Ver.6/第14話

「クラスの兼業も可能なんですね。もしかして、特殊な組み合わせを育てることで、新しいクラスが見つかるかも?」

 一通り説明が終わったところで、クラッチは視聴者から寄せられる質問をいくつか挟んだ後で問いかける。

「その辺は、ノーコメントにしたいところですが、気にされている方も多いみたいなので、教えちゃってもいいですかね?」

 吉多も返答の判断に困ったのか、視線を隣の安藤に向ける。

「そうだねえ。教えちゃってもいいかな? そういう組み合わせは……、存在しま……す!」

「おー。あるんですね」

「でもねえ。狙って組合せを見つけるのは、かなり難しいと思うので、自分の取りたいクラスを取って、地道に育てていくのが一番だと思いますよ? 我々が想定している、オーソドックスなクラスを育てるだけでも大変だから。それに、クラスの種類は、皆さんが思っている以上に多いんじゃないかな? レアなクラスだから強力とも限りませんし、そういうクラスは、レベルによる獲得熟練度の補正がないものがほとんどだからね」

「そうなんですね。でも、そういった楽しみもあるとわかっただけでも、色々挑戦してみたくなるものですよ? あと、ちらほら質問がきているんですが、スキルと称号を取るために、ステータスポイントの振り直しがしたいけど、いつできるようになりますか? ってありますが」

 安藤が軽いノリで重大発表をしてしまったことで、クラッチも一瞬、どう反応していいのか迷いが見えたが、即座に新しい話題に繋げてみせる。

 これには、再び吉多が答える。

「ああー。ちょうど良いタイミングなので、ここで発表しちゃいましょうか。ステータスポイントの振り直しも、今回のアップデートで追加されます」

「おおー、本当ですか?」

「スキルの取得にステータスが必要なものもありますからね。クラス追加に合わせて、前々から決まっていましたので、先に説明しておきますかね」

「お願いします」

「プレー開始時とレベルアップ時に加算されるステータスポイントを、任意のステータスに振り分けている方がほとんどだと思いますが、今までは救済期間を過ぎたら、一部アイテムの使用を除けば、一度振り分けるとやり直しできない仕様でした。このため、中にはステータスポイントを全部振らずに、残している方も少なからずいらっしゃったんですね。そういう方が今回のシステム追加で不利益といったら、ちょっと違いますが、我慢が台なしにならないように、ちょっとしたペナルティが発生します」

「もともと、振り替えられるようになるとは公言されていましたが、いつ頃になるかもわからなければ、簡単にはできないともおっしゃっていましたもんね」

「そうですね。なので、色々開発運営チームで検討した結果、ステータスポイントを1消費することで、3ポイント振り直せるようにします。ただ、消費したポイントは、一定時間経過した段階で、復活します」

「おん? つまり、1ポイント分の弱体化することで、3ポイントだけ振り直せる、ということですかね? その、一定期間というのは、どのくらいの長さなんですか?」

「そこが、少し複雑でして。一度に複数回振り直しを行った場合、例えば、5ポイント消費して15ポイント振り直す――これは、同じ時期に複数回にわけても同一タイミングと判定されます。簡単に言えば、消費したポイントが復活する前に再度振り直しを行った場合とかですね――みたいなことをした場合、1ポイントだけ消費した時よりも復活までの期間が長くなります。後、ログイン時間に対応しています、とだけお答えしておきますかね。数日とか、そんなにすぐは復活しません」

「つまり、ガラリとプレースタイルと変えようと思うと、けっこう長い期間弱体化されてしまうわけですね?」

「そうなりますね。新クラス解放のためにステータスを変化させたい方も多いかと思いますが、計画的に慎重に行ってください。それと、これは後々調整していくこと、おそらく気軽に振り直しができる方向の調整が入ることは、先にお知らせしておきますね。課金アイテムでの振り直しも、同じタイミングで検討しています」

 こうして、クラスに関係する話題は終わりを迎えた。


「いやー、新しい成長システム、クラスの追加で、益々楽しみが増えますね。それでは、今日のお知らせは、この辺で終わりですか?」

「いや。今日は、まだお知らせしておかないといけないことがありますので、次に進みたいと思います」

 そこで吉多は、再びスタッフに指示を出し、新たなフリップを画面に表示させた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る