第102話 ダリア編3
地図を見るとミャク島とやらはガンデリオン大陸からそれなりに離れている。
地図でおよその場所は掴めるけど、その土地のどこでもいいから写真が無いと私の能力を持ってしても跳ぶことはできない。
それに神族の大陸はこの世界に来て、まだ一度も行ったことが無い。
魔界は地図と写真が意外と簡単に入手できたから、この世界に来たばかりの頃に何も知らずに行ったことがあったのよね。
ピグミーっていう私の小指ほどの小人族と触れ合ったのは良い思い出だ。
めちゃくちゃ可愛いのだけれど、彼らは鳥や虫、ネズミなど天敵が多すぎて種族みんなで移動して暮らす、いわゆる移動民族なのよね。
私の能力なら、彼らをまとめて簡単に運ぶことができたから、比較的安全な場所を一緒に探してあげたりもしたっけ?
最後は彼らが気に入ったと言う綺麗な砂浜で、一緒に小さな村を作って今は住んでいると思うのだけれど……ふふ、思い出したらもう一度会いたくなっちゃった。
今度、ユーナを連れて一緒に行くと良い気分転換になるかもしれないし。
その後に綺麗な都を見つけて入ったんだけど、そこでは酷い目に遭ったのよね。
正直、これは思い出したくもない話だわ。
ルーシィが続きを話し始める。
「このミャク島の太古の森は別名を神秘の森って言ってね。何でも不思議な力を持った鹿がいるみたいなわけ」
「鹿って、あの角の生えている動物の?」
「そうなわけ、シ〇神様ってミャク島の住人は呼んでいるみたいなわけで」
まさかのジ〇リ!?
首を取って持って帰って来いとか言わないわよね?
「鹿の姿で神様って言っても、モンスターでもガンデリオン大陸の神族とは違うわけ。まったく別の……何と言えばいいのかな? まぁ……とりあえず、そういう存在がいるわけ」
ごまかした?
そういう存在って言われても存在が不確かなものがいるって言われてもね。
「その神様を探してどうするの?」
「願いを言えば良いみたいなわけ。どんな願いも1つだけ叶えてくれるって観光パンフレットに書いてあったわけで……」
ちょっと待って……ええっ、観光パンフレット!?
ミャク島って観光地なの!?
え……、まるで信用に値しないんですけど。
難しい試練を受けるのとかそういう類かと思っていたけど、そんなんじゃなくて嘘か真かわからないことだったのね?
「お母さん、そんな都合の良い話聞いたこと無いですよ?」
うんうん、これは観光客を呼び込むための宣伝であって信じ切るものではない。
「そこなのよね。ここ、数千年は耳にしなくなったわけ。生き物ならもしかして亡くなったからなのか、それとも数千年前の一種の流行話って線もあるわけで。だから、信じるか信じないかはだりっち次第ってとこ」
そんな大昔の話をされても……どうしたものかしら?
パンフレットなら写真が載って……いないわよね?
数千年前なら風景画が限界か……写真じゃ跳べないのよね。
「他には無いんですか? なんか、観光地の話とかじゃなくて……」
「何も思い当たらないわけね」
他に方法が無いなら、こんな話でも信じるべき?
でも、ツチノコや河童が存在するかどうかっていうレベルの話と同じで、単なる都市伝説だって可能性も高い。
もし、シ○神様(仮)が存在しなかったらユーナに希望を持たせるだけ持たして、さらに悲しませることになっちゃう。
こんなのユーナには言えないわ。
もっと信憑性のあるものを探して……でも、世界の理に逆らうようなことが見つかるはずもないか。
「ダリアさん、どうしますか? 行くのなら私も付き合います」
「う……うん、ありがとう。でも、少し考えさせて……ユーナを置いてなんて行けないし」
「そうね、ユーナちゃんに希望を持たせるのは今は酷なわけ」
ルーシィの部屋から離れ、ユーナの部屋へ向かう。
ユーナはまだ眠っているようだ。
「……リュー……ジ……どこ」
瞳から涙がこぼれ落ちている。
まったく……夢の中でも死んでんじゃないでしょうね?
私のユーナをどれだけ悲しませるわけ!
もし生き返ったら、思いっきりひっぱたいてやろうかしら。
ユーナの顔を見つめながら、私も横になる。
ユーナを私の胸に抱き寄せ、少しでも不安を取り除いてあげよう。
また、私の世界でライブやろうね。
そのときはみんな一緒に……。
ダメだ……私も悲しくなってきて涙が目からこぼれ落ちる。
欽治君……雪ちゃん……私の世界へ戻ったときにご両親に伝えなくちゃいけないわよね……。
「ん……ダーリン」
はわわわ……私が夢の中で出てきたのかしら?
嬉しい、さっきの悲しい表情が嘘みたいに安らかな顔つきに変わっている。
抱きしめてあげているのが効果あるのかな?
……………。
「……リン! ……ダーリン、起きて」
「んん……」
ユーナが私を揺さぶって声をかけている。
あれ、私もいつの間にか寝ちゃった?
それより、ユーナが凄く真剣な表情をしている。
「ふぁぁぁ……ユーナ、どうしたの?」
「ダーリン……私、夢を見たの!」
夢……?
夢くらい見るでしょ。
……ってあら、ユーナの表情が真剣なままだ。
きちんと話を聞いてあげないとね。
「ユーナ……どんな夢を見たの?」
「普通の夢なんかじゃないのよ! これって絶対に予知夢よ! 絶対、そう! 絶対の絶対の絶対にそうなんだから!」
酷く興奮しているようだけど……予知夢か。
そういえば、ユーナって予知能力が強くは無いけどあるんだっけ?
私の世界に来たときに、そのような話をユーナ自身から聞いたことがあった。
未来は分岐が激しくて、予知なんて確率論としては、一等の宝くじを狙って当てるより難しいって、私の能力担当の先生に聞いたことがある。
私にとってはとても信じ難い話だ。
もちろん、ユーナのことは信用しているわよ。
でも、それとこれとは別の話になってくる。
「ダーリン、ニーニャんも連れて早く行くわよ!」
ユーナが顔を近付けて、突飛なことを言い出した。
もちろん、私はこう答えるしかない。
「行くって……どこに行くつもり?」
「決まってるじゃない! ガンデリオン大陸よ! そのさらに東の島国を目指すの! これでリュージや欽治や雪は生き返るの! うまくいけば愛輝もね!」
「……えっ?」
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