「………此処は?」



『此処は、ユリーナ、貴女の精神こころの中。』



「貴女は…………」



『私は貴女だよ』



「貴女はお兄様の……」



『そう、お兄様の妹、サンテナとして生まれた者。でも貴女でもある』



「……?」



『ユリーナ、貴女と私は元は同じひとつの魂だった。』



本来は、お兄様の妹は生まれないはずだったのだ。


それは、つまり___、



「孤児の私だけだったと……?」



『そう、私とユリーナは、ひとつの魂――1人の人間として、貴女の体で生まれる筈だった。』



「……だけど。私達は別れてしまった__。」



この世界に生まれる瞬間、時空に歪みが生じた。


その歪みが、私達の魂に影響を与え、無理やり別たれた魂は2つの生として産まれ出でた。



だが___




「サンテナ、貴女が病弱で産まれてしまったのは、時空の歪みが原因?」



『……それもある。でも、大半は、ユリーナ。貴女の魂より私の魂の比率が小さいのが理由かな。』



ただでさえ、1つだったものが分裂してしまったのだ。


それよりも小さいとなれば、体が弱まるのも当然だろう。



『私が死を迎えなくても、ユリーナと出会えば、私達は必然的にひとつに戻るようになっていたんだよ。』




即ち、在るべき姿に戻る時___それは聖女の覚醒にも繋がることだった。




『ユリーナ。貴女には、もうひとつ記憶があるでしょう?』



「!!」



『魂が別れた時。私は貴女が私から離れて消えて行く所を見ていたの』



私がこの世界ここではない、地球――異世界へと跳ばされて行くのを、


何も出来ないまま彼女は見ていたと言う。



別れた魂は、何もなければそのままこの世界に2つの生として産まれていただろう。



だが、時空の歪みの衝撃で、私だけ異空間へと弾かれ、やがて地球へと辿り着いた。



哀れに思った地球の神は、そのまま私を地球人へと転生させた。



地球で一生を終えたなら、またこの世界に戻れるように、この世界の神に取り計らっていたのだ。



サンテナと私の産まれた歳に2年のタイムラグがあるのは、歪みを元に戻し、安全になるまで待つのに、そこまで掛かってしまったから。



地球での年月は、こちらの世界とは完全に別次元なため、換算されないのだそうだ。



と、言う事を、サンテナは死する寸前に神様から聞いたのだと言う。




「……神、ね。」



『信じられない?』



地球で生きていた時は、正直、全く信じていなかった。


初詣とか、神社参拝などもしたが、形だけだったと思う。



だけど。


この世界に転生して、乙女ゲームにそっくりだとか、聖女に、魔法。



転生者が自分だけでないこととか。



ここまで非現実的な事が揃えば、神がいても何ら可笑しくない。



「……今は、神様もいるんだってわかるよ。」



だからと言って、神を信じられるかは別だが。



『私も、神様を信じている訳じゃないよ。』



私の心に、サンテナの心が入ってくる。





私と無理やり離されて何も出来なかった悔しさ。



お兄様の妹として産まれ、家族皆を最期まで悲しませてしまった辛さ。



死んだ後、実は私の事を見守っていてくれていたけれど、苦しむ私に何も出来ないでいたことへの憤り。




もし私がサンテナの立場であったなら、きっと私も同じように感じただろう。



私はサンテナでもあり、サンテナは私でもあるのだから。




「私とサンテナが会えば、元に戻る筈だったのなら、貴女が私を見守っていてくれていた時に戻れなかったの?」



『……ううん』


彼女は苦笑いして首を振る。



サンテナだけでなく、私自身もサンテナの事を認識しなければ駄目なのだと言う。



生きている時に会えていれば、すぐに認識できていたらしい。


その辺の詳しい理由はよく解らないが、


とにかく、


彼女は常に私の精神こころの奥底にいて、それを私が気が付かなければずっとそのままだったのだ。



気付けて良かった。でなければ、私の中に居ても、彼女は永遠に独りと同じだ。



そんな事は私だって堪えられない。



「気付くのが遅くなってごめんね…」




『…大丈夫。内側から、ずっとユリーナを通して外を見ていたから、私も一緒に学生気分も味わえたし、楽しかったよ』



また、お兄様や、お父様、お母様達にも会えて、嬉しかった。


そう言う彼女は、本当に嬉しそうに笑った。






「……そっか。」



『だから……』



「__うん。」



もう、彼女が何も言わなくても分かる。



を大切にしてくれた人達を助ける為に、エリアナから全てを取り戻そう。




私達は抱き締め合い、祈る。




さあ。


『「行こう。」』




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