第6話

第6の書板


見返りを求める イシュタールの女神とギルガメッシュとの会話


無償の愛を説明しているのか

古代の文明というと生贄を想像してしまう

中で 神に対峙するギルガメッシュの態度に違和感を感じる。

傲慢さと無償の愛 生贄 報い

それは書板を描いたあとで


第6の書板

『彼は身の汚れをすすぎ、武器を磨いた

毛髪の房を彼は背中へむけてふりかけた

彼は汚れたものを投げすて

マントで身を覆い、バンドをしめた


ギルガメッシュが冠りものを身につけると

ギルガメッシュの立派さに大女神イシュタルは目を上げた


「来てください、ギルガメッシュよ、私の夫になってください

あなたの果実を私に贈ってください

あなたが私の夫に、私があなたの妻になりますように

あなたのために青玉石と黄金の二輪車を装わせましょう

その車輪は黄金で、その笛は真鍮

杉の木の香りのする私たちの家へ入るのです

私たちの家へあなたが入るならば

敷居も足台もあなたの両足に口づけしよう


王たるものも 大公たちも 公子たちもあなたの足元に屈しよう

山や野原の産物を彼らは貢物として持参しよう


あなたの山羊は三つ子を、あなたの羊は双子を産もう

荷を負ったあなたのロバはラバにもなろう

二輪車の馬たちは燃えるごとくにに立派になろう

くびきをつけられたあなたの牛は類ないものとなろう」

・・・・』



親離れする子供 類まれな力をもち、知恵をもつギルガメッシュ。

全てを包むように全てを与える母のような大女神イシュタル


アヌとイシュタル

柱と壁

広場のあるウルク

周壁のあるウルク


第6の書板のつづき



『ギルガメッシュは語るために口を開き

大女神イシュタールにむかって言った

「あなたをもらうのに私は何を差上げたらいいのですか

体の油と衣服を差上げたらよいのですか

パンや料理を差し上げたらよいのですか


神にふさわしい食物を・・・

王にふさわしい飲物を・・・

・・・

マントを着・・・

あなたをもらうのに・・・

あなたは冷たくなったカマドでしかない

風と嵐をふせぐことのできぬ背後の扉だ


英雄を・・・傷つける宮殿だ

その覆いを・・・象だ

それを運ぶ人を汚す瀝青(アスファルト ピッチ)

それを濡らす皮袋

石の城壁を打ち壊す石灰石

敵の国を打ち砕く青玉石(サファイヤ)

持ち主の足を抱き抱える履物(拷問の道具)


お前が愛したどの愛人が長続きしているか?

お前のどの羊飼いが変わりなくお前を喜ばせたか?

