Ver.5/第2話
「は?」
言われるがまま転移した先の光景を目にして、ソラマメは動きを止める。
そこには、見知らぬ村があったからである。
ソラマメの知識として、拠点とは、初期エリアの街中で、高額で売り出している場所だったのだから、思考が追いつかないのも無理はない。
「まあ、そういう反応になるよね」
マカリナも、初めて招待された時のことを思い出す。しかも、つい最近のことなので、共感もしやすい。
「スタンプの村って、聞いたことないけど、どういうこと?」
「落ち着いて、ソラマメさん。この村全部が、ハルの拠点なんですよ。あたし達も住まわせてもらってるけど」
「……!?」
あんぐりと口を開けるだけで、言葉が出てこない。
「今なら見えますかね? 俺の近くに、女の子のユーレイがいるでしょ? マリーって言うんですけど、この子の故郷だったらしくて、たまたま見つけたんです」
ハルマの紹介に、マリーは笑顔で手を振って見せる。
「ちょちょちょちょっ! 待った、待った!」
ソラマメも、思ってもいなかった展開に、理解が追いつかないらしく、軽くパニックになっている。
「ハハハ……。詳しい話は、俺の家でしましょか」
目を白黒させるソラマメを連れて、そのままハルマの家へと向かうことにした。
「驚いたな。そんな面白仕様だったのか」
じっくりと順に説明していくのを、ソラマメは静かに頷きながら聞いていた。ところどころツッコミを入れたそうにしていたが、何度も飲み込んでいた。
「っていうわけで、俺はずっとここで職人作業してたので、職人仲間がほとんどいなくて。それで、リナに紹介してもらうことにしたんですよ」
「なるほどね。それで、その〈大工の心得〉っていうのは、誰でも取得できるのかい?」
「どうですかね? 条件を満たすのは、そんなに難しくないと思うんですけど、所有地に出来る場所を見つける方が難しいかもしれないです。ここ以外に、もう1か所は紹介できますけど」
「え!? ここ以外にも、見つけているのかい?」
「はい。ここの住人の弟君が生産職で、テストも兼ねて〈大工の心得〉を取得できるのか試したことがあって。最近、ようやく村に認定されたって、嬉しそうに報告してくれましたよ」
そして、ハルマは、そのままの流れで、自分が〈大工の心得〉を取得した方法を詳細に説明してしまう。
「え!? 教えてもらって良かったの!? しかも、薄々そんな気はしてたけど、文字、読めたのね……」
これには、マカリナも驚きを隠さなかった。
何しろ、村を所有しているなど、他のプレイヤーに対してかなりのアドバンテージであるからだ。
「秘密にしていた方がいいんだろうけどね。何て言うかさ。俺も大魔王になっちゃったわけじゃん? 少しくらいは、この世界の変化に貢献した方がいいのかもな? なんてことも考えているのだよ」
秘密にしておくのが面倒臭くなってきたわけではない。
……ない。
「そういうわけなんで、ソラマメさんも、どこかに村を開拓してもらえると、嬉しいかな? 一気に村持ちが増えるのも混乱しそうなので、少しずつ増えていったらいいのかな、とは思いますけど」
「参ったな……。新素材の件で相談に乗るだけのつもりだったのに、大仕事になりそうだ。こりゃ、俺もとっておきの情報を提供しないとな」
「「?」」
ソラマメの反応に、ハルマもマカリナも視線を合わせて首を傾げてしまう。
「ふたりとも〈鑑定〉ってスキルは、持ってるかい?」
これによって、ハルマ達の冒険は、新たなステージに上がることになるのだが、それはまだ先の話である。
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