第3話 原告準備書面(1)-2

       二 主として記述内容面における被告の諸行為の問題点


1 甲第2号証-2 甲1ないし甲2に対して

① これらは原告が児童養護施設に在籍していた昭和50年代前後の児童福祉の現状を知らない者の発言である。無知自体は犯罪でも罪でもない故に何を言ってもよいというものではないが、これ自体をとやかく論ずるつもりはない。


② しかし、原告の言動を大阪教育大学附属池田小学校における児童殺傷事件の元死刑囚宅間守氏を引き合いに出して物事を論ずるのは、およそ他者のブログのコメント欄を利用して書き付ける行為としてあまりにも不適切であり、少なくとも原告に対する間接的侮辱であり、原告の名誉感情を著しく毀損する言動であると同時に、原告運営のブログの品位をはなはだしく傷つけるものでもある。


③ なお、中学受験というものは受験者本人が申し出て受験することは比較的少なく、一般にその保護者もしくはその関係者がその子女に対し積極的に勧めることが通例である。


④ 被告は「施設職員に申し出れば受験可能だったのでは」というのは、当時はもとより現在に至るまでの児童養護施設の実情はもとより、中学受験の実情を全く知らない者の言動である。ましてや中学受験に関する情報を活用し、国公立と私立とを問わず中学受験をすることを保護者である両親初めそれに相当する者に対して意思表示をするということを、施設出身者とそうでない者とを問わず昭和50年代の中学受験熱のほとんどない一地方都市の一小学生に求めること自体、いくら原告の所属したO市立X小学校の学区がいわゆる「文教地区」と当時より意識されていたとはいえ、当時の社会情勢に照らし合わせても無理のあり過ぎる被告独自の解釈に過ぎない。


2 甲第2号証-2 甲3に対して

① 下線部の発言はすべて、他者のブログのコメント欄においてなすべき発言ではない。この文面を見て、原告を応援する人物の発言ととることのできる第三者はまずいないはずである。

 公開性があり、現に第三者が多数訪問している原告ブログへの書込みである以上、被告の主観などは問題とならないし、論点として論ずるに値しない。

 被告もしくはその代理人(就任予定者を示す、以下同)いかに曲げて解釈しても、どんなに話の流れを云々しても、一連の被告の言論を他人=原告自身の「ためを思って」なす言動とみなすことはできない。

 他者である原告の人生を上から目線で見て論断し、非難を加えているものであり、原告に対する侮辱以外の何物でもない。

 同時にこれは、原告ブログを楽しみに読んで下さっている多数の読者諸兄姉に著しい不快感を与えるものでもある。

 繰り返すが、原告ブログは被告の指揮監督下において執筆させられるいわれなどないし、かかる法的根拠など何もない。

 もしかかる契約があったというのなら、被告自らその旨を立証せよ。


② ましてや、

「私なんか、他人のガキなんぞにまったく興味ありませんから、施設で他人のガキを世話しようという施設職員の方々は聖人に思えますわ。」

という記述にいたっては、酒の席などであれば格別、公開の場である原告ブログにおいて記述することは、原告の心情はどうであれ、原告ブログそのもの品位を著しく破壊する言動である。

 そればかりか、(児童養護)施設職員を一見持ち上げているようであるが、実はその児童養護施設職員である彼(彼女)らさえも間接的には揶揄しているものであることはもとより、原告はじめ児童養護施設出身者、現在籍者等に対しても間接的に愚弄しかつ誹謗中傷している表現である。

 ここで被告の言辞を公式化すれば、被告以外の他者の子女=「ガキ」、(すべての)施設児童=「ガキ」と評するものということとなる。

 これ自体既に社会的非難を浴びて然るべき表現である。

 まして被告は40歳代の歯科医師であり、かつ、歯科医院の経営者でもある。

 かかる社会的身分を秘匿した状態で他者のブログのコメント欄に一連の書込みをなしたことは、そこらの20歳代の無職青年が同一内容を書込むこと以上に道徳的・社会的批判を浴びせつけられて然るべきものである。


3 甲第2号証-2 甲4ないし甲5に対して

 社会評論としてみるなら、それも一面当たっていないわけではない。

 とはいえかかる被告の記述は、あまりにも児童養護施設はもとより福祉行政全般を愚弄した表現である。

 しかも、ブログ管理人に対して「こう考えたらどうですか」などという表現をするのは、他者のブログにおいて自己の意見を押し付けるに等しい物言いであり、とうてい適切であるとは言いがたい。

