第34話 リュージ編34
教会内は凄い熱気に包まれている。
しかし、今はライブより楽屋だ。
あのユーナのことだ。
自分は女神だから四の五の言わず楽屋にいれなさいとか女神だからアイドルにして当然とか言うに決まっている。
俺たちなら軽く流せるが、赤の他人にそんなこと言っても変な奴とか危ない奴とか思われてしまう。
こんなに人気のあるアイドルだぞ、下手なことをして相手の気分を害してしまったら元の世界に戻る計画や欽治の世界でロボットに乗って操縦するという
「ダリア嬢! 素晴らしいでござるぅぅぅ!」
愛輝の奴はかなりハッスルしているな。
「みんな――! ありがと――!」
「「うぉぉぉ! ダリアちゃ――ん!」」
まさか、ライブが終わるのか?
早くユーナを連れ戻さないと!
ステージ裏に来たがユーナの奴はどこにいるんだ。
そういえば、ライブなんて来たことが無いから勝手にステージ裏に入ってしまったが、これってマズいよな。
楽屋というものがどこにあるのかも、いまいちわからないんだよな。
「ダリア嬢! アンコールでござるぅぅぅ!」
お、拍手喝采とともに愛輝のアンコールを希望する声が聞こえる。
頼むから悪目立ちだけはしないでくれ。
「リュージさん、この扉に」
欽治が指をさした扉には結城ダリア様と書いている紙が張り付けてある。
ここが楽屋か?
中からは物音は聞こえないな。
こういうときのためのステルスだ。
欽治と俺にかけ、扉をゆっくりと開ける。
「誰もいないですね。気配を感じないです」
さすが剣士だ。
こういう隠密行動も欽治が傍にいるとかなり安心できるものだな。
絶対に放さないでおこう。
「私にも歌わせなさい!」
やりやがったぁぁぁ!
まさか、すでにステージに行っていたとは。
「「誰だ?」」
「「うぉぉぉ、可愛い! ダリアちゃんの相棒か?」」
「「ダリアちゃ――ん、紹介してくれ――!」」
観客らの反応は意外と悪くないのか?
だが、無関係者がいきなりステージ上に乱入するのは俺の世界では犯罪だぞ。
というか、ここまでぶっ飛んだ行動を取る奴だったのか?
普段から女神を名乗ってドリアドの町でも好き勝手しているからな。
問題行動は取っていないみたいだったが、今回のは問題行動だ。
後で指導だ、すぅんごぉいお仕置き込みで指導をしてやる!
「みんな――! 私の友達、ユーナ・クロウドよ! 仲良くしてあげてね!」
「「うぉぉぉ! ユーナちゃ――ん!」」
「なんですと――! ユーナ殿がダリア嬢の相方ですと――!?」
凄い、さすが世界を渡り歩くアイドルだ。
ユーナの名前はあの一瞬でアナライズでもかけて確認したのだろう。
神対応……と言っていいのかわからないけど。
とにかく、ステージ脇に行って様子を伺おう。
「曲がかかりましたね。女神様、歌えるんでしょうか?」
「ま、そのときは自業自得だろ」
ステルスをかけた状態ということもありスタッフたちには気付かれていない。
ステージを見るとユーナはしっかりと踊りながら歌えている。
ダリアとの連携も完璧だ。
いつの間に、しかもどこで覚えたんだ?
さっきまでダリアの存在も知らなかった奴だぞ。
「さっき、ここに向かって歩いているときに愛輝さんがアンコール曲には貴方の傍でいつもシュツルムファウストを歌うから歌詞と踊りを暗記するように言われました」
愛輝の奴か。
というか、相変わらず曲名が恐ろしいな。
そういえば、俺もファーストフード店で愛輝にライブ映像を見せられながら同じことを言われたような気がする。
右から左に聞き流していたが。
愛輝のスマホを一回見ただけで覚えたというのか?
知力極振りは伊達じゃないっていうことか。
「「ユーナちゃ――ん! ダリアちゃ――ん!」」
「「うぉぉぉ!」」
「みんな――! 今日はありがと――!」
「ふふん! 女神の私にとっては朝飯前ね!」
「「え? 女神様?」」
おい、やめろ!
