第35話 リュージ編35
見た目はアイドルらしく、もの凄く可愛いのは確かに認める。
ま、俺としてはニーニャさんのあの猫耳パワーで遠く及ばないが。
だが、性格がアイドルにあるまじきものだ。
お金のことしか考えていない、ましてやファンの人たちを金づるにしか考えていないこいつは駄目だ。
ユーナに取り入ってなんとかダリアと仲がそれなりに良くなってから、元の世界に戻してもらうことをお願いしてみるか。
性格がこういう奴だ、仲が良くなってもこの話を持ちかけたら片道10万円ねとか言われそうだけど。
「ねぇ、ユーナぁ。ユニット組みましょうよ」
「ユニットって何?」
「二人で組んで音楽活動をすることよ」
「へぇ、楽しそうね。いいわ、やりましょう!」
駄目だろ!
ユーナ、お前はドリアドの町の防御壁の維持を最優先にしないといけないんじゃないのか?
おじさんからいろいろと聞いたから知っているぞ。
3日ごとにドリアドの教会で結界の調整をしないといけないんだろ。
「ユーナ、わかってると思うが町の結界……」
「じゃ、さっそく次の町で子羊ちゃんから銭を搾り取りましょう!」
「やる気満々で嬉しいわ! さ、私の手を握って」
聞いちゃいねぇぇぇ!
手を握るということはトラベラーの能力を発現させる気か?
愛輝から聞いているから知っている。
触れた者も一緒に別の場所や時間へ一瞬にして跳ばすことができるらしい。
俺や欽治をそっちのけで勝手に移動されたら帰れないだろ。
このホスピリパの町がドリアドの町からどれほど離れているか俺はまったく知らないんだぞ?
「ユーナ、まずは家に帰っておじさんに伝えなくていいのか? あと、結界の維持もしないといけないだろ」
「はっ、完全に忘れていたわ! そうね……どうしましょ」
忘れているんじゃねぇぇぇ!
お前の天職だろ!
「なになに? どうしたの?」
「あの、ダリアさん。俺から説明させてもらいますね」
ダリアにユーナの現状況を伝えた。
「ふ――ん、結界の維持ねぇ。そんなお金にならないことをしないといけないなんてユーナも大変ね」
「うん、お母さんとの約束だから……」
ユーナの顔が急に暗くなる。
そういえば、おじさんもユーナの母親のことは伏せていたな。
居候させてもらっているから何となくわかるが。
「そう。じゃ、こうしましょ。ドリアドの町を私たちの活動拠点にするの」
「活動拠点って、私の家は町から少し離れているわよ」
なるほど、東京の秋葉原や名古屋の栄みたいに活動の中心地をドリアドの町にするってわけか。
だが、この町に比べてかなり田舎だぞ。
ま、大勢の人が来ることになりそうだから町の発展としては良いかもしれないが。
「3日ごとでも私の能力なら時間や距離なんて関係ないわ。私の世界でもデビューして欲しいし。あ、そうだわ! ユーナ、今から私の世界を見てみない?」
なん……だと……!
あのできれば、その世界の2000年ほど過去の戦時中に連れて行ってもらえると俺としては最高に燃えるシチュエーションなんですが……危険はありそうだけど。
こういうとき、念話の魔法があればユーナに伝えてほしいことを言ってもらえるのだが。
「あ、あの! それじゃぁ、僕も一度お父さんに顔を見せて安心させたいです」
ナイスだ、欽治!
そのまま、リュージさんも連れて行ってあげてほしいですとか言ってくれ。
2000年後じゃなくても人形決戦兵器に乗れるなら、それはそれで……うへへ。
「いいわよ。欽治は強制転移で連れてこられたのよね? 一度、お父様になるのもいいし特別にただで連れて行ってあげる」
「あの、リュージさんも連れ……」
「それじゃ、しゅっぱ――つ!!」
ヒュン!
目の前から三人が消える。
え……?
俺は?
俺……は……?
は?
はぁぁぁ!?
あいつらぁぁぁ!
戻ってきたらすぅんごぉぅいお仕置きと指導をしてやる!
それより、どうすればいいんだよ!
ホスピリパの町だっけ?
聞いたこともないぞ。
地図が無いとドリアドの町がどこにあるかわからない。
落ち着け……一度、冷静になろう。
ここにいても何も始まらないし、ちょうど町の中だ。
今は教会の中だし神父さんや町の人に聞けば少しは情報が得られそうだ。
「おおっ、探したでござるよ。リュージ殿」
「……愛輝さんか?」
「どうしたでござる? 連れの者はどこでござるか? あ、あ、あ、あとダリア嬢はど、ど、ど、どこでござるか!?」
結局、一番聞きたいのはそれじゃねぇか。
「一度、元の世界に戻るってさ。ついでにユーナと欽治も連れて行って、俺は放置されたよ」
「そうでござるか、残念でござる。こんなときは美味しいものを食べるのが一番でござるよ。さっそく、夕食に行くでござる」
さっき、あんなにハンバーガー食ってただろうが。
しかし、よく見ると食べ終わったばかりのころに比べ少し痩せている。
こいつは代謝が良いってレベルじゃないぞ。
逆に燃費が悪すぎる。
「いえ、俺はちょっと」
「そういえば、この教会でスマホを配布しているでござるよ」
そういえばそうだった。
それで帰り方を調べられるかもしれないな。
「愛輝さん、どこで手に入れられますか?」
「付いて来るでござる」
はぁぁ、こういう優しさが今は助かる。
「おお、神父殿!」
「おや、君は?」
「以前、いただいたスマホをこの方にも譲ってほしいでござる」
「ほう、君は……ふむ」
神父さんらしき人物が俺をまじまじと見る。
「ふむ……カンナギくん。付いて来たまえ」
またアナライズか!
勝手に見る前に一言、伝えるというのはしないものなのか?
個人情報保護法を今すぐ導入してください!
なんて文句をたれながら、神父さんらしき人に付いて行き小部屋に入る。
この小部屋って懺悔室じゃないのか?
「では、お渡しする前に一つ訪ねよう」
「え?」
「君はこの世界の者では無いね」
「はい」
「ふむ、そのステータスの振り方は特化型では無いが、どういう意図で?」
「え? 特化型って極振りのことですか?」
「極……なんだって?」
知らないのか。
特化と言えば特化だが、他の部分、弱いだろ。
万能型が安全だからそうしているだけなんだが。
「それぞれに弱点を作らないように振っているだけなんですが」
「ほう、チキン型というわけか」
誰が腰抜けやねん!
神父らしき人が使う言葉じゃないぞ!
「では、これを。毎日一回は魔力を貯めることを忘れずに」
俺のステ振りってそんなに珍しいものなのか?
なんか、先生に呼び出しをくらった感じだったぞ。
チキンとか言われる始末だし。
とにかく、これで魔導式スマホを手に入れることができた。
「ありがとうございます」
「使い方は美甘くんに聞きたまえ」
「はい、わかりました」
懺悔室の前で愛輝が待ってくれていた。
「どうだったでござるか?」
「貰えました。使い方は愛輝さんに聞きなさいと」
「そうでござるか、承ったでござる。レストランでご教授するでござるよ」
ドリアドの町に帰るために無駄なお金は使いたくないのだが仕方ない。
使い方を誤って壊すよりマシだ。
「よろしく頼みます」
「気にするでないでござる。吾輩たちはすでにダリア嬢をともに応援していくことで固く結び付いた
桃園の誓いなどしたつもりは無いのですけどね。
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