 ここにもまた、被告をして原告ブログを私物化し、実質的に指揮監督するが如き態度が見え隠れしている。被告及びその代理人がいかなる詭弁を弄そうと、かかる意思がその一文に如実活端的に表れている。

 児童養護施設は、いわゆる「不良少年」のための溜まり場とすることを目的として設立されたものではない。

 原告は一種の「ブログキャラ」として、「不良」と自己を述べているが、だからと言って直ちに原告を「不良」と他者が述べることへの免罪符となどなりえないことは言うまでもない。


4 甲第2号証-2 甲6に対して

 ① 「養護施設など所詮は制度であり職員は所詮は他人ですから。」

 ある意味、児童養護施設はもとよりそれに関わる福祉行政の本質を突いた発言ではある。

 しかし、これを他者の攻撃のための枕詞として利用することは適切な言論手法でない。

 言論の自由というものは、いかなる表現内容も手法も場所も許容されるわけでないことは、今ここで原告の指摘するまでもないことである。


② 「まぁ、寝食の場を与えてくれたのだから、それだけでもまぁ良かったんじゃないですか?」


 他者の人生をこれほどに侮辱する表現があるか!!

 これは、児童養護施設の存在する学区の子女やその保護者程度が児童養護施設に現に在籍している児童に対して述べたのならまだしも(それとて良識ある言動ではないが)、児童養護施設を取巻く状況がわからないから、知らなかったからという理由で免罪されるものでないことは言うまでもない。

 この表現をして、被告やその代理人がいくら真意は云々、被告の言が曲げて原告にとられた、被告は原告を応援する気持ちの一環で、話の流れ上やむなく書いたのだと弁解三百を並べ立て倒したところで、これを読んだ第三者がそのように解釈することはきわめて困難である。さらに、この発言をもって、「(原告に)真意を曲げてとられた」「真意が伝わらない」などと被告が泣き言三百を並べ倒したところで、かかる発言をされた者のなかに、この言辞の裏に逆の真意があるなどと解釈できるおめでたい神経の持ち主など、まずどこにもいないであろう。


③ 「児童養護施設の財政的充実を求める意見には納税者としては賛同できませんけど。」

 原告はかかる主張をした覚えはない。

 仮にしていたとしても、被告をして自身を「納税者」と一般化し、いかにも自らが一般的意見の持ち主であるかの立場よりそのようなことを述べられるいわれも筋合いもない。


5 甲第2号証-2 甲7に対して

 一言で言って、余計なお世話以外の何物でもない。被告にあっては、他者のことを云々する暇があれば自らそう心がけろと申し上げるのみである。


6 甲第2号証-2 甲8に対して

 被告は勝手な推測で他者の人生を論じているようである。

 「一般納税者」は云々と被告は述べるが、一般納税者とは誰のことか。あくまでも自己の主張こそが一般普遍的なものであるとの思い上がりもはなはだしい。

 なお、被告は本記事において、「厄介なコブ付」という記述をもって原告母を論断しているが、その「厄介なコブ」とは、原告を指すこと明白であると同時に、原告母をも著しく侮辱することはもとより、

 原告母は原告父と離婚当時、とある田舎の「離婚した「子持ち」」であった、

と、原告母の離婚当時の状況につき、明白に事実を摘示している。

 これは原告はもとより原告母に対するはなはだしさ極めたる名誉毀損表現である。これが原告母の居住する「田舎」住民らの与太話の一環であればいざ知らず(それとて許容されるものではないが)、歯科医師ともあろう者がブログという公開性の強い場において述べてもよい言動ではない。これが自己のブログであるならまだしも、他者のブログに匿名で入り込んでなされたものであるだけに、一層性質が悪いものであることはさらに論ずるまでもない。


7 甲第2号証-2 甲9に対して

 一切の論評に値しない記述である。

 被告が原告の人生についてのほんのわずかな情報を元に勝手な憶測を立て、それで原告の人生を云々しているだけである。他者のブログに書込むべき性質の内容ではないことは改めて指弾するまでもない。


