Ver.6/第13話

 吉多の指示に従って表示されたテロップには、獲得経験値上限解放とクラスシステム追加の2つが並んでいた。

「はい。すでに多くの方がご存知だと思いますが、モンスター討伐時に得られる経験の上限が解放され、クラス、他のゲームだと職業だとかジョブだとか言われるものが追加されます」

「獲得経験値の上限解放は〈ドアーズ〉発表の段階で告知されていましたけど、クラスの追加には驚いた方も多かったのではないでしょうか? かく言う私も、ちょうどインしていたので、直に発表を見ることができたので、驚きましたよ」

「良いサプライズになりましたかね?」

「なりましたよ! たまたま声優仲間3人で〈ドアーズ〉に挑戦していた時だったので、一緒になって雄叫び上げちゃいましたもん。それからは、どんなシステムなのか攻略そっちのけで予想し合ったくらいです。今日は、クラスシステムについて教えてもらえるんですよね?」

「そうですね。クラスシステムについては、後日、詳しい説明を公式サイトに載せるとして、基本的なことはお話ししたいと思いますが、先に獲得経験値の上限解放について説明させてください」

「あ、そうですね。すっかり忘れていました。お願いします」

「忘れないでくださいよ。これも、けっこう大きなことなんですから」

「いやー。そうなんですけど、ほら、コメントでも、クラスシステムについてザワザワしてるじゃないですか」

「あー、本当ですね。では、獲得経験値の上限解放については、難しいものではないので、簡単に説明しますね」

 その後、説明されたのは、話の通り、シンプルなものだった。

 全てのモンスターの獲得経験値が増える。

 ただし、チップの予想通り、ランクの高いモンスターほど増える量が大きいというものだ。ただし、それも一定のラインを越えると、再び制限が入るようになる。

 また、後発の新人プレイヤーが追いつきやすくなるように初期エリアとそこに隣接エリアに出るモンスターのポップ数を増やし、序盤のレベル上げをしやすい環境にすることも発表された。

 更に、冒険者ギルドで受けられる初級クエストのクリア報酬に、経験値のボーナスが追加されることも合わせて発表された。

「後から始めたプレイヤーさんって、同じレベル帯のパーティメンバーを探すのがなかなか大変なので、倒しやすいモンスターが増えるのはありがたいでしょうね。それに、初級クエストで今まで以上にレベルを上げやすくなると、けっこうすぐにレベル40になれる感じですか?」

「そうですね。今までも、レベル40くらいまでは、慣れた方なら割と早い段階で到達していたんですが、アドバイスを貰えない初心者さんでも、そんなに苦労せずに到達できるようになると思いますよ。とはいえ、それでも数か月は見てもらった方が良いとは思いますが」

「そして、今後も、同じような調整は入っていく予定なんですよね?」

「そうですね。今回はミッションのクリア報酬という形にしましたが、今後も同様の形式にするかも含めて未定ではありますが、皆さんのレベルの上がり方、この後にお話しするクラスによる影響、などなど、総合的に判断して今後も調整を入れていく方針です」

「そして、レベル40になったら、すぐにクラスを追加できるようになるんですね。って、今、思ったんですけど、後から始めた方が、クラスの恩恵を多く受けられて、若干ズルい気がするんですが……」

「ハハハ……。そういった部分もあるかもしれませんが、先にレベルを上げておいて損はないシステムですので、ご安心ください」

「ほおほお。それでは、そろそろ、クラスシステムについて、お話ししてもらえますか?」

「わかりました。この後も大きな発表がありますので、クラスシステムについて、基本的なことをお知らせしていこうと思います」


「まず、初歩的なところで、クラスとは何ぞや? と、思われている方も多いと思いますので、そこから説明しますね」

 そして、ここから吉多によるクラス講座が始まった。


 現在、プレイヤーは、冒険者という肩書を持って、その名の通り、世界中を冒険している。

 この〈冒険者〉というのも、ひとつのクラスであり、今後は、この冒険者というクラスを基本に、様々なクラスに就くことも可能になる。

 現状、プレースタイルを元に、タンク職、盾職、壁役、回避盾、前衛アタッカー、後衛魔法職、回復職、支援役、生産職、などなどなど、プレイヤー同士が役割を決めて自己申請に近い形で役割を振り分けている。

