第37話 リュージ編37

 ドリアドの町の位置もわかったし、夕食が終わったらすぐにでも帰ってあいつらを指導してやる!

 いや、ユーナはさらにすぅんごぉいお仕置きもしてやろう。

 欽治?

 下手したら殺されそうだし、可愛いから許す。

 

「これで行き先は決まったでござるな。ドリアドの町とやらに行くでござる」

 

 付いて来るのか。

 ま、あの強さだ。

 もしも、バトルになったら役立ってもらえるかもしれないし、ある意味助かる。


「ええ、道中もお願いします」

「ふふふ、リュージ殿は生真面目でござるな。吾輩たちは既に朋友だと言ったであろう。敬語は他人行儀なのでやめるでござるよ」

「……わかった」

「よいちょまるでござる!」


 よいちょ……なんだって?

 

「さて、パリピパフェを100皿食べてから行くでござる。店員さん、注文でござる!」


 まだ、食べる気か!

 しかもまたパリピ……。

 見た目はただのインスタ映えの良いパスタやピザだったんだが……。

 まあ、いいや。

 これは気にしたら駄目なやつだろうな。


「愛輝、ドリアドの町にはどうやって行くなんだ?」

「まだ、馬車が出ているなら乗るでござるよ。なければ徒歩でござるな」


 夜の街道はモンスターが出やすいってニーニャさんが言ってたんだよな。

 ま、それでも勇者歴の今はそれほど遭遇率は高くないみたいだが。

 魔王歴になったらどうなるんだ?

 夜間の街道は10歩進むごとにエンカウントするとかなら最悪だぞ。

 

「お待たせしました。パリピパフェでございます」

「うひょ――! 待ってたでござる!」


 これ、またインスタ映えしそうなパフェだな。

 この町の名物なのか?

 確かにパリピが明らかに多い町だが、まさか町長もパリピとかだったら陰キャサイドの俺にとっては悪夢だな。


「ウェーイ!」

「ウェーイ!」

「やっべ! オレンガジュースにムーロン茶混ぜたら激うまだわ!」

「それ、マジ卍!」

「他にももっと試そうぜ! ウィ?」


 ほら出た!

 くだらないことをやってんじゃねぇ!

 それにウィってなんなの!?


「ふふふ、楽しそうでござるな」

「くだらないことでも楽しめてしまう、陽キャの悲しき性だよな」

「ほほう、リュージ殿はああいった輩は苦手でござるか?」

「苦手というか何というか」

「吾輩の友人には多いでござるよ」


 なん……だとっ!?

 愛輝はこっち側の住人だと思っていたんだが。

 パリピ共と何をしてるっていうんだ?

 いや、パリピ共のことだ。

 愛輝を都合の良い使い走りとして利用していることに本人は気付いていないとか?

 

「いつも買い物を依頼されて頼りにされているでござるよ」


 やっぱり!?

 ま、愛輝がどう利用されようが俺には知ったことではないが。

 だって、痩せたときは男の敵だしぃ。


「それでさ、リョウ君にリアコすぎて超ヤバいの」

「わかる――」

「ふむ、リョウより私にリアコしてはどうだ?」

「あはは! それ、ウケる!」


 ん?

 聞き慣れた声が奥の席から聞こえる。


「でも、あっしは――ユウ君かな――」

「ユウ君も神ってるよね――!」

「じゃあ、私はベッケンバウアーでどうだ?」

「え――! うちは有り有りの無しかな――?」


 有り有りの無しってなんだよっ!

 有りなの?

 無しなの?

 はっきりなさいっ!

 いや、そんなことより一人はやっぱり知っている声だ。

 だが、思い出すと駄目だと俺の第六感が教えてくれている。

 振り向いては駄目だ。


「あそこの女子たちも楽しそうでござるな。女子会でござろうか?」


 見てみろよみたいに指をさすな!

 気になるだろ!

 いや、気にしては駄目なやつなんだ!


