Ver.5/第11話
「結局、350個近くあったガラクタと化石の中で、〈鑑定〉できなかったのは20個くらいのものか……。ちょっと、渋い気もするけど、採取のレアリティを考えると、妥当なところかな? それに、〈鑑定〉のレベルも上がったし、今後に期待、だろうな?」
家の収納スペースに入れっ放しだったガラクタと化石を黙々と〈鑑定〉した結果、トータルで100回〈鑑定〉したタイミングでⅡに成長し、更に250回〈鑑定〉したタイミングでⅢにまで成長していた。
これによって、Cランクまでは採取前に〈鑑定〉が可能になった。
これだけの数を〈鑑定〉するのは、正直面倒臭かったのだが、〈しらべる〉が〈鑑定〉に切り替わったのは、メニューの中だけでなく、簡易操作による〈しらべる〉も適用されたため、思っていたよりは早く終わった。
ちなみに、〈鑑定〉できなかった20個というのも、Ⅲの状態での数字である。つまりは、手元に残っているものは、Bランク以上が期待できる。ただ、ランクが高ければ有用なものなのかというと、たぶん、違う。経験上、使い道が見つからずに、ただの換金アイテムとなっているものも少なからずあるからだ。
「いらっしゃい」
ガラクタと化石の〈鑑定〉が終わり、使い道のなさそうなガラクタを〈錬金〉でインゴットに変換していると、マカリナとソラマメがやってきた。
「おっつー。もう、〈鑑定〉取得できたんだって?」
挨拶もそこそこに、マカリナが尋ねてきた。
「何とかね。収納ボックスに、リナがまだ〈しらべる〉使ってなさそうなのをまとめて入れてあるから、欲しいのがあったら持っていって良いよ」
ふたりとも、少しでも早く〈鑑定〉を取得するために、互いに持っていなさそうなものを交換して数を稼いできたのだ。収納スペースのものは、基本的に自分しか出し入れはできないのだが、権限を設定することができるため、一時的にマカリナにも解放しているのである。
「ありがとー、助かる。早速、拝見」
こうして、マカリナがハルマの家に置いてある収納スペースの中身を確認している間に、ハルマの得た情報を報告していく。
「え……? もう、Ⅲに上がったの?」
「え?」
報告の最後に、〈鑑定〉がⅢに上がったことを告げると、それまで穏やかに聞いていたソラマメの表情が固まった。その反応に、ハルマも固まる。
わずかな時間、沈黙とともに見つめ合ったかと思ったら、先にハルマがおそるおそる口を開いた。
「ソラマメさんの〈鑑定〉って、レベルいくつなんですか?」
「俺、まだⅡなんだが? しかも、半年くらいかかって、最近やっと上がった」
「え? でも、採取の時、選別できてるんですよね?」
そう思っていたから、ⅢもしくはⅣには上がっていると思っていたのだ。
「あー。なるほど。違う、違う。いや、違わないんだけど……。俺の選別方法は、ハルマ君が思ってるのとは、逆の方法だよ。〈鑑定〉して、欲しいものを拾うんじゃなくて、〈鑑定〉できなかったものを中心に拾ってるんだ。それでも、Dランクのものまでは弾けるから、優先的にCランクのものを拾えるだろ? Ⅱに上がるまでも、それでじゅうぶん効果的だったんだよ」
「そういうことだったんですね。いや、確かに、それで何の問題もないのか」
Bランク以上の採取ポイントが見つかったのは、ミナドニークに入ってからである。今までは、良くてもCランク。生産職では、どんなアイテムを作るにも、同じランクの素材や材料ばかり使うということは、初期のもの以外はない。だいたいは、CからFランクの素材や材料を満遍なく使う。満遍なく使うから、レア度の高いものも必要になり、絶対数の少ない高ランクの素材は貴重なのである。
実際、ガラクタと化石を〈鑑定〉した結果、ハルマが必要とするであろうものは、〈鑑定〉できなかったグループの中にあるはずだ。ソラマメが採取ポイントで行っていたのも、同じだったわけだ。
「しかし、今日〈鑑定〉を取得したんだよな? どうやったら、そんなに早くレベル上がったんだい? こっちは、ちまちま採取を続けて、ようやくⅡになったっていうのに……。いや、そうか、何を〈鑑定〉するかによるのか」
この質問に対する答えは、ハルマには心当たりがある。おそらく、仮説の通りだったのだろうし、ソラマメも同じ結論に至ったらしい。
「たぶん、ソラマメさんの想像通りだと思いますよ。未鑑定のアイテムを〈鑑定〉した方が、上がるのは早いんだと思います。Ⅱに上がったのも、Ⅲに上がったのも、〈鑑定〉した回数が切りの良い回数だったので」
ハルマの返答に、ソラマメはしばし無言で考え事をしたかと思ったら、スッと視線をハルマに向け、頭を下げてきた。
「その……、ハルマ君。お礼で〈鑑定〉のことを教えたのに何だが、俺にもツルハシ作ってくれないか?」
ソラマメにも葛藤があった。ハルマが〈大工の心得〉に関する情報を無償提供してくれたお礼に〈鑑定〉の情報を披露したのである。だというのに、貴重なアイテムをおねだりするのは、大人としてどうなのか? と。
しかし、抗えなかったのだ。
「そんな、かしこまらないで下さいよ。作って上げてもいいよな?」
少しびっくりしながらマカリナに同意を求める。一応、ツルハシはふたりの共同作業で見つけたことになっているからだ。
「前から言ってるでしょ? 別にあたしの許可は取らなくても良いって」
ふたりの反応を見て、ソラマメも微苦笑を浮かべるばかりであった。
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