Ver.6/第45話
ヌソッキは、シャーザーキ同様、水上都市だった。
シャーザーキと違う点は、周囲を崖に守られせていない点くらいだろうか。城壁のような高い壁もないので、閉塞感もない。
ただ、先ほど戦ったガンダルヴァに限らず、空から襲い掛かってくるモンスターはマーメイドの天敵と呼ばれているらしく、水の結界が都市全体を覆っている。そのため、巨大なスノードームのような外観だ。
ヌソッキへ入る際も、結界を通り抜けなければならないのだが、水の壁は魔法的なものなので薄く、滝のように絶えず流れているものでもない。何だか柔らかいものを抜ける抵抗感はあったため、面白い感覚だった。
アクアの話だと、悪しきものは、この水の壁を抜けられないそうである。
マーメイドの都市とはいっても、シャーザーキと同様、他の種族も数多く生活しているようである。そのため、水上建築の割合も多い。
ただ、そうは言ってもマーメイドの人口が圧倒的なのだろう。通路よりも、水路の方が多く、複雑に入り組んでいる。
ハルマ達一行は、限られた水上の通路を使い、他にプレイヤーがいない街の中を気の向くままに散策することにした。
とはいえ、中央付近に重要施設が集中しているのは、初期エリアの街と同じらしく、転移場所、商業ギルド、冒険者ギルド、宿屋と一通り見つけることができた。
「そういうことだったのか……」
転移場所の登録を終え、商業ギルドと冒険者ギルドに違いがあるのかを確認するために立ち寄ると、モンスターのランクの謎が解けた。
E+の表記が、EランクとDランクの中間だと思ったのが、そもそも間違いだったのである。
モンスターのランクは、担当する冒険者ギルドが決めるらしく、担当する冒険者ギルドが変われば基準も変わる。つまりは、ウォータニカの冒険者ギルドが選定したランクでAであっても、ヌソッキの冒険者ギルドの基準ではEでしかないこともあるのだ。
横に付いている+の表記は、ヌソッキ、本来のルートだと、ムーヌムーヌという都市に先に寄るはずなので、そちらの冒険者ギルドが定めた基準が適応されているという印だったのだ。
「モンスターのランクで取得できるスキルもあったから、その辺を考慮したシステムなのかな? しかし、E+は、今までのエリアよりかなり強いけど、この辺だと普通よりちょっと弱いってことか? そりゃ、レベルもクラスも、もっと育ってから来る場所だもんな。ってなると、やっぱり、こっちでレベル上げは効率悪いな」
クラーケンを倒せるからには、何とか勝てるラインに届いているということなのだろうが、ガンダルヴァですら今までのボス戦と大差ない強さであった。その割には、得られた経験値は些か物足りない。どうやら、この辺になると、獲得経験値の上限が再び頭打ちになるようだ。
それならば、同じ時間を費やして3~4戦できる場所の方が、得られる経験値も多くなる。
「元々、こっちでレベル上げするつもりはなかったから良いけど、どうするかなあ? 店で売ってる物も、シャーザーキとあんまり変わらないし、じっくり見て回るには、広すぎる。素材の採取をして回るにはモブモンスター強すぎるもんなあ」
生産職プレイヤーとしては、素材の採取はぜひとも行いたいところだが、平均的なランクであろうガンダルヴァですら苦戦する始末だ。〈発見〉で回避しながら移動できるとはいえ、見知らぬエリアの探索もじっくり行いたい。
何より、レベルを上げてクラスも追加したい。しかも、今のうちにレベルを上げなければ、魔界もオープンしてしまうのだ。
つくづくタイミングが悪いと感じてしまう。
「うー。時間が足らねえ」
ハルマが頭をかかえる理由が、もうひとつあった。
ファイアールで見つけた、やりかけのクエストだ。妙なよこやりが続いたせいで、簡単なおつかいクエストのはずが、未だ最後まで進められていなかった。しかも、コンバスとナルカミが立て続けに登場したことで、ロックスターのクエストに続きがありそうな気配もあるのだ。
「この辺を散策するのは、さすがに時期尚早だよな……。戻ってクエスト終わらせて、レベル上げするか」
クラスを追加すれば、この辺でも戦えるようになるかもしれない。時間に余裕ができたタイミングでエリアを逆走してみるのも良いだろう。
じっくり見て回るのは、それからでも遅くないと結論付ける。
とは言いつつ、商業ギルドや職人ギルド、素材屋などを見て回り、見知らぬレシピがないかの確認だけは怠らないのだった。
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