11 エリアナside②



「……どこなのよ、ここ……」



見渡す限り、木、木、木。


林?ううん、森よね。たぶん。



誰か人がいないかと森の中を歩き回るも、人っ子1人見当たらない。



此処は何処の森なのか、そもそも日本なのかどうかもわからない。


人がいれば何か話してわかるかもと思ったのに、


森の中であたし1人、どうすればいいのかわからず途方に暮れていた。





__バサッ




ん?


鳥でも飛んでるのかな?


羽根の羽ばたく音が聞こえ、あたしは空を見上げた。



照らされた太陽の光が目に入り、眩しいっ。と思ったのも束の間、


あたしの視界は何かに覆われるかのように暗転し、またあたしは気を失った。









「……あれ?……あたしは……」



頭がボンヤリする。此処はまだ森の中なの?


それとも、あたしは家に帰っていて、これは夢の中?




“__夢ではない。”



「誰!?」


いきなり誰かの声が聞こえて、目を凝らすけどやっぱり何も見えない。


周りは真っ暗のまま。




“……お前は何を望む?”



「……え?」


って言うか、ちょっと待って。


ってもしかして!



あたしの頭に、沢山のラノベの話が思い浮かぶ。



「ねえ!あなたは神様でしょ!?」



“………………”



日本で流行りのラノベ展開が遂にあたしに!?



ならこの声はきっと神様に違いない!なんて思って聞いてみたけど、


それに対しての答えはくれなかった。



「……まあいいわ。__望みだったわね?」



自分の今の姿を確認する。


鏡なんてないから、首から下の服装とか体型とかしか確認出来ないけど、


見た限りでは、コンビニにいた時の格好と何も変わっていないように見えた。



じゃあ、あたしは死んではいない。と、いうことは、転移……異世界召喚ってことね!



きっと聖女とか勇者とかで召喚されたのよ!


あたしは普通の人じゃなくて、選ばれた、特別な人なのよ!



テンプレでは、直前までプレイしてたり読んでたりした小説やゲームの世界が多い。


それなら、この世界はもしかすると……



「望みの前に、……ちょっと聞きたいんだけど。」



“__何だ?”



「この世界はどういう所なの?」



“………お前の思っている世界で間違いないだろう。”



「やっぱり!!」



なら、あたしの望みは決まってる。


この世界はあたしの為の世界ということ。


あたしが主役。ヒロインなのよ!


ゲームでは、結局クリアどころか聖女の覚醒すら出来なかったけど、


現実で、あたしの世界なら上手くいくはずよ!



だから、あたしは自分の望みを口にした。


あたしをヒロインポジションのユリーナに生まれ変わらせて。と。





望みを言い終えた直後、あたしは意識を手離した。


意識を失ってばかりだな……なんて思ったけど、


これからユリーナとして幸せになるんだから、そんなことは些細なことよね。









次に気が付くと、あたしは生きていた。



目覚めたとき、

場面は公爵家に養女として引き取られてから2年後位。


公爵家の両親や、キリクお兄様との会話で、あたしはデジャウ゛を感じた。



選択肢は無いものの、そうだ。確かゲームで全く同じ会話をした覚えがある。


何回もゲームで繰り返したのだ、皆のセリフは勉強が苦手なあたしですら流石に覚えてしまっている。



これはホントに現実…?





___ジジッ




会話が終わった直後、いきなり頭痛がし、暗転した。









また気が付くと、今度はあの後からまた数年後のユリーナの日常風景。


やはりこれもゲームでの出来事でよく覚えている。


そして同じようにゲーム同様の会話がで繰り広げられた。






___ジジジッ






またも頭痛が起きる。


そしてやはり気が付くとゲームで見たシーン。会話も同じ。



会話が終われば頭痛がして、次の場面に移る。



そんなを繰り返していた。




確かにあたしはユリーナとして、自分で声を出して皆と会話している。


だから、現実なのは間違いない。



たとえ、ゲームで見た場面意外の日常が、あたしはこれが現実だと、あたしはユリーナなのだと思っていた。





そしてあるイベントシーンで、あたしはセリフをどうしようか悩んだ。


そのイベントは、ユリーナが聖女になれるかどうかの試練の場面だった。



ゲームでは一度も聖女になれなかった。


おそらくは今までの選択肢を間違えすぎたせいだろう。



でも、今はゲームではなく現実。


あたしの世界なんだし、あたしの都合の良いようになって当然だと思う。


だからきっと深く考える必要なんてない。


聖女に覚醒できれば最推しのエリアス様とだってラブラブになれるはずよ!



あたしはそう信じて疑わなかった。




そして、結局………、


あたしは聖女に覚醒することが出来なかった。



会話もあたしがゲームで進めた内容と全く同じ。




なんでよ!あたしの世界でしょ!?



____ジジッ、ジジジッ






もしかしてやり直しが出来るのでは?と思ったけど無理で、そのまま次の場面へと進む。












そして迎えた、あたしが毎回悔しい思いをしながら見ていたシーン。



「残念だが、私と君では緣が合わなかったようだ」



「!!」



あたしは顔面蒼白になった。



「エリアス様!待って!!」



必死に追い縋ろうとするも、何故か体が上手く動かせない。



Game over のテロップが現れはしないものの、


エリアス様の去って行く後ろ姿がホントにゲーム画面で見たスチルそのもので……





あたしは涙を流しながら、待って!と、動かせない体のまま言い続けていた。




どれくらいそうしていたのか、気が付くとあたしはいつかのように暗闇にいた。



“__もう一度やるか?”



あの時と同じ声がした。



考えるまでもない。あたしは無意識に返事をしていた。



「もちろんよ」









_____ジッ、ジジジッ




意識が浮上する。目を開ければ、ユリーナになってからの初めての場面にいた。



あたしは今度は違うセリフで会話した。




その後のシーンでも、違うセリフで返事をする。


皆、やはりゲームで聞いたセリフで返ってくるけど、

それでも最初とは違う展開になるはずだと。



あたしはそう信じて会話した。



でもやっぱり聖女になれず、エリアス様の最後の言葉を聞く事になり……



また暗闇に戻ったかと思えば、あの声が聞こえ、あたしは同じ返答をした。




そんな事を何回も、何回も繰り返して、なかば自棄になり始めた頃、




暗闇に戻った時、あの声がいつもとは違う事を言い出した。




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