と言いうる事態の発生したこの期に及んでの記述であることを鑑みたとき、被告の当該発言は、被告が原告に対してとろうとする行為が「合法」であるとの担保にも、免罪符にもなりえない。

 世上に出回っている多くの内容証明郵便作成指南の書籍に掲載された内容証明郵便の文例集には、「万一誠意あるご返答いただけない場合には、しかるべき法的措置をとることを視野に入れております。」といった趣旨で、「法的措置」という趣旨の言葉が必ずと言っても過言ではないほど含まれている。これは、


 当方は貴殿に対し「合法的な行為に及ぶ余地はあります」

が、同時に、

 当方は貴殿に対し「違法行為をする意思はありません」

という趣旨を含んだものである。


 しかし、被告は、そのような記述をしていない。

 ということは、被告の意思は、「「合法」と「違法」であるとを問わず、原告に対し(何らかの)「それなりの」対応を考え、それにしたがってアクションを起こす」という趣旨であると原告は思料せざるを得ない。


⑦ 加えて被告は当該記事後段において、

「ここは落ち着いて、お互い忌憚のない所を話し合いましょうか?」

と述べているものの、その提示した手法は、「他者の見ていないところでの話し合い」をブログという他者がいかようにも閲覧しうる公開性の高いツールを用いて、しかし公でない状況を作り出し、そこで会話をしようということである。

 これまでの被告の言論内容及び手法に鑑みるに、実質非公開の場での話合いに原告が応じなければならない事情があるのか。


⑧ 先述の「それなりの対応」と、「忌憚ない所」という2つの表現とを含めて考えるに、ブログというツールを用いて他者の見ていない場でさらに被告は原告を怒らせ、原告はもとよりその関係者の名誉感情を傷つけ、もって精神的苦痛を与える発言をする余地がある=さらなる不法行為を被告が自己のブログを用いて原告に対しなす虞は充分にあるものと、原告は判断せざるを得ない。


14 甲第7号証-3 記事内容等について


① 本記事を被告は甲第7号証-2記事掲載後わずか12時間にして掲載している。


② ここで被告は「無関係な団体を貴兄が巻き込んでしまった」などと述べているが、原告は訴外会事務担当者に電話にて当該事件のあらましを述べ、かかる記述を被告がなしたことを同時に伝えたことに対し、

「それではその書込み内容等を印刷し、当会に送付してください」

という教示回答を受け、求釈明状(甲第6号証)を作成し、かつその証拠書類を添付の上、訴外会に送付したものである。

 そもそも歯科医師の自治団体である歯科医師会は、会員である歯科医師の業務内外における非行等に対し指導等をすることを業としている社団法人である。本件は原告をして歯科医師である被告の非行が明らかとなったため、それに対し厳しく善処することを求めたものである。


③ その所属団体をして被告本人が「無関係な団体」と述べるのは、自己の所属する歯科医師会の指導でさえも聞く耳を持たない意思を表示した悪質性の高い言辞であると原告は思料せざるを得ない。仮に被告やその代理人が「本件に関しては無関係なだけだ」と述べ、さらなる詭弁を並べ立てたところで、それをもって当該表現の正当性を獲得できるものでは到底ない。


④ 加えて被告は本記事において、原告との関係を「途絶」したいと述べているが、本来良識ある社会人であれば、そのようなことをことさら述べなくても、そうなるように適宜取り計らうものである。

 小学生やそこらの年少者、被告述べるところの「ガキ」の喧嘩での世界ならばいざ知らず、歯科医師というしかるべき社会的地位のある者がことさらかかる公開の場たるブログ記事において他者に対し宣言するような性質の言辞ではない。


⑤ さらに被告は、訴外会に対し、原告による「文書の取下げ」と「謝罪」を要求しているが、そもそも被告に何のやましいところがなければ、ことさらそのような要求を被告ブログ記事上において原告に対しする必要などないはずであり、淡々と訴外会に対し弁解をなせばよいだけのことである。


⑥ 被告は、自己にとって都合が悪いから、かかる要求を出して原告に対し精神的圧力をかけたものであると、原告本人はもとより、第三者をしてなお思料させるに充分な記述である。


⑦ なお、被告は原告に対し、

「(私たちの間のトラブルなら)ここ(=被告ブログ、原告注)で貴兄が大暴れしてもらっても私は一向に構わなかったのだけれど。」

と本記事前半述べているが、ここに、被告の本音が表れたといえる。それについては、本書面第一 三 において原告はさらに論述するものとする。


⑧ ひとつには、原告が「他者のブログを荒らすような奴」というイメージを他者をしてもたせしめるものである。が、それはもはや大した問題ではない。


⑨ それ以上に、「関係を途絶」したいと言いつつも、以前からの記述を精査してこれまでの原告との行きがかりまで含めて解釈するならば、原告に「ブログ上」で「原告に」「構ってもらいたい」という被告の本音が出たものであると、原告は考えざるを得ない。

 それは、「旧友」「友人」などの主観性の強い言葉を相手方である原告に対し再三用いていることにもっとも強く表れている(甲第4号証及び甲第7号証-2)。


⑩ 本件提訴以前、それも原告にとって被告が特定できない段階において、原告が被告に対しメッセージ欄を用いて関与禁止の通告を出し、さらに原告ブログ上において謝罪を要求した際、被告が別の自己ブログを立上げて「怒りに対する」謝罪を原告ブログに送付したメッセージ(平成21年9月29日付、甲第8号証)や、その後また別の自己ブログを立上げて同じく原告ブログの記事に呼応して被告が送付したメッセージにおいても、それは如実に表れている(甲第8号証-2)。


                               (つづく)

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