Ver.4/第30話

「基本、装備品の魔法書と同じカテゴリーなんだな」

 新たな仲間、マークのことを調べてみる。テイムモンスターとして自立して行動もできるし、装備品としてハルマが扱うことも可能らしい。

「どちらにせよ、やれるのは〈召喚術〉がメインか。この〈勝者の記憶〉は、完全に〈敗戦の記憶〉の逆パターンだよな?」

 装備時にハルマが使うことができるスキル〈勝者の記憶〉は、過去に勝ったことがあるモンスターを呼び出し、5分間戦わせることができるというものだった。

 魔王スキルの〈敗戦の記憶〉と違い、呼び出せるモンスターを選択できるため、使い勝手が良い反面、INT依存の能力のため、ハルマのステータスでは最低ランクのモンスターしか召喚できそうにない。

 仮に、〈覆面〉を使って妖狐になったとしても、せいぜいCランクまでが限度のようだ。INTの要求値が高いために、滞在時間も〈敗戦の記憶〉よりも長いのだろう。

「Cランクのモンスターっていったら、ゴブリンロードくらいだよな? 今となったら、そこまで苦戦する相手じゃないもんなあ。まあ、でも、前もって選択肢を絞っておけるのは、ありがたいかな」

 第1回イベントの〈ゴブリン軍の進撃〉ではボスクラスだったモンスターも、9カ月近くも経過していれば昔話の扱いだ。

「マークを装備するだけで、INTは上がるから、二刀流でINT底上げできる杖装備して、エンチャント使えば、Bランクまでならいけるか? いや、待てよ? 二刀流は、同じ武器種じゃないとダメだったな。どちらにしろ、あんまり、実用的じゃなさそうだな……」

 自身のINTの基礎値をもっと上げていれば、トリッキーな戦い方ができたかもしれない。INTは、DEXよりもスキルによって上昇させやすいステータスだからだ。

 正確には知らないが、ネマキのINTも最大で1500近い値になるはずである。とはいえ、それでも、現状、〈勝者の記憶〉で呼び出せるのはBランクが限界に感じられた。

「あとは? テイム中のスキルが〈パラパラ〉って、ひどいネーミングだな……」

 苦笑いを浮かべるが、説明を読んでみると、確かに〈パラパラ〉という感じがするものだった。

 どうやら、マカリナの〈DCG〉に近いスキルのようで、パラパラとページをめくり、開いたページから飛び出したキャラの中から、ランダムで召喚するというものなのだ。

 基本的に、EかDランクのモンスターが選ばれる確率が高く、時間経過とともに、高ランクのモンスターや冒険者が選ばれる確率が上昇していく。

 1回の戦闘中に何度も呼び出せるが、重複して呼び出すことはできず、先に呼び出したモンスターや冒険者がやられなければ、次の〈パラパラ〉タイムはやってこないらしい。

「基本、あんまり期待できなさそうだな。運が良ければ勇者も召喚できるみたいだけど、俺、こういう引きは悪いからなあ」

 とはいえ、起死回生の可能性を秘めていることに違いはない。

 何より、新たに取得した生産職スキルの〈統合〉によって、こうやって可能性を引き出せたことに満足していた。

 今度は、何を〈結合〉し、何にチャレンジしようか。そんなワクワクした感覚を胸に、再び魔界へと向かうのだった。

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