24
「あたしのエリアス様に近づかないでよ!」
「………はあ。」
「ちょっと聞いてるの!?」
え~と、どうしてこうなったんだっけ?
前にも似たような事があったな~なんて思いながら、
適当に返事をする私に、更にイラついたエリアナさんが
彼はあたしのなんだから!と叫んでいる。
2学年での授業が始まり、今日は生徒会の初日ということで、
放課後の今、生徒会室に向かっているところだった。
去年、何時も一緒に行っていたウェルミナや、そこに何故か毎回便乗してくる殿下は
今日は用事があるからと、私が一人で先に向かう事になり、
その向かっている途中の廊下でエリアナさんに声を掛けられ、
すぐ近くの空き教室に押し込められて今に至る。
「あなた、あたしがエリアス様の婚約者になったから羨ましいんでしょ!」
「はい?」
「残念だったわね。彼はあたしを選んだのよ!聖女のあたしが選ばれるのは当然よね!」
「…エリアナさんは、ご自分が聖女だと思っているのですか?」
「当たり前じゃない!あたし以外に聖女が居る筈ないでしょ?この髪に聖属性魔法。」
他に誰が居るって言うのよ!?
そう捲し立てる彼女の言葉に、私は引っ掛かりを覚えた。
エリアナさんは、私の思い違いでなければ、呪術で私の魔力を奪ったのではなかったか。
にもかかわらず、彼女は
まるでジャイアニズムな考えの彼女に何も言えなくなっていると、
だから貴女みたいなどこの血筋も判らない女に殿下は相応しくないんだから、色目遣わないでよね!
と言うエリアナさん。
どこの血筋って、それは平民の貴女も同じでは?
というか、私の事を平民である彼女がそこまで知っている事はおかしい。
彼女も転生者?
そう思って、ウェルミナの時同様、問いかけようとしたが、
エリアナさんは私の返事も聞かずに空き教室を出ていったため聞くことが出来なかった。
それにしても、ちゃんと普通に喋れるじゃないか。
やはり
「…本当は、あたしが………あんたなんて、__も__くせに…」
「…え?」
教室を出る間際、彼女の呟いた言葉はよく聞こえなかった。
何だったんだ…と思いながら自分も教室を出ると、そこには居る筈のない人がいて私は驚いた。
「…殿下、もしかして、」
聞こえてしまったかもしれない。
廊下に出た瞬間出くわしたのは、以前会った事のあるサディアス王弟殿下だった。
「…お前も、色々大変だな。」
そう言う殿下の表情は相変わらず無表情で、掴めない。
やはり聞かれてしまっていた事に恥ずかしくなった私は、
それを誤魔化すように殿下に質問する事にした。
「…殿下の方も、今日からなのですか?」
「……あぁ。魔獣騒動があったから、それの対策もかねて早めに生徒会を始める事にした。」
淡々と話す殿下にそうなんですね、と相づちをする。
サディアス・クレーズ王弟殿下。彼は王弟にしては年若い、私や殿下達の一つ上の18歳。
先代国王陛下の遅く出来た第2王子だ。
歳が近い事もありエリアス殿下とは兄弟のように仲が良いらしい。
この学園は各学年ごとに生徒会があり、成績優秀者がその生徒会を務める。
王弟殿下は私達の一つ上、3学年の生徒会で会長だ。
基本、学年が違うから教室もかなり離れている。
だからめったに学年の違う生徒と会うことはないのだが…
「そういえば、殿下はどうしてこちらに?」
「マクドウェル先生に用事があったのだが…どうやらこっちに来ていないらしいな。」
一応、先生は全学年の生徒会顧問でもあるため、殿下は生徒会での相談がしたかったのかもしれない。
もし見かけたら伝えておきます、と言えば、助かる。と返事が返ってきた。
「あ!こないだは助けて頂いてありがとうございました!」
そういえばと、前に助けてもらった事を思い出してもう一度お礼を告げると、
お前は律儀だな。と苦笑いされた。
そんな顔も出来るのか…なんて考えている間に
まあ、頑張れよ。と言って殿下は3学年の教室の方へと戻って行った。
王族には珍しい色彩である彼の黒髪がさらさら揺れる。
それは、前世日本を思い出させるには充分で、懐かしさを感じていた。
その懐かしさのせいか、無意識に殿下を見つめていたのだろう、
そんな私を、先に出ていった筈のエリアナさんが睨んでいた事には気づかなかった。
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