妹と僕
りくのゆうき
第1話 妹の現実
「おにーちゃーん、朝だよぉ~!」
元気だけが取り柄みたいな妹がドタバタと部屋に駆け込んできて、ベッドに横たわる僕の耳元で声を張り上げる。
「起きろ~!」
「うわあっ!」
さすがに僕は耳を押さえながら、ベッドから飛び起きる……そんな、ジェットコースターのような朝を迎えたことは、一度だってない。
そもそも、そんな妹は存在しない。
妹自体は存在したが、そういうのじゃなかった。
まず妹は、朝、兄を起こしに来ない。 今日は学校をサボりたいなぁ……といつまでもベッドでもぞもぞしていると、決まって起こしに来るのは母親だった。
元気で、愛嬌のいい妹なんてものは幻想だ。
妹には愛想がない。 仏頂面で、僕とあまり目を合わせようとしない。
仲が悪いわけではない。家族そろって食事くらいはするし、漫画やゲームの話もする。でも一緒に買い物に行ったりはしない。妹の友達を僕に会わせるようなことはしないし、僕も友達に妹を紹介したりしない。
気恥ずかしさ、というか、テリトリーというか、そこはお互いに踏み込んではいけない暗黙の領域のようなものがある。それでも僕は思春期の盛りに、決死の覚悟で「誰か女の子紹介してくれね?」と言ったことがある。
「え~、ホンキ?」
と嫌な顔をしながらも、一応は知り合いの女子を紹介してくれた妹は決して悪いやつではない。かといって、それ以上でもそれ以下でもない。
妹とは、そういうものだ。 現実とは、残念なものである。
妹と僕 りくのゆうき @nyansuke_0513
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