epilogue




____チュッ、チュッ




「……んん、」




「……ユリー、起きて?」



……チュッ、ペロリ。



「…!?ひゃあん!」



顔に何か柔らかい感触がするな~なんて寝ぼけていたら、


耳に湿った生暖かいものが触れ、そのままペロリと舐められた私は、

一気に眠気から覚めた。




「残念、もう少し起きなかったら、ユリーを気持ち良くしてあげられたのに。」



「お、お兄様!?」



「……やっぱりユリーは私に可愛がられたいみたいだね?」



「!!い、いや、ちょっと待って!」



「……ユリーはそんなに私が嫌なのかな?」



お兄様は本気で悲しそうな顔をして私の頬を優しく撫でる。


「違います!い、嫌とかではなくて…、もう、朝ですし……。それに今日は………、」



「うん、今日はアンカー嬢の結婚式だね。」



そう、今日は、親友のウェルミナの結婚式だ。


私が学園を卒業し、お兄様と婚姻を済ませて、2年後の今日、


学生の頃から好きだったというお相手と、めでたく結ばれるそうだ。



一緒になるまでに色々障害があったらしいが、ウェルミナの粘り勝ちで結婚に漕ぎ着けたのだと、


ウェルミナはどや顔で笑っていた。


恋する乙女は強し。



そんな訳で、その結婚式に出席するのに、これから色々身支度など準備があるのだ。


日本で生きていたように、手軽にパパッと出来ないのが悲しい貴族なのだ。


要するに、時間が掛かる訳で……



「だから……、その、今はあまり時間もないですし……。あの、が決して嫌という訳ではなく……、寧ろ……………嬉しい……です。」




「…………。」



「………あの、キリク?」



「……ユリーナ、わざとやってる?」



「え?」



「ダメ。もう許さない。大人しく私に可愛がられるんだよ」



「えっ!えっ!?待って下さい!時間が!」



「ほら、また。ユリーは気を抜くと直ぐ“お兄様”呼びになる。」



「あっ、キ、リク…ん、」



言い終わる前に唇を塞がれる。



徐々に濃厚になるキスを受けながら、キリクは私のネグリジェをゆっくり脱がしていった。



キスの気持ちよさに、私の頭は芯が痺れを感じるようになっていた。



チュッと音を立てて一旦口を離すと、キリクは私の耳元で囁いた。


「大丈夫。まだ夜が明けたばかりだから、もう少し時間はあるよ。」



「ふぇ?」



なら何でそんな早い時間に起こしたのだろう?


てっきりもう時間だから起こされたのだと思っていたのに。



「ふふ、ユリーの寝顔があまりに可愛くて、我慢できなくなったんだよ。」



キリクの言葉に、私は更に体が熱くなるのを感じた。



「可愛い……ユリー、愛してるよ。」



結婚してから毎日、何時までも蜜月のように愛され、


そして今も、時間ギリギリまでキリクに優しく愛されるのだった。












_____________________





「ウェルミナ~!おめでとう!!」



「ユリーナ、ありがとう!」




この世界、クレーズ国の王都にあるとても大きく、清廉な教会で、

ウェルミナはお相手の子息と嬉しそうに並んでいる。



ウェルミナのドレスは真っ白で、所々に宝石が散りばめられており、とても綺麗だ。




乙女ゲームが主軸のせいなのか、結婚式は日本…地球でも馴染みのある様式で、


私の結婚式の時も、同じように教会で行われた。



まあ、私の場合は聖女と言うこともあってか、

参列者には陛下方、殿下方など、王族までいたため、かなり豪華な式になってしまったが。



派手な事は苦手な、もう少し慎ましやかな式にしたいという私の思いは王族参列で却下されたのだ。



聖女の地位が陛下に次ぐ、つまり王妃様と同等となるのだから仕方ないのかもしれないが。






◇◇◇





「ウェルミナ!おめでとう!」



「アマリア!来てくれたのね、ありがとう!」




少し遅れて、アマリアがエリアス殿下と共に教会にやって来た。



「殿下も…、態々ありがとうございます。」



「いや、幸せそうで良かった。」



殿下はぎこちないながらもアマリアをエスコートし、柔らかい微笑みを浮かべている。



「殿下、アマリア、ご婚約、おめでとうございます。」



「…あぁ、ありがとう。ユリーナ嬢…いや、フェリス公爵夫人。」



フェリス公爵夫人……。


呼ばれ慣れていないその響きに、私は何だかくすぐったくて、


恥ずかしくて顔を伏せてしまう。




私とキリクが婚姻を済ませた後、お父様は直ぐにキリクに当主の座を明け渡した。


エリアナに掛けられた呪いの影響で、体を壊してしまったのだ。


当主としての能力も充分に備え終わっているキリクに、当主になることには何も問題はなかったようだ。




私が公爵夫人となってから、公式な茶会にも何度か出席しているが、


私の呼び名は聖女の方が強く浸透しているらしく、フェリス公爵夫人と呼ばれることは殆どなかった。



そこにちょっと不満を持っていたのも確かだ。


だから殿下に呼ばれた時は純粋に嬉しかった。




その殿下は先日、友人のアマリアと婚約した。



エリアナの騒動から落ち着き、殿下の婚約者を決めるのにまた周りの貴族からひと騒動あったのだが、



殿下は頑なに、暫くは婚約者は作らない。と陛下に嘆願していたのだが、


何の心境の変化か、アマリアを婚約者に決めたようだった。



位は伯爵と、少し低めなアマリアだが、一応殿下の婚約者候補には入っていたらしい。




どうやら、学園を卒業した辺りからちょくちょく会っていたことをアマリアから聞いた。




元々アマリアは学園でも私達と同じクラスで頭もいい。

裏表のないサッパリした性格でとても好感の持てる少女だ。


だが。


決めては、聖女である私と公爵令嬢のウェルミナが親友という事で周りが良しとしたらしい。



なんだそれ。と、思わなくもないが、アマリアは気にしていないようで、


アマリアによれば、私が殿下を幸せにするの!!


などと、勢い込んでいた。



殿下がどう思っているのかはわからないが、アマリアが幸せになるならいいか。




本当は今日も、お妃教育で時間がないかもしれないと、結婚式に間に合うか心配だったようだけど、


何とか殿下と揃って間に合ったようで良かったと思う。








ゴーーン、ゴーーン……



教会の鐘が鳴り響く。


ウェルミナが、ブーケを投げた。


それは狙ったかのようにアマリアの元にすっぽりと収まった。




アマリアは感激して泣いている。


私もつられて涙を流し、キリクに優しく拭われる。



「ふぐ、ウェルミナ、良かったね、……っ、ブーケ、ありがとう!」



涙でぐしゃぐしゃになっているアマリアを、殿下が肩を抱き寄せ、よしよしと髪を撫でながら顔をハンカチで拭いてあげている。




その殿下の表情はとても優しげで、アマリアを大切に思っているのがわかる。



なんだ、殿下も、ちゃんとアマリアを思っているのか。


良かった……。




皆、幸せになれた。



これからも、皆仲良く生きていけたらいいな。





私は、私達は、この世界でこれからも生きていく。


生きている限り、また嫌なこともあるだろう。


それでも、私達は前を進んでいく。


この世界は、ゲームでもラノベでもない、現実なのだから____








happy end







____________________


お待たせしました。

これにて、キリク編は完結です、

後に番外編なども書くかもしれませんが、

とりあえず、他キャラルートの本編を進めます!


次はエリアスルートになります!


残る謎も追々書いていく所存です!もう少しお付き合いください!


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