8 甲第2号証-2 甲11に対して

  7と同じ。被告は小賢しい法律用語を用いて事を論じているようであるが、おおよそまっとうな論評に値しないものである。


9 甲第2号証-2 甲12に対して

① これは完全に聞き捨てまかりならない文句である。

 原告はもとより、原告の両親各自に対する侮辱であり、事実の摘示も見られる以上、原告、原告父(故人)及び原告母その他に対する名誉毀損表現に当たる。


  「完全に損をしているのは納税者のみなのですね。

「子捨て」をしたことで両親は養育義務を逃れて得をしている。

***様は精神的に辛かったかも知れませんが、寝食の場を得て生き延びることが出来た。

養護施設は、***様曰く「金づる」を得た。

被害者は納税者なのでした。

「どうせ犠牲は金だけ」と仰いますが、

***様およびご両親、その他の登場人物は

「金すら」支払っていないのでした。」


 当該表現をしておいて、ブログ運営者である原告を「応援している」「友人である」などと、被告にあってはよくぞぬけぬけと「ホザけた」ものである。


② 「子捨て」~この事実表現はいくら被告やその代理人が小賢しい言葉を巧みに用いて詭弁を弄したとしても、申し開きのできない侮辱である。

同時に、原告の父または母が息子である原告を「捨て」たこと=(原告の)養育を放棄した」と被告は述べているが、これは明らかに「事実の摘示」を行っているものと原告は解釈せざるを得ない。


③ 「養育義務を逃れて得をしている」という表現において「子捨て」という事実を被告は評価しているが、当該記述をもって、被告は原告、原告亡父及び原告母の名誉を公開の場で著しく毀損したと評価するに余りあるものである。


④ 「寝食の場を得て生き延びることが出来た。」という表現は、既に上記4 にて論述したものと同一趣旨の記述のため、ここでは論評しない。


⑤ 「(施設が)金づるを得た」という趣旨の表現を原告がしたことは事実である。とはいえ、それをもって自己の主張に転化した以上、「無関係の第三者」たる児童養護施設を被告自身も揶揄し、中傷したこととなる。元児童養護施設入所者として何がしかの思いをもって原告が述べた言葉を、児童養護施設の関係者でもなければ元入所児童でさえもない、さらにはその実情を何等と言ってもいいほど知らない被告がそのまま転用したわけであるが、この時点において図らずも被告は児童福祉全般に関する誹謗中傷をしたものと考えざるを得ない。


⑥ 納税者が被害者であるというのであれば、被告は原告の在籍した児童養護施設及びその監督官庁である厚生労働省及び岡山県に対し、納税者として不当利得返還請求訴訟を被告御自身が提起せよ。

 原告に対し同類の訴訟を原告母に対し起こせなどと原告ブログ上において述べる暇があれば、ご自身がかかる訴訟を提起されることをお勧めいたしておく。


10 甲第2号証-2 甲13に対して

  論評には及ばない。


11 甲第2号証-2 乙1に対して

  「***自らは納税の義務、勤労の義務を果たしているのですか?

消費税そして特に酒税には貢献しているかもしれないが、(笑)所得税は納めているのか?気になります。

(いったん納めたとしても、年末に還付されているのでは?)

国民年金はどうか?納付の減免を受けているようでは、まだまだです。」


 当該表現は、原告が「仕事もろくにしないでぶらぶらして酒ばかり飲んでいる。要するにろくでもない遊び人である」という趣旨であり、原告の名誉を著しく毀損しているものである。

 被告の述べることが仮に事実であるとしても、一私人である原告の所得状況などは公共の利害に関する事項にとうてい至らないため、名誉毀損の違法性を阻却することにはならないものである。こんなものは、三流会社の三流社員が互いの給与や賞与の比較をして不平不満を鳴らす光景下の発言でしかない。

 原告ブログ運営者である原告本人に対し匿名状態でコメント欄にかかる表現を被告がなしたことは、公然と事実を摘示して他者の名誉を毀損したものといわざるを得ない。

 仮に「真意は違う」だの「応援のつもりだ」などと被告やその代理人がさらなる詭弁を並べ立てたところで、かかる表現から、これを見た第三者である読者がそのように解釈できる余地などどこにも見いだせない。


11 甲第2号証-2 丙1に対して

 本件ブログ記事とは何ら関係のない記事である。

 当該コメント記事はかかる人物がいるということを原告に対し述べたかったのだろうが、無関係なコメントをこのような場所にすること自体、少なくとも不適切であり、ブログ利用者としてのマナーに反する行為である。

 かかる発言が被告により今後もなされることが容易に予見されたため、原告は、本件書込みの翌日をもって、匿名状態の「中松」こと被告の立場に配慮しつつ、原告ブログのコメント欄を閉鎖したことを、ここに付記しておく次第である。

                                (つづく)

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