下手に信者を増やしてしまうんじゃねえ!
「さぁ、みんな! 私にひれ伏しなさい! ホーリースフィア!」
ぎゃぁぁぁ!
言いやがった!
しかも、後光が差すように魔法まで放ちやがった。
「あの噂は本当だったんだ」
「あのダリア嬢、108の謎の一つがまさか真実とは素晴らしいでござる!」
「「SUGEEE!」」
「「ダーリーア! ダーリーア!」」
ふぁっ?
噂って何だ?
「ダリア様はやはり女神だったのか!」
なんでそうなるの?
ステージ裏のスタッフも驚いているようだ。
「結城ダリア108の謎の一つよね? あれ、マジなんだ?」
「確か女神様の友達がいるとかいうやつか」
「そこから派生してダリア様自身も女神様かも知れないって言われてるのよね」
スタッフさんたちも相当、あのアイドルにご執心のようだ。
ま、こういう世界だし信じる奴がいてもおかしくは無い……のか?
「「女神様! これからも迷える我々に救済を!」」
もう怪しい宗教団体になりつつある感じがするのは俺だけか?
「安心しなさい……貴方たち萌え豚は今、救われました!」
「「うぉぉぉ! ユーナ様――!」」
ステージが暗くなり、ユーナとダリアがこっちに向かって来る。
つか、ユーナ……最後の萌え豚ってお客様をさらっとディスってんじゃねえよ。
ここにいたままじゃ印象が悪いな。
「欽治、さっきの楽屋前に行くぞ」
「は、はい」
ガチャン
ユーナとダリアが楽屋に入る。
よし、心配したが裏目がかえって良い結果になった。
この状況では会話もスムーズに進められるだろう。
コンコン
「は――い。開いてますよ――」
「女神様! 凄かったです」
「ユーナ、さすがだな」
「誰?」
「私の眷属よ!」
違うわ!
って言いたいが、今は控えておこう。
「あら? よく見れば、貴女……」
「え? 僕ですか?」
「雪ちゃんのお姉さんよね? 能力研究所で雪ちゃんと一緒に出ていくところを何度か見かけたことがあるのよ。貴女もこの世界に来てたのね」
「は、はい。佐能欽治です。まさか、僕のことを知っていたなんて嬉しいです先輩」
「なんか男の子みたいな名前だけど雪ちゃんからお姉さんってことを聞いていたのよ。とても可愛いじゃない」
いや、そいつ男の娘なんですって毎回だが言いたい。
それとも本当に女なのか?
やっべ、わかんなくなってきたぞ。
胸は垂直だし、下部は……うん、見るのが怖いからまだなんだ。
単に残念なくらいのちっぱいなだけなのか?
だとしたら……うぉぉぉ、俺はどうしたら良いんだ!?
「それで、貴方は?」
「私の眷属よ! まだ信仰心はあまりないけどね、絶賛教育中よ」
「違うわい! あっ……お、俺は神薙龍識です。初めまして、お目にかかります。ダリアさん」
「ふ――ん、あっそ。そんなことより、今回はありがとう! ユーナ」
うわぁ、イメージ悪りぃ。
塩対応どころじゃないぞ、これは。
「ふふん、こっちも楽しませてもらったわ! アイドルっていう職業もなかなか楽しいわね」
「そうでしょ! 今日は本当に儲けさせてもらったわ! 貴女のお陰で私も神格化しちゃたし! これでさらにがっぽがっぽと儲けることができるわ!」
ん?
なんか、俺の第六感がこいつもやべぇと教えてくれている。
「本当ににアイドルは儲けるのに最高の職業だわ。そうだ、ユーナ! 私とユニット組まない? この無知識な世界の人から大量にコレを絞り出せるわ!」
指でお金を指すのを止めい!
こいつはあれだ、完全な守銭奴だ!
「最高じゃない! この哀れな子羊共からもっと銭を搾り取ってあげましょう!」
お前もか――!!!
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