現在3(警察署内 情報システム室にて)
パソコンのファンが、埃を巻き散らしている情報システム室で、被疑者から押収した二つのパソコンで作業をしながら、
「濱野さん!これ、何時までやるんですか!」
「あ?そりゃ、なんか手掛かりになるモノを見つけるまでだよ!」
龍太郎は、隣の椅子を繰り寄せ、素足を乗せて、親指の爪を切っている。
「手掛かりも何も、被疑者の、高校生は二人とも、逮捕されているし、調べる事なんてないじゃないですか」
「佐分利~ぃ。お前も甘ちゃんだな~。探求心を忘れると刑事は勤まらんぞ」
「よし、ちょっとヒントをやろう」小指の爪をパチンと切って、佐分利の方を向く。
「被害者の教師二名が、同じ職場で働いていた事は話したよな」
「はい、二人とも、八年間、城北高校に勤務していますね」龍太郎は、作業をしながら聞けと、指示して話を続けた。
「八年間の内に、最後の二年間、同じクラスを受け持っている、担任、副担任としてな」
佐分利は、龍太郎に言われた作業をモニタ上で確認しながら
「まあ、そんなことも有るでしょうね。八年も一緒の学校に勤務していたら」
「その受け持ったクラスで、生徒が一人死んでいる。」
佐分利は、キーボードから手を離し、思わず龍太郎を見た。
「え!殺しですか。」
「いや、事故死だ。二階建ての体育倉庫から、転落死したらしい。転落防止の柵が腐っていて、そこから落下した。数人の生徒が見ていてる」
「目撃者がいるなら、間違いなく事故死じゃないですか」佐分利は、パソコンの前で大きく伸びをしながら、
「それで、その転落した生徒と、今回の高校生の被疑者二人の関係は、何か有るんですか?」
「いや、皆無だ。一点の関係性も見えない。」
佐分利は頭をクシャクシャと掻きながら
「マジで明日、私の指導係を変更してくださいと課長に、懇願してきます」
と訴えた。
しかし、こんな事を言いながら佐分利が、最後まで付き合う事を龍太郎は知っている。
今まで任された数人の新米の中では、飛びぬけてタフだった。
「明日は、時間見つけて、城北高校に行き、生徒が転落した場所を調べるからな」
佐分利は、半ば諦めながら大声をだした。
「もう、勘弁してくださいよ。僕の勤務報告書は、架空の事件で虚偽だらけですよ」
年代物のプリンターが、苦しそうな音をさせながら、複数枚の紙を出力していた。
相関図
濱野 龍太郎(千葉県警の刑事)
佐分利 孝(千葉県警の刑事)
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