「そういえば今日、教会でまたやってたよ」

「うわ――マジで?」

「あいつイキってるよね――!」

「うちはあの曲、エモいと思うけど?」

「いや、それ無し無しの無しでしょ!」

「わ、私をかまちょ!」


 一人、無理にでも話に入っていこうとするのが見なくてもわかるな。

 しかし、ここでもダリアの話か。

 女子ウケは微妙なのかな?

 さっきからリョウ君だのユウ君だの、明らかに男性アイドルっぽい奴らの話題も出ているが、この世界でアイドルってもしかしてそれなりに居たりするのか?

 

「ふむ、ZMEPも徐々に台頭してきているでござるな。そろそろダリア嬢のために潰さなければいけないでござる」


 潰すって怖いな。

 男性アイドルと女性アイドルだろ?

 特に問題は無いように思えるが。


「リュージ殿もそう思わぬでござるか?」

「え? ええ」

「そうと決まればドリアドの町に着いてから計画を立てるでござる」

「いや、潰すってなんでなんだ?」

「何を言っているでござるか? 相手は7人の男性グループでござるよ。対してダリア嬢は唯一神でござる。いつか、7人の顔だけ良い猿共に寝取られる日が来るでござるよ!」


 それか――!

 別に芸能人同士だし良いんじゃないか?

 俺たちの世界じゃ普通のことだろ。

 

「リュージ殿の時代では許されているかも知れないでござるが、吾輩のアイドル暗黒時代では禁忌でござる! 下半身のみで動く猿共のグループは即刻、潰さなければ唯一神がすぅんごぉぅい目に遭うの目に見えているでござる!」

「そ、そうなんだ。へ……へぇ」


 マジ引くわ――!

 それって単に男性アイドルに嫉妬しているだけでは?

 しかし顔も知らないし、敵でも無い奴らを潰すなんてなぁ。

 顔くらいはスマホで調べられるか?

 えっと、ZMEP……?

 これもどこかで見たような、いや考えるのは止めよう。

 ふむ、7人の男性のみで組まれた歌手ねぇ。

 男性アイドルって言葉はないのか。

 どのメンバーも似たような典型的中性顔のイケメンばかりだな。

 愛輝の痩せた姿の方がよほど格好良いと思うのだが。

 性格が残念か。

 あれ?

 写真の一人を俺は知っている。

 実際に見たことのある顔だ。

 こいつは俺の同級生のユウ?

 個別ごとのプロフィールを見てみる。

 後醍醐優、17歳……。

 何ということだ。

 こいつも転移してきたのか?

 いつだ?

 転移前は近所だぞ。

 顔も毎日飽きるほど合わせていたし。

 

「絶対、ユウ君だって!」

愛上男あいうえおっぽそうだよね」

「わ、私だってじょうずに愛してやるぞ!」


 あの声はもう、あいつしかいないじゃないか!

 いや、今は変態は後回しだ。

 後醍醐、この苗字だけで俺の知っているユウということはわかる。

 年齢も一致しているし。

 だが、このメンバーをプロデュースした奴は馬鹿なのか?

 後醍醐優、見た目はイケメンで性格も超絶格好良いが女だぞ。

 今でいうイケメン女子ってものだ。

 他の6人は真正の男だろうな?

 7人のうち1人が女性だと知ったら、俺だって同級生として心配になる。

 いや、あいつに限ってすぅんごぉいことされそうになっても反撃は十分できるかと思うが。

 ……愛輝の言う通り潰すか?

 いや、下手に行動を起こすのは御免だ。

 活動拠点は町名ジャニグリオ?

 また知らない名前だな。

 ユーナやダリアなら知っていそうだ。

 帰った時に聞いてみるか。


「じゃ、私はフロリダでイチキタするね」

「乙――!」

「わ、私が一緒に入ってあげようか」

「あはは、マジメンディー」


 ……思い出す気はなかったがこりゃ、あいつだ。

 入院中じゃなかったのかよ。

 まさか、病院を抜け出してきたのか?

 連れのギャルはあの病院で働いている人たちか?

 遊んでないで、無断外出をした入院患者を注意しなさいよ!

 


 

 

 

 


 

 

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