15

「貴女、大丈夫なの?」



「…え?」



彼女の表情と声色で、その言葉に嘘がないのは気付いていたが、


まさか本気で彼女に心配されるなんて思ってなかった私は、思わずキョトン顔になってしまったのは仕方がないと思う。












あの日から既に数日たっている今、倒れた時の事が嘘のように、私はいつも通りの生活を送っていた。



あれから調べて分かったのは、使えなくなった魔法は光魔法だけで、もう一つの属性は魔力も以前のそのままに、問題なく使えるということだった。



どうやら自分の元々の魔力量事態がヒロイン補正なのか物凄く大きかったたため、光の魔力が減っても周囲的には微々たるものだったらしい。



もしかしたら覚醒前だったからそれで済んだのかもしれない。





そういうことで私はもう一つの懸念材料も回避できたらしい。



魔力が減ればクラスも変わってしまうのではないかと、またお兄様に余計な心配をかけてしまうと考えていたのだ。



それも杞憂に終わったのでほっとしていた私は、そろそろ落ち着いてきたし、ウェルミナ様ともう一度話そうかなと思っていた時だった。




「ユリーナ様」



「はい?…!?」



休憩中、後ろから自分を呼ぶ声に反射的に返事をして振り向くと、まさに己がこれから話そうと思っていた相手がいたことに私はすごく驚いた。





ちょっと話があるからこっちにいらっしゃいと、彼女に手を引かれ空き教室へと向かう。そうして開口一番に言われた言葉が冒頭のセリフというわけだ。




「…ウェルミナ様、あの、大丈夫とは…?」





あわててキョトン顔になっていた表情を戻し彼女に尋ねると、ウェルミナ様には珍しく、あの、そのね、と何かを言いにくそうにしているようだった。



「ウェルミナ様?」



「…その、…」



「はっきりおっしゃって下さって構いませんよ?」


私がにっこり笑って促すと、小さく判ったわ、と呟いて私の顔をじっと見つめてくる。






「……貴女が倒れた日、私、実は見たのよ」




もしかしたら自分の見間違いかもしれないけど、というウェルミナ様からの話は衝撃的だった。




実際証拠もなにもないわけだし、本当にウェルミナ様の見間違いの可能性もある。だけど、ウェルミナ様の話は嘘を言っているようにも見えない。




それにその話が本当なら、私が感じていた違和感も納得がいくような気がした。




とりあえず、このことは自分たちだけではどうにかできるような事ではないし、ウェルミナ様には他の人には話さないようその場で口止めした。



帰ったらお兄様に相談してみよう。





そういえば、ウェルミナ様とこんなに穏やかに話ができるなんて…と思っていたら、実はもう一つ話があるの。等と言い出したので私は固まった。




まだあるのか…なんて顔をしていたのだろう私に、慌ててあ、違うのよ!となぜかいきなりモジモジしだしたウェルミナ様の続いた話に、またも衝撃を受けた私なのだった。






まあ、これからウェルミナ様とは良い友人になれそうみたいだし、良しとしよう。おかげで気分が少し上に向いた所で生徒会を終え、家路に着いた。














その後、お兄様にウェルミナ様から聞いた話を相談すると、お兄様は疑うこともなく、神妙に頷いた後、後日、ウェルミナ様と殿下を交えて話をしようということになった。



ウェルミナ様は判るけど、殿下も…?不思議に思う私に、すぐに判るよ。とお兄様は言う。




お兄様の言うとおり、すぐに判るならいいか…とは思うものの、やはり気になってしまう私は、その日の夜はあまり眠れなかったのだった。








翌日、眠そうな私を見たお兄様は苦笑いをし、昨日の件、殿下とアンカー嬢に確認頼んだよと言われて私は馬車に乗り込んだのだった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る