 そこに、正式にクラスという評価が加わり、ステータスやスキルに差が生じるようになる。

「正式なクラス名はアップデート後にご自身で確認していただきたいので、仮のクラス名で説明しますと、例えば〈戦士〉というクラスに就くことが可能になったとします。初歩的な戦闘クラスで、前衛で盾役兼アタッカーもこなすクラスだと思ってください」

 この〈戦士〉のクラスに就くには、剣と盾といった特定の武器や防具を装備していれば、他に特別な条件は必要なく、冒険者ギルドで申請することでセット可能になる。初歩的なクラスの場合、装備の代わりに、ステータスの数値が一定値以上であることなどが最低条件になっているものもある。

 メニューにクラスの項目が追加され、就きたいクラスを選択し、セットすることで、ステータスとスキルに変化が生じる。〈戦士〉の場合はSTRとVITが少し増え、物理攻撃系のスキルを新たに取得するようになる、といった感じだ。

〈戦士〉を辞めたくなったら、セットから外すだけで良い。この際、ステータスのボーナスはなくなるが、取得したスキルはクラス専用スキル以外は使用可能なまま残る。

 クラスは長く続けることで、職人にランクがあるように成長し、新たなクラスへと成長、進化、派生することもある。当然、同じクラスでも、ランクが上の方がステータスのボーナスは大きくなる。

「このクラスの成長は熟練度という数値が溜まることで発生します。そして、多くのクラスで熟練度はレベルが高いほど上がりやすい仕様になっていますので、先にレベルを上げているプレイヤーさんが不利になるということはないと思っています。ただし……」

 熟練度が上がるのを阻害するものもある。

 クラスは、ひとつしかセットできないものではなく、複数セット可能なのだが、相性の悪いクラスや、同じカテゴリーのクラスを同時にセットしていると、熟練度が上がりにくくなるのだ。

「例えば〈戦士〉と軽装の物理攻撃職〈格闘家〉というクラスがあったとします。それを同時にセットすることで、STR、VIT、AGI、DEXのステータスが少し増えるとしましょう。これだけで単純に強くなりますが、熟練度を上げるのに、どちらかだけをセットしている場合よりも、3倍以上の時間が必要になるといった感じです」

 しかし、全てのクラスに適用されるわけではない。

 戦闘クラスとは別のカテゴリーのクラスをセットした場合は、阻害し合うことはない。

「イメージ的には、昼は農家、夜はバーテンダーというのは無理のない働き方ですが、昼に農家とトラック運転手を同時にこなすのは無理がある、といったところですかね。でも、朝に農家、昼に収穫した作物をトラック運送、夜にバーテンダーということも可能ではありますので、クラスの組合せや使い方は、工夫してみてください」

 肝心のクラス追加は、ほぼ全て、何かしらのギルドで申請が必要になる。

 すでに運用されているギルドはふたつ。

 ひとつはサービス開始直後から存在している商業ギルド。もうひとつが、途中で追加された冒険者ギルドである。

 さらに、今は入れない建物に、条件を満たした者だけが入れるようになるギルドも複数存在する。

 基本的に、同じギルドで申請できるクラスは、同時にセットすると熟練度を上げるのに相性が悪い傾向にある。 

「クラスはプレイヤーさんの取得しているスキルや称号などで追加されていきます。なので、プレイ―スタイルが同じでも、取得しているスキルや称号が違えば、違ったクラスが解放される可能性もあります。そして、すでにいくつか称号を獲得されている方がほとんどだと思いますが、今回のクラス追加で、称号も解放しますので、アップデート後にログインすると、条件を満たしている称号を一気に獲得しますので楽しみにしていてください」

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