第11話
第10の書板
『・・・それらの皮を身にまとい彼はその肉を食べる
・・・ギルガメッシュよ、それはかつて生じたことのないものだ
私の(風?)が水を駆りたてるかぎりはない
シャマシュは困惑し、彼の方に向きなおった
彼はギルガメッシュに向かって言った
「ギルガメッシュよ、お前はどこまでさまよい行くのか
お前の求める生命は見つけることができないだろう」
ギルガメッシュは力強きシャマシュに向かって言った
「野原をさまよってのちに
大地の真ん中にわが頭を横たえるべきか
全ての年々をずっと眠りつづけるがためにか
わが眼をして太陽を見させよ、私が光に満つるように
光あるところに暗闇は引き下がる
死を死せる者、太陽神シャマシュの輝きを仰ぎ見んことを」・・・以下欠』
永遠の生命を求めるギルガメッシュと
それはできない 求めるものではないという太陽神シャマシュの言葉のやりとり
ただ神のことばを真に受けないギルガメッシュ
ギルガメッシュ叙事詩に一貫して通されている気がする。向かい合うカタチ
まるでプラトンのような言葉のやりとり
アカデミア スコラ学を彷彿させる
学問 学校の意味があるschola学び問う中で自分なりの思考をつけていく
このギルガメッシュ叙事詩は世界最古の文明の叙事詩である
第10の書板のつづき
『私とともにあらゆる苦労をわけ持った者
私が心から愛したエンキドゥは
私とともにあらゆる苦労をわけもった彼は
いまは人間の宿命へと向かっていった
昼も夜も、彼にむかって私は涙した
彼を墓へ運びもたくなかった
もしやわが友が私の嘆きにより立ち上がりせぬかと
七日と七晩の間
彼の顔から虫が溢れ落ちるまで
彼が行ってしまってからも、生命は見つからぬ
狩人のように私は野原のさなかをさまよった
女主人よ、お前の顔を見たからには
私の恐れる死を見ないようにさせてくれ」
女主人はギルガメッシュにむかって言った
「ギルガメッシュよ、どこまでさまよい行くのです
あなたの求める生命は見つかることはないでしょう
神々が人間を創られたとき
人間には死を割り振られたのです
生命は自分たちの手のうちに留め置いて
ギルガメッシュよ、あなたはあなたの腹を満たしなさい
昼も夜もあなたは楽しむがよい
日ごとに饗宴を開きなさい
あなたの衣服をきれいにしなさい
あなたの頭を洗い、水を浴びなさい
あなたの手につかまる子供たちをかわいがり
あなたの胸に抱かれた妻を喜ばせなさい
それが人間のなすべきことだからです」
彼はそれらを打ち砕いた
彼は戻ってくると、あの男のところへ上って行った
ウルシャナビは眼を彼に向けた
ウルシャナビはギルガメッシュにむかって言った
「お前の名はなにか私に言ってくれ
私はウルシャナビ、遥かなるウトナピシュティムに仕える者」
ギルガメッシュはウルシャナビにむかって言った
「私の名はギルガメッシュ
ウルク、エアンナから来た者だ
山々を横切って来た者だ
太陽の上るところからの遠い旅だった
ウルシャナビよ、お前の顔を見たからには
遥かなるウトナピシュティムを私に教えてくれ」
ウルシャナビはギルガメッシュにむかって言った
・・・以下欠
ギルガメッシュはウトナピシュティムにむかって言った
「遥かなりというウトナピシュティムの許に来てお会いするまでに
私はすべての国々をさまよい歩いた
私は険しい山々を越えて来た
私はすべての海を横切った
私の顔面はうまき眠りに満ち足りていない
眠らぬために我が身は苦しめ、手足を嘆きで満たした
女主人の家に着かぬうちに、わが衣服はすり切れた
私が殺したものは熊、ハイエナ、ライオン、豹、虎、鹿、大山羊、野の獣と生き物たち
それらの肉を私は食べそれらの皮を私は我が身につけた
いったいわれらはつねに家を建てるか?
封印するか?
いったい兄弟たちはつねに分前を分け合うか?
いったい国の中につねに憎しみがはびこるか?
いったい川はつねに増水して洪水をもたらすか?
トンボはつねに抜け殻を残す
その面は太陽の面を見ることができる
古き日々このかた変わらぬものはない
眠れるものと死者はいかに似ていることか
彼らは死の絵図を表すのではなかろうか
野の人もエンリルが祝福すれば人並の人となる
大いなる神々アヌンキは集まり
運命をつくるマムメナウムは彼らの運命を割り当てる
彼らは死と生命を定める
死については、その日を知ることはできぬ」』
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