来るがよい、お前の恋人たちをお前に名指してみせよう

お前の若い頃の恋人タンムズには

年ごとに泣くことを命じた

お前は斑のある羊飼鳥を愛したが

それを打ちたたき、その翼を引き裂いた

それは繁みの中に座り、「カッピ」と鳴く

お前は力あるライオンを愛したが

七つに七つの穴を彼のために掘ったのだ


それからお前は戦いに名を上げた牡馬を愛したが

鞭と拍車と殴打を命令した

7ベール馳け抜くことをお前は彼に命じた

泥水を飲むことを彼に命じもした

その母親シリリには、泣くことを彼に命じた

それからお前は牧人を愛し

彼は絶えずお前にパン菓子を積み上げた

そして日ごとにお前のために幼な子を殺し続けた


だがお前は彼を打ちたたき、狼にしてしまった

彼の羊の群れの牧童たちは彼を追い払った

そして彼の犬どもは彼のももに噛みついた

さてお前はお前の父親の庭番イシュラヌを愛し

彼はお前にナツメヤシの籠を絶えず運びこんだ

そして日ごとにお前の食卓を輝かしくした

「私のイシュラヌよ、お前の力を共に味わおう

お前の手をのばし、わらわの腰に触れよ」

イシュラヌはお前に言ったものだ


我が母が焼き上げぬものを食べはしない

悪臭と腐敗の食物を私が食べるだろうか

お前はこの彼の言葉を耳にすると

彼を打ちたたきモグラに変えてしまった

おまえは彼を・・・の中に置いた

彼は上がることも・・・下ることもできない

だからお前が私を愛するならば彼らのように私をあしらうだろう」


これを聴いたイシュタルは

怒れるイシュタルは天へ登った』


これでまかとイシュタルのしてきたことを問い質すギルガメッシュ

何をすればいいのかと 報いを求めていくのかと例えを繰り返すギルガメッシュ


何を表しているのだろうか ただわかることはギルガメッシュはそのようなことを求めていないということ


自分は王なのだとフンババを倒したのだと自信そのものになっているというこだ


そんな自信満々のギルガメッシュの前に大女神イシュタールは現れたということになる。


第6の書板のつづき

『それを聴いたイシュタル

怒れるイシュタルは天へと上がった


そしてイシュタルは彼女の父親アヌの前に行って泣いた

彼女の母アントゥムの前にも行って涙を流した

「我が父よ、ギルガメッシュは私を侮辱いたしました

ギルガメッシュは私の悪さをと愚かな行ないとを」

アヌは語るために口を開き

輝かしきイシュタルに向かって言った

「だかお前はまさに・・・招いたのではないか

だからこそギルガメッシュはお前の悪さを数え立てたのだ

お前の悪さと愚かな行いとを」


イシュタルは語るために口を開き彼女の父アヌに向かって言った

「我が父よ、"天の牛"をつくりたまえ、

・・・・


だがもし私に天の牛をつくらねば、

私は戸を打ち破り、杭を打ち壊す

私は門柱を打ち破り、戸を打ち砕く


私は死者たちを蘇らせ、生者のように食べさせてやろう

死者が生者より多くなることにしてやろう」


アヌは語るために口を開き

輝かしきイシュタルに向かって言った

「もしお前が私に頼むことを私がなすならば

7年間の不作がやってくるだろう

お前は人びとのために穀物を集めたか

獣たちのためにお前は草をしげらせたか」


イシュタルは語るために口を開き

彼女の父アヌに向かって言った

「人びとのために穀物を貯えました

獣たちのために草を用意しました

もし七年の不作がやってくるとしても

私は人びとのために穀物を集めました

獣たちのために草を繁らせました

・・・以下大きく欠損』


イシュタルは怒りでアヌに頼んだのだろうか?

天の牛をつくろうとさせたのか

己のために

そしてアヌは何をもって天の牛をつくるか否かを判断したのだろう

可愛い娘イシュタルのためか

エンキドゥをつくりしアヌ

フンババを倒したギルガメッシュ

その強さに憧れて 招きにいったイシュタル


ならとイシュタルは人びとを苦しめるというのはなぜか

天の牛の代わりに私自身が向かい合う相手になると言っているのだろうか?


そしてイシュタルの父であるアヌはイシュタルの言う通り

天の牛をつくる。



第6の書板のつづき

『第三の鼻息とともにそれはエンキドゥに飛びかかった

エンキドゥはその突撃を受け流した

エンキドゥは飛び上がり、"天の牛"の角をつかまえた

"天の牛"はその面に泡を吹いたので

尻尾で・・・を拭き取った


エンキドゥは語るために口を開き

ギルガメッシュに向かって言った

「我が友よ、われわれは勝利を収めた

頸クビと角のあいだに剣を突き刺した

牛を殺してからその心臓を引き裂き

シャマシュのまえにそれを置いた

彼らは引き下がり、シャマシュのまえで礼拝した

ふたりの兄弟は座り込んだ


そこでイシュタルは周壁をもたウルクの城壁に登り

砦の上に跳び上がって呪いを吐いた

「呪われよ、ギルガメッシュ、私を侮辱し、"天の牛"を殺した者」


エンキドゥはイシュタルの言葉を聴くと

"天の牛"のももを引き裂き、彼女の顔に投げつけた

「もしお前をつかまえすれば、あれにしたようにお前にもしたところだ

あれのはらわたをお前のはらにぶらさけたいところだ」


遊び女たちや宮仕えの女たちだ

"天の牛"のももの上で彼女たちは悲鳴にくれた


ギルガメッシュの方は職人や武器作りたちを集めた

あらゆるものたちを

職人たちはその厚みに感心した

どれも30ナムの青玉石からできていた

それらは二本指ほども覆われていた

その二本の中味である6グルの油を

彼はかい漕油としてからの神ルガルバンダに捧げた

彼らはそれらを運び、彼の立派な寝室につるした

彼らはエウランテス川で手を洗った

彼らは互いに手を取り合って歩み

ウルクの街路を更新した


ウルクの人々は彼らを見ようと集ってきた

ギルガメッシュはウルクの楽女たちに向かって次のように言った

「英雄たちの中で、いったい誰が一番すばらしいか

人びとの中で、誰が一番すばらしいか」

「ギルガメッシュが英雄たちの中で一番立派です

エンキドゥこそ人びとのなかで一番立派です」



ギルガメッシュは宮殿で祝典をあげた

英雄たちは夜の寝台に横になった

エンキドゥも横になり、夢を見た

エンキドゥは起き上がり、夢を語り出した

彼の友に言うには

「我が友よ、大神たちはなぜ会議をしているのか」・・・』


天の牛にも勝ってしまう

強き強きエンキドゥとギルガメッシュ



大女神イシュタルが父アヌに頼んでつくった天の牛が倒れ 泣き叫ぶ イシュタルと遊び女 宮廷の女子たち

次々と向かい合うものを倒していく

エンキドゥとギルガメッシュ

それを共に祝うウルクの人たち


ここで第6の書板は終わる








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