第8話

第8の書板


『夜明けの光とともに

ギルガメッシュは友に向かって言った


「エンキドゥよ、お前の母なるカモシカと

お前の父なるロバがお前を生み出した。


・・・がお前を育てた

そして・・・牧場

道路、そしてエンキドゥが進み行く 杉の森

夜も昼も皆がお前のために泣くだろう


周壁をもつウルクの長老たちはお前のために泣くだろう

皆が我らの死のために祈るだろう』

以下大幅に欠




ギルガメッシュの叫びから始まる第8の書板

神に対して言っているのか?

それとも今は亡き友であるエンキドゥに問いかけているのか?


エンキドゥへの哀悼 彼をに導いた神に疑問を抱いているのか?



第8の書板の続き

『聴きたまえ、年寄りたちよ、私に耳を傾けよ

私は我が友エンキドゥに向かってすすり泣く

なき女のように烈しく泣き叫ぶ


斧をかたわらに、弓を我が手に

短刀をわが腰帯に、楯をわがまえに

我が晴れの衣服、我が豊かなる


悪鬼が立ち上がり、私から奪い去ってしまった


我が友よ、お前は山のラバ、野の豹を猟した

われらはすべてを征服し、山々をわたり歩いた

都城を奪い、"天の牛"を殺した

"杉の森"に住むフンババを苦しめた

だがいまや、お前にのしかかるこの眠りはいったい何だ

お前は闇につつまれ、私の言うことが聴こえない」


そして彼はまなこを上げもせず

彼の心臓にさわったが、それは動いていなかった

そこで彼は友に花嫁であるかのように薄布をかけた

ライオンのように声を張り上げた

子供を奪われた雄ライオンであるかのように

彼は友のまえを行ったり来たりした

毛髪を引き抜き、撒き散らしながら

体につけたよき品々を引き裂き投げつけながら


夜明けの光とともにギルガメッシュは・・・

以下欠』


悩み苦しみ そして淋しさをどこにぶつけたらいいのかギルガメッシュは彷徨っている


本人さえわかっていないのだろう

死に対する漠然としない恐怖 ギルガメッシュは強さが故に忘れていた感情 想い 想像


力が互角だったエンキドゥの死がギルガメッシュ自身に置き換えられているのだろうか?





第8の書板の続き

『誉れの寝台に私はお前を横たえよう

お前を左なる席に、安楽の座に座らせよう

地上の公子たちよ、お前の両足に接吻させよ

ウルクの人びとがお前を嘆き悲しむようさせてやる


喜び満ちてる人びとをお前への想いで満たしてやる


そしてお前が行ってしまうと、体を長い髪で覆い

犬の皮を着て私は野原をさまようだろう


夜明けの光とともにギルガメッシュは

彼の腰帯をゆるめ・・・以下欠



夜明けの光とともにギルガメッシュは・・・を創った

彼はエラムマク樹の机を運び込み

紅玉石の入ったいれものに蜜を満たした

青玉石の入ったいれものにはバターを満たした


彼はこれを飾りつけて太陽にさらした・・・

以下欠』


これにて第8の書板は終わる。

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