第21話 リュージ編21
部屋に戻ってきた俺たちは晩酌をした。
もちろん、雪はジュースだが。
「リュージ! カンパ—―イ!」
「カンパ――イ!」
「はい、乾杯」
さっきの事が気になって酒が進まない。
賢者はともかく、風呂場に何が居たんだよ。
こうなったら、ユーナを酔わせて喋って貰うのが早そうだな。
俺が先にダウンしてしまわないように気を付けないと。
そうならないために、ユーナには大量に飲んでもらうか。
いや、本当は飲ませたらいけないんだけど……。
「ほら、ユーナ。もっと飲め」
「ふふん、私を酔わせて何を計画しているか知らないけど、迂闊ね! 私はお酒に強いんだから」
何が酒に強いだ。
夕飯の時、すぐにベロンベロンになってただろうが。
それに家では親父さんに止められているだろう。
もしかして、夜中にコッソリと飲んでいたのか。
こいつならやりかねんな。
あ、だから頭がパーなのか。
小さい時から飲むと頭がパーになるっていうし。
「あたし、眠くなってきた」
「そうだな、雪ちゃんはもう寝ないとな」
まだ11時だが、子どもにとっては遅いだろう。
俺だって子どものころには9時や10時には寝ていたもんな。
布団を敷いて、雪を寝かす。
「ス――、ス――」
「もう眠りについたのか。さすが、子どもだな」
「リュージ、あんたも飲みなさいよ」
ちっ、出来る限り飲む量を減らそうといろいろと画策していたが無理か。
渋々とユーナと酌を交わす。
「そうだ、ユーナ。お前、職業は女神じゃなくてプリーステスだろ?」
「え!? 見たの! 見たのね! いいや、絶対見たんでしょ!」
あら、懐かしい3連発。
「他のグループと明日の相談をしたときにテレポートの魔法があることと知力が必要な事を聞いたんだよ。お前なら、もしかしてと思ってな。と言うか、お前がテレポートのこと言わないからだろ」
「私は取得魔法がいっぱいあって自分でも把握できていないのよ」
「ほう、ちなみにいくつ覚えてるんだ?」
「数えたことないけど、たぶん70種類くらいかしら?」
70!?
いや、こいつなら有り得るか。
だが、補助魔法や回復魔法は多くて20種類くらいのはずだ。
ということは攻撃魔法も覚えているのか。
もう、プリーステスじゃなくなっているじゃないか?
職業替えをしたらどうなんだ。
プリーステスが一番女神に近い雰囲気があるからこだわっているんだろうけど。
「70は凄いな。それで攻撃魔法の中で一番強いのは何を取得しているんだ?」
「内緒よ。それを言ったら面白くないでしょ」
面白い面白くないの問題じゃないんだよなぁ。
生きるか死ぬかの問題だから聞いているんだ。
杏樹といい、ユーナといい何かしらのトラブルを持ってくる。
そのときの戦略を立てるのに聞いているのだ。
「いや、大切な事だから教えろ」
「嫌よ、絶対に言いたくないもん!」
「ほほう、そんなに隠すってことは大したことない魔法ってことだな。あらぁ、女神様のくせに? ウプププ」
「なっ、リュージ! 私の女神の力をみくびっているわね! 良いわ、教えてあげるわよ!」
ふん、チョロいな。
「ふふん、聞いて驚きなさい! まずはこの女神様の最強攻撃魔法! それもギャラクシーメテオライトよ!」
「ふむ、直訳すると銀河級隕石って……どれだけデカいんだ?」
「何よ、反応薄いわね!? メテオよ! 無属性だから相手は関係ないのよ! 滅茶苦茶大きいのよ! 首都なんて1発よ! 1発! 1発で大きいクレーターができちゃうのよ!」
「銀河級よりかなり小さくなったな、おい」
「大きさなんてどうでもいいのよ。メテオはね凄い威力だから最強なのよ!」
「はいはい、わかったわかった。これからはそれも撃てる状況になったら撃ってもらうからな」
「何、言ってるのよ? こんな最強魔法を急場で撃てるわけないでしょ。最低でも1週間はかかるわね!」
ふぁっ!?
1週間かかって放つ魔法って……どんだけ使えないんだよ。
「そうね、戦闘中ならエアーシェイクとかビッグバンクエイクなんてどう?」
ふむ、一つは風魔法みたいだな。
もう一つは地震?
土属性か?
「いったい、どういうものなんだ?」
「エアーシェイクはそのままよ。風が凄い勢いで振動して魔物を八つ裂きにするの。ビッグバンクエイクは地面が割れて敵を奈落の底に落とす魔法ね」
「慈悲深い女神様が奈落の底に落とす魔法なんて良いのか?」
「何、言ってるの。モンスターはね、絶滅してもまた魔界から湧いてくるんだから害虫と一緒よ!」
魔界って……。
こいつ、結構飲んでいてお喋りになっているのか?
ほんのり顔が赤くなってるし。
こりゃ、いろいろと聞けるチャンスだな。
「魔界って、まさか魔王が治めているとか?」
「そうよ。魔王歴は魔王が魔界もこの世界も治める時代の事よ」
「つまり、今も魔界で魔王がいつ侵攻するかチャンスを伺っているのが今ってことか?」
「あら、よくわかるわね。だから、魔物も少しずつ活性化してきているのよね」
「活性化って、まさか今までの魔物は冬眠みたいなものだってことか?」
「そうよ。この前のビッグモスのクエストのときも逃げるのが多かったけど、何匹か襲ってきたのも活性化によるものよ」
そういえば、ニーニャさんが逃げるばかりのモンスターだって言っていたのに何匹かは襲ってきたからな。
そういうことだったのか。
……ということは、魔王を倒すと元の世界に戻れるとかいうお約束も期待できるのか?
「うぇ、ちょっと飲みすぎちゃったかも」
「最後に一ついいか?」
「え、何?」
「風呂場で何が居たんだ?」
「それは今度って言ったじゃな……うぇ」
本当に風呂場に何が居たんだ?
ここまで隠されると気になって夜も寝れないじゃないか。
いや、疲れているから寝れるけどな。
実際には。
「そうだった。おじさんと飲んで俺が二日酔いになったときに酔いを癒す魔法をかけてくれたじゃないか? それを自分にかけろよ」
「うぇぇ……治癒魔法は自分にはかけれないのよ」
自分にかけれない治癒魔法って……使えねぇ。
やっぱり、ユーナってポンコツなんじゃ?
そういや、こいつがヒールをかけてくれたときに言ってたよな?
ごくごく民がなんちゃらって……。
ハッ!
風呂場で聞いた『ごくごく』って声の主か?
だが、姿が見えなかったな。
ユーナの様子だとかなり恐ろしい奴みたいだし、警戒はしておいたほうがいいのか?
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