8
「………此処は?」
『此処は、ユリーナ、貴女の
「貴女は…………」
『私は貴女だよ』
「貴女はお兄様の……」
『そう、お兄様の妹、サンテナとして生まれた者。でも貴女でもある』
「……?」
『ユリーナ、貴女と私は元は同じひとつの魂だった。』
本来は、お兄様の妹は生まれないはずだったのだ。
それは、つまり___、
「孤児の私だけだったと……?」
『そう、私とユリーナは、ひとつの魂――1人の人間として、貴女の体で生まれる筈だった。』
「……だけど。私達は別れてしまった__。」
この世界に生まれる瞬間、時空に歪みが生じた。
その歪みが、私達の魂に影響を与え、無理やり別たれた魂は2つの生として産まれ出でた。
だが___
「サンテナ、貴女が病弱で産まれてしまったのは、時空の歪みが原因?」
『……それもある。でも、大半は、ユリーナ。貴女の魂より私の魂の比率が小さいのが理由かな。』
ただでさえ、1つだったものが分裂してしまったのだ。
それよりも小さいとなれば、体が弱まるのも当然だろう。
『私が死を迎えなくても、ユリーナと出会えば、私達は必然的にひとつに戻るようになっていたんだよ。』
即ち、在るべき姿に戻る時___それは聖女の覚醒にも繋がることだった。
『ユリーナ。貴女には、もうひとつ記憶があるでしょう?』
「!!」
『魂が別れた時。私は貴女が私から離れて消えて行く所を見ていたの』
私が
何も出来ないまま彼女は見ていたと言う。
別れた魂は、何もなければそのままこの世界に2つの生として産まれていただろう。
だが、時空の歪みの衝撃で、私だけ異空間へと弾かれ、やがて地球へと辿り着いた。
哀れに思った地球の神は、そのまま私を地球人へと転生させた。
地球で一生を終えたなら、またこの世界に戻れるように、この世界の神に取り計らっていたのだ。
サンテナと私の産まれた歳に2年のタイムラグがあるのは、歪みを元に戻し、安全になるまで待つのに、そこまで掛かってしまったから。
地球での年月は、こちらの世界とは完全に別次元なため、換算されないのだそうだ。
と、言う事を、サンテナは死する寸前に神様から聞いたのだと言う。
「……神、ね。」
『信じられない?』
地球で生きていた時は、正直、全く信じていなかった。
初詣とか、神社参拝などもしたが、形だけだったと思う。
だけど。
この世界に転生して、乙女ゲームにそっくりだとか、聖女に、魔法。
転生者が自分だけでないこととか。
ここまで非現実的な事が揃えば、神がいても何ら可笑しくない。
「……今は、神様もいるんだってわかるよ。」
だからと言って、神を信じられるかは別だが。
『私も、神様を信じている訳じゃないよ。』
私の心に、サンテナの心が入ってくる。
私と無理やり離されて何も出来なかった悔しさ。
お兄様の妹として産まれ、家族皆を最期まで悲しませてしまった辛さ。
死んだ後、実は私の事を見守っていてくれていたけれど、苦しむ私に何も出来ないでいたことへの憤り。
もし私がサンテナの立場であったなら、きっと私も同じように感じただろう。
私はサンテナでもあり、サンテナは私でもあるのだから。
「私とサンテナが会えば、元に戻る筈だったのなら、貴女が私を見守っていてくれていた時に戻れなかったの?」
『……ううん』
彼女は苦笑いして首を振る。
サンテナだけでなく、私自身もサンテナの事を認識しなければ駄目なのだと言う。
生きている時に会えていれば、すぐに認識できていたらしい。
その辺の詳しい理由はよく解らないが、
とにかく、
彼女は常に私の
気付けて良かった。でなければ、私の中に居ても、彼女は永遠に独りと同じだ。
そんな事は私だって堪えられない。
「気付くのが遅くなってごめんね…」
『…大丈夫。内側から、ずっとユリーナを通して外を見ていたから、私も一緒に学生気分も味わえたし、楽しかったよ』
また、お兄様や、お父様、お母様達にも会えて、嬉しかった。
そう言う彼女は、本当に嬉しそうに笑った。
「……そっか。」
『だから……』
「__うん。」
もう、彼女が何も言わなくても分かる。
私達は抱き締め合い、祈る。
さあ。
『「行こう。」』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます