第36話 リュージ編36
レストランに来た。
ナイゼリア……思いっきりファミレスじゃないか。
さっきのハンバーガーショップといい、もしかして俺たちの世界の人間が何か関わっているのか?
ま、安く済むなら助かるが。
「ささ、入るでござる」
「いらっしゃいませ、二名様でございますか?」
「そうでござる。禁煙席を頼むでござる」
禁煙席とかもあるのか。
ま、副流煙を嫌悪する俺にとっては助かるから良いんだが。
「では、こちらにどうぞ」
「愛輝さんの時代でもこの店に似た所はあるんですか?」
「あるでござるよ。毎日、来ていたでござる。安いからお腹いっぱい食べれるでござるな。ささっ、今日は吾輩が奢るでござる」
「えっ、お言葉に甘えてゴチになります。……愛輝さんってどうやって収入を得ているのですか?」
アイドルヲタクで大食漢、お金がかかるのにこうも余裕なのはきっと良い収入方法があるからだろう。
ぜひ、聞いておきたい。
「この世界は本当に住みやすいでござるな。お金に困らないのは最高でござるよ」
だから、その方法を聞かせてほしいのだが。
「どんな仕事をしているのですか?」
「ダリア嬢の素晴らしさを布教するために各地を回っているくらいでござるよ。ダリア嬢の位置をトレースで把握しつつでござるが」
つまりはアイドルの追っかけをしているということだろう。
そんなのするだけで収入が発生するのか?
んな、馬鹿なことがあるか。
「ギルドからの依頼でモンスター退治とかしていないのですか?」
「おお、そうでござった。ギルド依頼で飛脚はしているでござるよ」
お使いクエストか。
いや、動きが神ってる愛輝だ。
お使いクエストは天職レベルだろう。
遠距離のお使いクエストは確かに報酬がいいんだよな。
テレポートも誰もが使える魔法でもないし。
「一度だけ依頼でモンスター退治もお願いされたでござるよ。思ったより大変だったから、それ以降はお断りしているでござる」
あのヲタ芸をすれば、雑魚モンスターぐらいはいけると思うが。
いや、そもそもそういう使い方は間違っているか。
「注文をお願いするでござる――」
「はい、今、参ります」
「吾輩はパリピスタとパリピザを10皿ずつでござる。リュージ殿は何にするでござるか? 何でも注文して良いでござるよ」
「じゃあ、俺はミートソースパスタとシーザーサラダで」
「かしこまりました。食後のデザートはいかがなさいます?」
「吾輩はまた後で注文するでござる」
「じゃぁ、俺も後で」
「かしこまりました」
……パリピザって何だよ!
パリピバーガーに続き、パリピのパスタとピザ?
意味わかんねぇぞ。
「では、スマホの講習会を開くでござる」
「あ、よろしくお願いします」
「と言っても、スマホを知っているなら簡単でござるよ」
「ふむふむ、なんか神父さんが充電というか魔力を貯めることを仰っていましたが」
「そうでござる。そこが唯一、癖のある所でござる」
「難しいのですか?」
「リュージ殿は攻撃魔法で一番低級なのは何を習得しているでござるか?」
「低級か……ファイアですね」
ユーナを救出する途中で飛竜探しをしたとき、洞窟内で休むときに覚えたものだ。
火を起こすのに渋々覚えざるを得なかった。
あのとき以降、まったく活躍してないし。
「では、スマホを手のひらに乗せてファイアを使ってみるでござる」
「今、ここでですか? 危険じゃありませんか?」
「やってみれば、わかるでござるよ」
「それでは」
スマホを乗せた右手に力を込める。
魔法を放つとき一瞬、目眩のような感じがするのは魔法を使うのに慣れていないからだって、ニーニャさんが言ってたな。
あれ以来、簡単な訓練の仕方なども教えてくれたっけ。
毎日欠かさずに10分ほど訓練をしているが、どうやら俺はまだ慣れていないようだ。
まあ、暴発しないだけマシと思わないとな。
「あれ? 火が出ない」
「それで充電完了でござるよ」
「え? これだけ?」
「どうやら、リュージ殿は魔法が得意みたいでござるな。羨ましいでござる」
いや、簡単すぎるだろ。
「吾輩はエアーを充電のために覚えたでござるが、魔法を放つたびに竜巻が起こり何度もスマホが粉々になったでござる。今のスマホは25台目なんでござるよ」
ちょっと待て!
風属性の最弱魔法で竜巻?
最弱魔法って生活に役立てるくらいしか能力のない魔法ってニーニャさんに聞いたぞ。
ファイアは調理や灯り、アイスは冷蔵庫やエアコン、アースはDIYくらいで役立つ程度の威力しか無い。
エアーも扇風機くらいの風力って聞いたぞ。
どれもバトルには役立たないから覚えるつもりは無かったんだが、あのときはやむを得ずファイアを覚えたのが理由だし。
まさか、精神力が高いと魔法の威力がアップするのか?
「24台も壊したから神父さんに顔を覚えられたんですね」
「あっはっは。お恥ずかしい限りでござる」
いや、バトルじゃ自慢できそうだし何ともいえねぇ。
「充電も完了したことだし、電源を入れてみるでござる」
「おっ、付いた。見た感じはスマホそのままですね」
「インターネットらしきものもすぐに使えるでござるよ」
「では、早速」
地図アプリを開くと現在地が中心になり細かい地図が画面上に表示された。
もしかしてGPSも搭載しているのか?
魔法のある世界だし、こういうことにツッコむのはよそう。
ドリアドの町を検索してみると、自動ルート案内が出た。
ルート案内までできるのは凄いな。
このスマホってこの町の中じゃなくても使えるのか?
だったら、どうして首都やドリアドの住民は持っていなかったんだろう?
「ふっふっふ。リュージ殿も夢中でござるな」
「本当にスマホとなんら変わりありませんね」
「そうでござろう。ダリア嬢の配信も24時間、いつでも見れるでござるよ」
そっちは興味ないんで、結構です。
地図を見たところドリアドの町は思ったより近い。
これだけ技術が違うから、もっと遠方だと思っていたが。
この距離なら馬車を使えば一時間ほどで帰れそうだ。
ただ、夜間だし道中にモンスターと遭遇しないともいえないのがなぁ。
武器なんて当然、持ってきてないし。
「お待たせしました」
「うほ――! 夕食でござる」
愛輝は相変わらず凄いスピードで皿を平らげていく。
ま、そんなことはどうでもいいか。
護衛を雇うとしても、お金がかかりすぎる。
どうしたものか。
「ふぉーふふぇふぁ、ふぉんやふぉうふるでふぉふぁるふぁ」
食べながら喋るな。
何を言っているのかまったくわからん。
「えっと、よく聞き取れなかったのですが」
「すまないでござる。リュージ殿は今夜どうするでござるか?」
「ドリアドの町に帰ろうかと思っていますね」
「そうでござるか。ダリア嬢がまた教会に戻って来たみたいでござるよ」
え……早いな?
ああ、時間移動もできるんだったか。
俺が放置されていることも覚えていてくれたとか?
意外に優しい人なのかも知れない。
「おっ、また移動したでござる」
結局、放置か!
ぬか喜びさせやがって!
「どこに行ったかわかりますか?」
「ふふふ、安心するでござる。吾輩のトレースはダリア嬢特化にしているでござるよ」
それってある意味、ストーカーだよな。
愛輝がスマホでダリアがいる地点を示す。
「ここでござるな。夕食後、追いかけるでござる」
「ん? ドリアドの町……え?」
俺を放置して帰っているじゃねぇか!
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