3 エリアナside

「……フ、フフフ、あはははは!やっと……あの女が死んだ!これで、全てあたしの物よ!エリアス様も、聖魔法魔力も全て!」





やっと全てあたしの所に戻ってくる。

嬉しくて、あたしはずっと笑いながらエリアス様の腕に抱きつき、



血溜まりの中に倒れているユリーナと、剣を体に刺したまま動かなくなっているキリクを見つめた。






やはり彼だけでも助けるべきだっただろうか。


だがあそこまで術を跳ね返されては、もうまともに掛かることは無理だった。



それでもにあるキリクお兄様は、自分に優しい方だったから、惜しい気持ちがあるのは確かだ。



本当はなのに……



だからやっぱりあの女がいるから悪いんだ!




結局その結論になったエリアナは、もう既に息がなく、死んでいるだろうユリーナから残りの聖魔法を抜き取っていく。





あんたが悪いのよ。だっては元々全てあたしのモノだったのに、あんたが横取りしたんだから。







「……やめろ」


「っ!?」



な、なんで生きてるのよ!?


「これ以上、ユリーナを傷つけるのは許さない」




最後の一滴まで力を絞りとってやろうと、倒れているユリーナの側まで来て、

ユリーナの体に手を伸ばした所でいきなり横から手首を掴まれた。





驚いて振り向けば、ユリーナと一緒に死んだ筈のキリクお兄様が、あたしの手首を骨が折れそうな位にギリギリと掴みながら、鋭い眼で睨んでいた。




どうして。

彼は確かに剣で自分を刺し貫いて倒れたはず。


ふと剣が刺さっていたであろう腹部を見れば、刺さっていたはずの物は既に其処には無く、横に転がっている。


あんなに流れていた出血も止まっていた。



ボロボロの衣服でよく見えないが、どうやら傷口もふさがっているように見える。




「…どうなってるのよ、は死んだんじゃなかったの!?」



「…?何を言っているのかわからない。私はお前の兄ではないよ。」



「いいえ!キリクお兄様は騙されているんです!その女は偽物なんです!あたしが本当の、キリクお兄様の妹、ユリーナなんです!!」




「………、どうやら頭がイカれているようだね。まあ、私のユリーナを手に掛ける位だ。それもそうか。」



「どうして信じてくれないの!?本当の事なのに!!」


「…仮に、其れが本当の事だったとしよう。では、その証拠でもあるのかい?」



「!!そ、それは………」



「大した根拠もなければ証拠もない。信じるに値しないな」



いつの間にかあたしの手首から手を離したお兄様は、ユリーナを労るように優しく抱き起こしている。



彼のユリーナを見詰める眼は、ただの妹にしては熱がありすぎる程の眼差しで、心配そうに揺れている。



どうして、どうしてよ!?


本当ならあの目を向けられるのはあたしだったはずよ!


あの女は死んでもあたしから全てを奪っていく。


許さない、絶対許さないんだから!!





その為には、あたしがお兄様の妹だって事を証明しなければ…!


でも、どうやって……?



ふとサディアス殿下の横にいる男を見る。



そうだわ!アイツよ!!確かアイツは神の遣いだって言ってたわ!



神の遣いだから、あたしが前世事を知って、あたしに力をくれた。


ちゃんとあたしが聖女になれるように助けてくれたのよ!

だから、アイツに証明して貰えれば……



「ちょっと待って!証人ならいるわ!!」


「…証人?」


「そうよ!神の遣いという、証人が!」


言いながら、あたしはアイツに視線を送り、その視線だけで証人が誰なのかをお兄様に示した。



「………」


ちゃんと証明しなさいよね!


あたしは心の中でアイツに命令する。


アイツは神の遣いというだけあって、エライのかもしれないが、

アタシはアイツの仕える神様に間違えて転生させられたんだから、

アイツに指図する権利はあるはずよ!



そう思ってアイツを見れば、アイツはニヤリと嗤った。




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