第23話 リュージ編23
もうすぐ昼だというのに、暴風雨は収まる気配がない。
こりゃ、今日も一泊することになりそうかもな。
女将さんに宿泊費のことも含めて相談しておくとするか。
「リュージ、私はお風呂に行って来るわね」
「女神ちゃん、あたしも――!」
「おう、行ってら」
さっきまでは二日酔いで気持ち悪そうにしてたのに回復が早いな。
風呂場で吐くなよって言いたいが、下手に言うとうるさいからなぁ。
俺も女将さんを探しにフロントへ行く。
女将さんが玄関の掃除をしている。
邪魔しては悪いし後にするか。
「あら? どうかしました?」
女将さんがこちらに気付き、声をかけてきてくれた。
「ええ、今日もこの悪天候が続くようなら、もう一泊お願いしたいと思うのですが」
「構いませんよ。お昼ご飯はどうなされます?」
「えっと、先に昨晩の代金を支払わせていただいても?」
「でしたら、二泊で一泊分でも構いませんよ」
「え? 良いんですか?」
「こういうときは助け合いですよ。Z指定の後でしょ。多分、この嵐も……」
あのデカさのモンスターだもんな。
首都の住人が先にこの村に着いて事情を話してくれたのかな?
嵐があの怪獣のせいだと言うのか?
でも、まぁ女将さんのお言葉に甘えるとするか。
「すみません。では、お言葉に甘えさせて貰っても良いですか?」
「はい、それでお昼はどうします?」
「いただきます」
「では、今からご用意いたしますね」
さて、それじゃ店内の土産屋でも行くか。
龍の木彫りが個人的に欲しいんだよな。
土産屋で龍の木彫りをいろいろと見る。
飛竜以外は本物を見たことがないからな。
というか、本物に遭ったら生きて帰れる自信が持てないし遭いたくもないけどさ。
そういえば、欽治はドラゴンをまた倒したんだろうか?
あいつのせいでこの世界のドラゴンが絶滅しなけりゃ良いんだけどな。
杏樹は……うん、あの怪獣に踏みつぶされて昇天してくれていることを祈ろう。
ご愁傷様。
「でね、そのリンス飲めるのよ!」
「あらぁ、あの村のシャンプーも美味しくてがぶがぶ飲めるわよ!」
また昨日のおばさんたちか。
リンスやシャンプーって飲みものだったけ?
……どんな村だよ!
「そういえば、聞きまして? この村はアレを飲む人もいるみたいよ!」
「そうそう、アレはさすがにねぇ」
アレって何だよ。
このおばさんたちの立ち話も聞くだけで謎が増えてくるな。
部屋に戻るとするか。
「あの二人は、まだ風呂か」
まだ30分ほどしか経っていないしな、当然か。
仲居さんが昼食を持ってきてくれるまで部屋で大人しく待ってるとしよう。
相変わらず、外は悪天候だ。
いや、朝よりも悪化して無いか?
この宿は丈夫そうだけど、ボロ宿などは大丈夫だろうか。
ガラガラガラッ!
「ふぅ! さっぱりしたわ!」
「お兄ちゃん、ただいま――!」
うるさいのが帰ってきた。
扉もそっと開けって。
「昼食を頼んだから、仲居さんがそろそろ持ってきてくれるぞ」
「わぁい!」
「あら、気が利くわね。さすが、私の眷属ね」
「誰がお前の眷属だ」
ガラガラガラ
「お待だせ。昼食お持ぢしたよ」
「ありがとうございます」
「あら! お昼も美味しそうね」
「カレーもある! やった――!」
カレーにうどんにお好み焼きにご飯と味噌汁か。
うん、炭水化物ばっかりだ。
こりゃ、チョイスミスってるだろ。
文句を言うつもりはないけどさ。
「いただきま――す」
お好み焼きにご飯か。
関西で言うお好み焼き定食ってやつだな。
ん?
あら!?
あらら――、旨い!
炭水化物に炭水化物っってコラボレーションも意外に悪くないやん。
ほんまに関西人、よう考えたもんやで!
「このうどんも薄味だけど美味しいわね!」
ふむ、出汁の色からして関西風うどんというやつだな。
「カレーも美味しいよ!」
ふむ、カレーは……カレーだな。
「それにしでも、この悪天候ば何とかならんがねぇ」
仲居さんが外を見て呟いている。
「そうですね。朝、起きたら急にこんな天気になっていて驚きましたよ」
「んだば、アレの仕業じゃないといいんだげどね」
「アレって何ですか?」
「名前はよう知らんだばい。ただでっかい竜のような姿しどるけん」
「竜……ですか」
また、ドラゴンかよ。
確かに天候を操るドラゴンっていたよな。
名前はよく知らないが。
ヨルムンガルドも存在する世界だし、こんな天候にするモンスターがいても頷けるか。
ピカッ!
ドォォォン!
「ひゃ、雷!」
「わぁい、雷だ――!」
こらこら、雪ちゃん。
女の子は雷で喜ぶんじゃなくて怖がって男にしがみついてくれるほうが好感度爆上がりするんだぞ。
だが、
こっちの雪のほうが扱いやすいし。
ギュエエエエエ
ん、鳴き声?
やはり水龍とかの類か。
この村を襲うなよ……ってこれはフラグか。
やめておこう。
「ひええ――! やっぱり、アレだったみたいだべ」
「水龍とかですか?」
「うんにゃ。水龍様より凶暴な奴じゃて」
ピカッ!
ドゴーン!
「雷、雷、らんらんらん」
それって、雨雨降れ降れだろ。
というか雷見て喜ぶ幼女もレアだな。
キュエ――!
キュゥ!
ギュエエエエ!
一頭だけじゃない?
おい、複数いるとなるととんでもないことになるぞ。
「なんまんだぶ。なんまんだぶ。なんまんだぶ」
仲居さん、遂に神様にお祈りか。
こういったときは、お祈りする前に逃げるのが先決だろう。
「ん、みんな食べないの? 食べ無いなら私が貰うわよ」
「あははは。雷、たのし――!」
もう、こいつら自由過ぎだろ。
ドラゴンの鳴き声にもっと反応しろよ!
ダンダンダン
何だか玄関のほうが騒がしいな。
行ってみるか。
「あの! カンナギリュージさんのお部屋はどこですか?」
「おやおや、お嬢ちゃんこんな天候の中よく来たわね。とりあえず、これで身体を拭きなさい」
ニーニャさんだ。
こんな悪天候の中でまさか待っていたのか?
「ニーニャさん、どうかしたんですか?」
「あっ! リュージさん! 大変です! モンスターが!」
「あの声ですよね。ドラゴンと聞きましたが、やはりこの村に?」
「いえ! あれはドラゴンなんかじゃありません! あれもZ指定の討伐モンスターなんです!」
うわぁ、もうフラグ立ちゃったよ。
やめてくれよ――。
この前の怪獣で懲り懲りなんだよ。
詳しくは聞かないでおこう。
「俺たちではどうにもなりませんね。ユーナにすぐテレポートしてもらいましょう!」
「そ、そうですね。それでは、私はこの旅館にみんなを集めてきます」
ニーニャさん、雨も滴る良い女とは良くいったもんだ。
下着が透けて見えてたことは黙っておこう。
ドラゴン、よくやった!
「ねぇねぇ! リュージ、出たわよ!」
「ん、何がだ? ユーナ」
「あの空の上にいる奴よ! あいつはきっとキングギ……」
「だ――! それ以上言うなぁ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます