Ver.5/第20話

「いよいよ始まります。第3回〈魔王イベント〉のエキシビジョンマッチ。どんな戦いが繰り広げられるのか、楽しみですね」

 場所はコロシアム。既視感があるのは、〈大魔王決定戦〉と同じ場所であるというだけでなく、実況として同じ元アナウンサーが呼ばれていることにも由来するだろう。

 実況がいるということは、解説もいる。こちらも、チーフプランナーの白石が担当している。

「そうですね。本戦にハルマさんやモカさんといった、全勝経験のある魔王が複数参加できなかったこともあり、肩透かしを食ってしまったというご意見もありましたが、本日のエキシビジョンマッチで少しでも楽しんでいただけたらと思います」

「正直、大魔王ハルマや魔王モカ、魔王テスタプラス軍といった有名プレイヤーの戦いを見たかったというのが本音ではありますが、それを抜きにしても、見応えのある戦いは数多く繰り広げられました。本日は、そういった名勝負を見せてくれた数々の魔王が、一風変わったルールで再び登場してくれます。それでは、その辺りも含めて、改めて説明をお願いします」

 白石の言葉に続き、実況がルールの説明を求めると、白石は台本通りに事前に発表されているエキシビジョンマッチについて話し始める。

 今回戦うのは、〈魔王イベント〉と同様に、魔王VS勇者である。

 勇者チームは、総勢40名。テイムモンスターの使用も認められている。

 こちらは、事前に登録のあったプレイヤーから抽選で選ばれ、40人のフルレイドパーティになるように調整される。ただ、登録は誰でも可能というわけではなく、〈魔王イベント〉で一定数の勝率があった者に限られる。ランダムマッチで〈魔王イベント〉に参加していたプレイヤーの場合、勝率はあまり高くない傾向にあるため、基本的に事前にパーティを組んでいる者の寄せ集めになる。結果、ソロでの参加者は少なく、40人ピッタリに調整するのは困難だ。

 そこで、今回は、特別に5組の同盟パーティという編成ではなく、どんな組み合わせでもトータルで40人になるようにする。つまり、事前にパーティを組んでいても、ソロとして扱い、40人でひとつのパーティになるようにしているのだ。

 そのため、勇者チームは常に40人となる。

 対して、魔王軍は、勇者チームが決まった後に抽選となる。

 勇者チームの40人の中からランダムで抽選券が5人に配布され、抽選ボックスの中にあるボールを選ぶ。ボールには数字が割り振られており、数字の少ない順に〈魔王イベント〉で勝率の高かった魔王が割り振られている。

 参加する魔王は、事前に参加の意志を表明したプレイヤーの中から、勝率の高い順に30人が待ち構えている。魔王チームは〈魔王イベント〉に参加したパーティでの登場となるので、最大人数こそ40人になるが、30組の魔王の中に8人パーティは2組しかいないので、40人になることはない。

 それでも、人数的には勇者チームが有利とはいえ、魔王チームの優勢は揺るがないだろう。

 どちらが優勢かは明白なれども、〈魔王イベント〉中は、最大でも18人での戦いだったのだから、60人以上での大乱闘がどのような戦いになるのか、興奮しながら待ちわびている者も多い。

 ちなみに、このエキシビジョンマッチが発案された背景には、ハルマが三皇軍を叩きのめしたことにあった。あの時のドリームチームを見た安藤が、「魔王同士の共闘か。面白そうだな」と呟き、急きょ開催されることになったのだ。

 後々、プレイヤー達に〈魔王ガチャ〉と呼ばれ、好評を博し、事あるごとに再演されることになるとは、安藤自身も想定外であろう。

 これが、エキシビジョンマッチの第一部である。

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