第46話 リュージ編46
改めてスマホで人族のことを調べてみた。
人族というのは人間と獣人と亜人って聞いていたし、人間もさらに3種に分類できるのはすでに知っていた。
その一つがヒューマン、俺やユーナなどいわゆる普通の人だな。
全体に平均的で生まれたばかりの赤ん坊のステータスはすべて1から始まる。
ただし、ステ振りポイントも何ポイントか持って生まれてくるようだ。
次にエルフ。
ヒューマンより長身の長命で生誕時の初期ステータスでも知力が高い以外はヒューマンと特に変わりはないらしい。
初期に存在するポイントはなし。
最後にドワーフ。
まだ会ったことはないが、ヒューマンより背丈は低く生誕時から筋力が高い以外はヒューマンと変わりがないらしい。
エルフと同様に初期のポイントは0で生まれてくるらしい。
「ギルドが見えて来たわね。ニーニャん、いるかしら?」
俺のことをまだ知らない状態のニーニャさんか。
以前は、今日より5日くらい後に初対面だったんだよな。
「ニーニャん、いる――?」
「あら、ユーナちゃんじゃない。なんか見た目が少し大人びたように見えるけど、どうしたの?」
「ふふん、話せば長くなるから今度教えてあげるわ」
「その人は、まさかユーナちゃんの彼氏? 何々――、いつ出会ったのよ!?」
「ち、違うわよ! 聞いて驚きなさい! リュージは異世界の住人なの」
「ふ――ん、ちょっとあの人に似ているからニーニャがゲトっちゃいそうなタイプね。取られないようにしなさいよ、ユーナちゃん」
「ルーシィさん! ニーニャんにはあげないって言っておいてよね!」
な……ん……だと!?
ぜひ、ぜひ、ゲトってください!
誰に似ているのか知らないが、ニーニャさんのお母さんが言うからには本当に違いない!
くぅぅ、こんな情報が得られるとは過去に来るのも悪くないかも。
しかし、改めてルーシィさんを見ると確かにニーニャさんとなんとなく似ている。
猫族が混ざった分、可愛さがましたのがニーニャさんってところか。
けどなぁ……ルーシィさん、若すぎだろ。
これでニーニャさんより年上って純血エルフの生命力って恐ろしいな。
今までギルドで見たことはなかったんだが、今日に限ってどうしているんだ?
「さて、あっしもメンディーだけど仕事に行って来るわ。またね――ユーナちゃん。あんたもユーナちゃんを泣かせちゃ、あっし激おこぷんぷん丸だかんね。あ、でもニーニャには手を出していいわよ」
お母様からの許可、デタ――!
ありがとうございます!
ぜひ、ぜひ、手を出させていただきたいと思います!
「ちょっと、リュージ! 絶対に駄目だからね!」
「ブラっち、ニーニャんは?」
「現在、仕事中。君、仕事、検索?」
この人はニーニャさんと同じギルドの受付嬢をしているブランさんだ。
彼女は蜥蜴型獣人でゲームの世界でいうとリザードマンってやつだ。
普通はモンスターのイメージが強いけど、この世界じゃ人間と共存できている。
うん、良きかな良きかな。
「二階で仕事をしているのね。会いに行っていい?」
「否、関係者以外、立入禁止。我、行」
「じゃぁ、お願い」
よくあれで意思疎通できてるよな。
ギルドの2階って確か事務所だったよな。
「さっきのルーシィさんは何をしに来ていたんだ?」
「たまに来るのよ。愛娘を冷やかしに」
おいおい、そんなことで娘の職場まで来るのか?
この町の最長老でもTPOくらいわきまえろよ。
ま、今日はそのおかげでいいこと聞けたし別に構わないが。
「あら、ユーナさん。私に用事って何ですか?」
き、キタ――!
俺のアイドル……いや、俺の嫁!
「えっとね、クラン作るから仲間になりなさい!」
いきなりだな、おい。
もっと、詳しく話してあげろよ。
「えっと、話が見えてこないのですが……」
「うまく説明できないのよね。とりあえず、仲間になりなさい!」
どう話すかくらいしっかりと考えておきなさい!
まったく、この子は!
「ユーナ、俺が代わりに話そう」
「あら、貴方は?」
「ニーニャん、まだ紹介していなかったわね」
「ええ、えっと」
「ふふん、聞いて驚きなさい! 彼の名はカンナギリュージ、私の夫よ!」
はぁぁぁ!?
何を言ってんだ!
誰がお前の夫になった!
「てめえ、何を堂々と嘘をついてやがる! この口か!」
「痛い、痛い!」
「え、でもユーナさんはまだ未成年のはず。あら……15? え、レベル100越え!?」
アナライズで見たようだ。
ニーニャさんなら無断でアナライズを使ってもらっても文句は言わない。
なんで?
俺の嫁がすることは正義だからに決まっているでしょう。
「どうよ、凄いでしょ! 夫じゃなくても、リュージは私の大事な眷属だからね!」
「はぁ、まぁ……わかりました。でも、15ってどういうことですか?」
終わった……。
俺の嫁計画が遠くに去っていく。
わかりましたじゃないんです!
わかりませんって思ってください!
ちくしょう!
絶対にルーシィさんがユーナを煽ったからだ。
「俺から説明します。えっと、ニーニャさん初めまして」
「ええ、はじめまして。私はこのギルドの受付嬢をしておりますニーニャ・ルグレイドと申します」
「変なことを言うかもしれませんが、じつは俺にとっては初めましてじゃないんです」
「どういうことですか?」
「ユーナの年齢が1つ上がっていることとレベルが昨日と違うことも関係しているのですが、詳しくお話ししますね」
「はい」
「俺とユーナは今から90日後の世界から来ました。すでに俺がニーニャさんを知っているのはそのためです」
「え……3か月後? ユーナさん、この人……大丈夫ですか?」
「異常よ! だから、私のリュージには……」
はぁぁぁ!
また、何を言ってやがる!
お前の方が数十億倍異常だよ!
「話がおかしくなってくるだろ。はぁ、もういい。この手紙は3か月後の貴女から頂いたものです」
そう、過去へ来る前にじつはこっそりと俺に封書を渡してくれていたのだ。
今のニーニャさんに会うまで決して開けないでと言われていたが、開けてしまったのは決して俺へのラブレターだと勘違いわけじゃない。
ま……俺への愛の言葉は一切書かれていなかったが。
「読ませていただきますね。……確かにこれは私の字ですね。……えっ、復興。……Z指定モンスターまで」
この手紙には3週間後に自称勇者を名乗るならず者が押し寄せて来ること、首都で俺に助けられたこと、温泉街でZ指定モンスターを欽治が倒したことなどが書かれていた。
「あら、他に魔法文字で書かれていますね」
な……ん……だとっ!?
魔法文字?
そんなの見えなかったぞ?
「これは読ませたい相手にしか見えないようになっています。3か月後の私が書いたことは本当のようですね。えっと……えっ? でも、チキン型……えっ、えええ!」
チキン型、俺のことか?
ニーニャさんが顔を真っ赤にして読んでいる。
いったい、何を書いたんだ!?
気になるじゃないか!
「こ……コホン。お話は未来の私からわかりました。まだ少し信じがたいですが、ユーナさんのお話、お受けします」
「やったわ! さすが、私の第一眷属ね!」
「いや、未来のニーニャさんのお陰だよ」
「そうね、さすがニーニャん!」
今のニーニャさんに同意を求めても意味無いだろ。
しかし、これでクラン結成は確定ってことで良いのか。
次はならず者の襲来に備えなるのか、はぁ……。
「ニーニャさん、改めてよろしくお願いします」
「はい。まだ、実感が余り無いですけど」
「また、後で迎えに来るわね」
「次は全世界に対してクラン結成の話をするのか?」
「何、言ってるの? まずは目先の問題よ。過去に来た時点でせっかくの魔界を奇襲したことも無くなっちゃのだし」
過去に来た時点でこいつの暴走も無かったことになっているんだな。
そりゃ、助かる。
いくら何でも無茶苦茶だったし。
ということは、目下はやはり自称勇者か。
「暴徒共の粛清が終わったら、また魔界に攻撃を仕掛けましょ!」
愚の骨頂――!!!
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